H2Sは、第二次世界大戦時にイギリス空軍によって開発された、航空機用の爆撃照準レーダーである。

H2S専用のスキャナー(送受信アンテナ)を機体後部下面に装備したイギリス空軍のハリファックス
H2Sのレーダースコープに地図状の地形で表示された、ドイツの都市ケルン。都市部を流れるライン川が右上から左下に蛇行した形で表示されている

概要 編集

専用の送受信アンテナから、電波を円錐状に地上に発信して走査を行い、地上から反射した電波を受信後、専用の関連機器を介して、コントロール装置にあるPPIスコープ(平面位置表示機)に走査を行った範囲の地図状の画像を表示する機上レーダー装置である。レーダースコープに地図状の地形を表示するため、それを爆撃照準に利用することにより、夜間や昼間の雲量が多い場合でも、目標に対して正確に爆撃することが可能となった。また、実戦で使用された最初のグランドマッピングレーダーでもある。走査に使用される電波は、スコープ上に地図状の地形を表示するため、高解像度画像の表示を可能とするSバンド帯の波長が10cmの極超短波が最初に使用されていたが、その後、より解像度を上げるため、波長が1.5-3cmのマイクロ波が使用されている。

1940年に開発が始められ、最初にイギリス空軍の4発爆撃機であるスターリングハリファックスに搭載された。レドームに覆われた専用のスキャナー(送受信アンテナ)を機体後部下面に装備し、コントロール装置とPPIスコープは機首にあるレーダー航法士席に設置され、1943年の1月30日から31日にかけてドイツの大港湾都市ハンブルクの夜間爆撃で初めて実戦に使用された。その後、H2Sはアメリカにも供与されており、英国に基地を置いていたアメリカ陸空軍の第8航空軍の爆撃機にも搭載され、1944年9月以降の爆撃任務の80%はH2Sによるレーダー爆撃方式で行われるようになった。また、アメリカは使用する電波をXバンド帯に変更して性能を大幅に改善したH2Xを開発して、1945年にイギリス空軍によりテストされている。その後、H2Xとその他の搭載レーダーとのシステム化を図ったAN/APQ-13が開発され、B-29爆撃機に搭載されて日本本土空襲で使用されている。

脚注 編集


関連項目 編集