国鉄1形蒸気機関車
概要
編集1904年(明治37年)10月に、イギリスのW・G・バグナル社(W. G. Bagnall Ltd., Castle Engine Works)で製造され、翌年に輸入された新橋工場内の入換専用蒸気機関車である。
1両(製造番号1747)が輸入されたが、工場内専用の特殊用途機であることから、当初は形式も番号も付与されず、無形式無番号であった。1909年(明治42年)に制定された鉄道院の車両称号規程により形式番号を付与され、1形(1)となった。この称号規程では、小型のものから順に小さい形式番号を付与したため、最小の形式1を与えられた本形式は、当時最小の機関車であった。1,067mm (3ft6in) 軌間でこれより小さい国鉄蒸気機関車は、1922年(大正11年)に国有化された大湯鉄道(現在の久大本線の一部)引継ぎのクラウス製40形のみである。
本形式は、日本の国有鉄道が輸入した中では唯一のバグナル社製で、他には762mm (2ft6in) 軌間で旧佐世保鉄道引継ぎのケ97、ケ98があるに過ぎない。同社の機関車は小型のものが多く、日本へは本形式を含めて7形式14両が青梅鉄道や中遠鉄道、陸軍鉄道連隊などによって輸入されているが、いずれも重量10t以下の軽便鉄道用や産業用のものばかりである。
構造
編集車軸配置0-4-0 (B) の単式2気筒の飽和式タンク機関車で、全長4,693mm、全高3,698mm、幅2,025mm、運転整備重量10.11t、動輪直径は762mmの軽便鉄道用並みの小型機である。弁装置はスチーブンソン式で、ロッド類を避けるため、側水槽中央下部が切り欠かれており、その上に砂箱が置かれている。制動装置は手ブレーキのみであった。
主要諸元
編集経歴
編集本機は、鉄道作業局の新橋工場内の入換用として約7年間使用された後、1911年(明治44年)に篠山鉄道へ開業用として払下げられ、同社の1として使用された。その際に煙突を延長し、運転室後位の上部に張り出しを設けている。同社では1938年(昭和13年)まで使用され、スクラップとして神戸製鋼所に譲渡された。神戸製鋼所では、L6に改番したが、ランボードより上の構造物の一切を全て作り替えてしまい、製造時の印象を伝えるものは足回りだけとなっていた。この機関車は、1955年(昭和30年)から1956年(昭和31年)頃に廃棄されたようである。
参考文献
編集- 臼井茂信「形式1」『日本蒸気機関車形式図集成 第1』誠文堂新光社、1968年、1頁。doi:10.11501/12660744 。
- 臼井茂信「I.華麗なる共演 12.BAGNALL」『機関車の系譜図 1』交友社、1973年、76-79頁。doi:10.11501/12655624 。
- 金田茂裕「日本蒸気機関車史 官設鉄道編」1972年、交友社刊
- 金田茂裕「2.日本に来たBagnalls 2-6.1067mm軌間 No.1747,B-n2t」『バグナルズの機関車』機関車史研究会、1980年4月。doi:10.11501/12670496 。
- 川上幸義『私の蒸気機関車史 上』交友社、1978年3月。doi:10.11501/13650747。
- 高田隆雄監修『万有ガイドシリーズ12 蒸気機関車 日本編』小学館、1981年8月。doi:10.11501/12712821。
- 「形式1」『明治の機関車コレクション : 交通博物館所蔵』機芸出版社、1968年。doi:10.11501/12704643 。
関連項目
編集- 国鉄B20形蒸気機関車 - 国鉄が製造した入換専用機
- 国鉄150形蒸気機関車 - 1号機関車