Deepdene (ディープディーン) は、セリフ書体のひとつで、1927年から1933年にかけて、フレデリック・ガウディがデザインした[1]。セリフ・フォントのデザインとしては、いわゆる「オールド・フェイス」ないし「オールド・スタイル (old-style)」に属しており、ストロークと斜交軸 (an oblique axis) の違いはさほど強調されていない。しかし、ディープディーンは、縮れたように丸みを帯びたセリフと、このスタイルで通常見られるものよりも傾斜が少なく、ほとんど直立したイタリック体が特徴である[1]

ディープディーン
様式 セリフ
デザイナー フレデリック・ガウディ
制作会社 ランストン・モノタイプ・カンパニー
発表年月日 1927年以降
上記表示フォント Linden Hill
金属活字によるディープディーン。

アメリカ合衆国ランストン・モノタイプ・カンパニー英語版から発表されたディープディーンは、当初から人気を呼び、書籍の本文に用いられることもよくあった[2][3][4]。ディープディーンには、デジタル化されたフォントが数種類作られている。

ディープディーンという名は、マールボロ=オン=ハドソン英語版にあったガウディの自宅の名に由来している[3][5][6]。さらにこの家の名は、ガウディがかつてニューヨーククイーンズに住んでいた街路名に由来していた[7][8]

デザイン 編集

ガウディは、このデザインについて、「紹介されたばかりだったオランダの書体 (a Dutch type which had just been introduced)」に着想を得たと述べている。ガウディの友人であったポール・ベネット英語版の晩年の示唆によれば、これはヤン・ファン・クリンペン英語版が作ったルテティア (Lutetia) のことを指しているようだが、ウォルター・トレイシー英語版はそのような比定に確証はないと述べている[9]。ガウディはその後、中程度の字の太さをもったボールド体とボールド・イタリック体も制作した[1]

ガウディの伝記を書いたD・J・R・ブルックナーは、このデザインを「この書体は、ガウディの特徴のほとんどを盛り込んだ、最良のもの」だと賞賛した[3]

後にガウディは、ディープディーン・テキスト (Deepdene Text) をもとにしたディープディーン・オープン・テキスト (Deepdene Text) というブラックレターのデザインも生み出した[10]。これらのデザインは、作者が同じという以上の関連性はもっていない[1]

実際に活字が鋳造された書体には、以下がある。

デジタル化 編集

 
大文字や、小文字の 'g'、'k'、'z' の基線より下に、縮れたように丸み (swash) があるオープンソースのフォント「リンデン・ヒル」は、ガウディのディープディーンを基にバリー・シュワルツが作った書体。

ディープディーンは、いくつかの組織やソフトウェア会社によってデジタル化され、リリースされている。P22 によるデジタル化は、同社のLTC印刷 (LTC imprint) 用に作られたものであり、イタリック体に縮れたように丸み(スウォッシュ英語版)とスモールキャピタルが用意されている点は、おそらく他に例がない[11]オープンソースの「リーグ・オブ・ムーバブル・タイプ (League of Movable Type)」プロジェクトは、バリー・シュワルツ (Barry Schwartz) が作成したオープンソースのデジタル化「リンデン・ヒル (Linden Hill)」をリリースしており、通常の書体とイタリック体にはスウォッシュが付けられているが、太字は施されていない[12]

脚注 編集

  1. ^ a b c d Goudy, Frederic (1946). A Half-Century of Type Design and Typography, Volume 2. New York: The Typophiles. pp. 150-201. https://archive.org/details/GoudyHalfCentury1946V2 2016年6月11日閲覧。 
  2. ^ A Bull in the Typography Shop: a review of Frederic Goudy by D. J. R. Bruckner”. New York Times. 2016年2月5日閲覧。
  3. ^ a b c Bruckner, D. J. R. (1990). Frederic Goudy. Masters of American Design 
  4. ^ Deepdene Oldstyle”. P22. 2016年6月11日閲覧。
  5. ^ Guide to the Frederic Goudy Papers, 1903-1966”. Catherine Pelton Durrell ’25 Archives and Special Collections Library. Vassar College. 2016年6月11日閲覧。
  6. ^ Deepdene, Goudy’s Home on Old Post Road”. Marlborough Local History (blog). 2016年6月11日閲覧。
  7. ^ Sloane, Eric (April 2006). Return to Taos: Eric Sloane's Sketchbook of Roadside Americana. Courier Corporation. pp. 8–9. ISBN 978-0-486-44773-5. https://books.google.com/books?id=w0jv_5oCnKsC&pg=PA8 
  8. ^ Emily Amodeo; Joanne Sagarese Pagnotta; James B. Cosgrove (2012). Marlborough. Arcadia Publishing. p. 8. ISBN 978-0-7385-9788-1. https://books.google.com/books?id=ehvxi4dJX48C&pg=PA8 
  9. ^ Tracy, Walter (January 2003). Letters of Credit: A View of Type Design. D.R. Godine. p. 121. ISBN 978-1-56792-240-0. https://books.google.com/books?id=y8NssjbqNcsC&pg=PA121 
  10. ^ ここで「テキスト (Text)」は、ブラックレターを意味する「テクストゥラ (Textura)」のことである。この文脈においては、本体の文章に用いるフォントを意図していない。
  11. ^ LTC Deepdene”. MyFonts. LTC. 2015年8月27日閲覧。
  12. ^ Linden Hill”. League of Movable Type. 2015年8月27日閲覧。

外部リンク 編集