香木
芳香を持つ木材
香木(こうぼく)は、心地よい芳香を持つ木材のこと。沈香と白檀が有名である。
薄片に削ったものを加熱して芳香を楽しむのに用いられる。香木の芳香のことを「香」という。白檀は熱することなく香るため、それ以外にも仏像などの彫刻や扇子や数珠などの材料として用いられる。
歴史 編集
推古天皇3年(595年)4月に淡路島に香木が漂着したのが沈香に関する最古の記録であり、沈香の日本伝来といわれる。漂着木片を火の中にくべたところ、よい香りがしたので、その木を朝廷に献上したところ重宝されたという伝説が『日本書紀』にある。東大寺正倉院宝物の中には長さ156cm、最大径43cm、重さ11.6kgという巨大な香木「黄熟香」(おうじゅくこう)[1]が納められている。これは、鎌倉時代以前に日本に入ってきたと見られており、以後、権力者たちがこれを切り取っている。室町幕府8代将軍足利義政、織田信長、明治天皇の3人は付箋によって切り取り跡が明示されている。東大寺の記録によれば、信長は1寸四方2個を切り取ったとされている。
現在では、1992年(平成4年)4月に、全国薫物線香組合協議会が、上記の日本書紀の記述に基づいて沈水香木が伝来した4月と、「香」の字を分解した「一十八日」をあわせて4月18日を、「お香の日」として制定している。
種類 編集
- 白檀
- 半寄生の熱帯性常緑樹。インド、インドネシア、オーストラリアなど。太平洋諸島に広く分布しているが、中でも芳香の持続性が高いインド産が最高級品とされている。常温で芳香を放つため、日本では仏具をはじめ、高質な扇子などに使用されている。
- 沈香
- 熱帯アジア原産のジンチョウゲ科ジンコウ属の常緑樹で、長い年月をかけて樹木がダメージを負った際に分泌される樹脂が生成され沈香となる。一部地域から産出されるものを除いては、一般的に常温では香らず、高温で樹脂が揮発して放香する。
- 伽羅
- 沈香の最高級品。
現在、ほぼすべての沈香属(ジンチョウゲ科のジンコウ属およびゴニスティルス属)全種はワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の希少品目第二種の指定を受けている。
脚注 編集
- ^ 別名は蘭奢待。これには各文字にそれぞれ「東」「大」「寺」が隠れていることから、こちらの名称のほうが有名である。