JavaScript Object Notation
JavaScript Object Notation(JSON、ジェイソン)はデータ記述言語の1つである。軽量なテキストベースのデータ交換用フォーマットでありプログラミング言語を問わず利用できる[1]。名称と構文はJavaScriptにおけるオブジェクトの表記法に由来する。
![]() | |
拡張子 | .json |
---|---|
MIMEタイプ | application/json |
種別 | Data interchange |
国際標準 | IETF STD 90 RFC 8259 ECMA-404 2nd edition |
特徴編集
JSONはウェブブラウザなどでよく使われているECMA-262, revision 3準拠のJavaScript[2] (ECMAScript) をベースとしている。2006年7月にRFC 4627で仕様が規定され、その後、何度か改定され、2017年12月14日[3]にIETF STD 90およびRFC 8259およびECMA-404 2nd editionが発表された。MIMEタイプは application/json
、拡張子はjsonとされた。
IETFおよびECMAの仕様の改定の歴史
- 2006年7月 - RFC 4627
- 2013年3月 - RFC 7158
- 2013年10月 - ECMA-404 1st edition
- 2014年3月 - RFC 7159
- 2017年12月14日[3] - RFC 8259 および IETF STD 90 および ECMA-404 2nd edition
JSONはJavaScriptにおけるオブジェクト表記法のサブセットであるが、JavaScriptでの利用に限られたものではない。
JSONは単純であるので、特にAjaxの分野で利用が広がりつつある。JavaScriptでJSONをパースして読み込むには、文字列をJavaScriptのコードとして解釈させる eval
関数を作用させるだけでよい(ただし、セキュリティ上の問題があるうえ、ECMAScript 2018 まで[4]は U+2028 LINE SEPARATOR と U+2029 PARAGRAPH SEPARATOR の扱いがJavaScriptと互換性が無いため、JSON専用のパース関数の JSON.parse()
を利用するべきである)。このように、広く普及しているウェブブラウザ搭載言語であるJavaScriptで簡単に読み込めるため、Ajaxの開発者達から注目を浴びることになった。
JavaScript言語以外でも、ほとんどの言語においてJSONは単純な処理で書き出しや読み込みができる。そのため、JSONは異なるプログラミング言語の間でのデータの受渡しには能率的である。ウェブアプリケーションの場合において、ウェブクライアントでのJavaScriptとのデータの受渡しなどはその最たる活用例と言える。プロセス間通信、マシン間通信においても、疎結合にするため、JSONで情報を受け渡しすることもある。
JSONの発見編集
ダグラス・クロックフォードはJavaScriptのプログラマで、JSONを広めた一人だが、「The JSON Saga」と題したプレゼンテーション[5]中で「自分はJSONと名付けたが、考案者ではなく、それ自体は“自然に”存在していたもので、早い例としては1996年にはNetscape Navigatorでデータ交換用に使われていた。だから“発見した”ということになるのだが、発見したのも自分が最初ではない」といったように述べている。以上のことを縮めて「JavaScriptのオブジェクト表記法からJSONが発見された。」と表現されている場合がある。
表記方法編集
JSONで表現するデータ型は以下の通りで、これらを組み合わせてデータを記述する[6]。true
, false
, null
などは全て小文字でなくてはならない。
- オブジェクト(順序づけされていないキーと値のペアの集まり。JSONでは連想配列と等価)
- 配列(データのシーケンス)
- 数値(整数、浮動小数点数)
- 文字列(バックスラッシュによるエスケープシーケンス記法を含む、ダブルクォーテーション
"
でくくった文字列) - 真偽値(
true
とfalse
) null
数値は10進法表記に限り、8進、16進法表記などはできない。また浮動小数点数としては 1.0e-10
といった指数表記もできる。
文字列は(JSONそれ自体と同じく)Unicode文字列である。基本的にはJavaScriptの文字列リテラルと同様だが、囲むのにシングルクォートは使えない。バックスラッシュによるエスケープがある。
配列はゼロ個以上の値をコンマで区切って、角かっこでくくることで表現する。例えば以下のように表現する:
["milk", "bread", "eggs"]
オブジェクトはキーと値のペアをコロンで対にして、これらの対をコンマで区切ってゼロ個以上列挙し、全体を波かっこでくくることで表現する。例えば以下のように表現する:
{"name": "John Smith", "age": 33}
ここで注意することはキーとして使うデータ型は文字列に限ることである。したがって、
{name: "John Smith", age: 33}
という表記は許されない。この後者の表記はJavaScriptのオブジェクトの表記法としては正しいが、JSONとしては不正な表記である。
プログラム上で生成した文字列をJSONとして扱う場合、ダブルクォーテーション"
を含む文字列を利用しなければいけないことに注意が必要である。なぜならコード上の"
は文字列定義に利用される"
であり、生成されるのはあくまで文字列hello
であって文字列"hello"
ではない。JSONの文字列型は後者であると定義されているので、以下のようにエラーを発生させる。利用時にはJSON生成関数(例 JavaScript: JSON.stringify
)を利用する方がより安全である。
const invalidJSON = "hello";
const validJSON = '"hello"';
JSON.parse(invalidJSON)
// Thrown:
// SyntaxError: Unexpected token h in JSON at position 0
JSON.parse(validJSON)
// 'hello'
// safe JSON generation
const output = JSON.stringify("hello")
output
// '"hello"'
エンコーディング編集
RFC 8259より、閉じられたエコシステムで利用する場合を除き、文字コードはUTF-8でエンコードすることが必須 (MUST) となっている。ネットワークでJSONを送信する場合は、バイト順マークを先頭に付加してはいけない (MUST NOT)。
過去のIETFの仕様では、JSONテキストはUnicodeでエンコードするとされていた (SHALL)。デフォルトのエンコーディングはUTF-8であった。なお、単独の文字列でない限り最初の2文字は必ずASCII文字であるので、最初の4バイトを見ることにより、UTF-8、UTF-16LE、UTF-16BE、UTF-32LE、UTF-32BEのいずれの形式でエンコードされているか判別できた。
AjaxにおけるJSONの利用編集
AjaxにおいてXMLHttpRequestで非同期にJSONでのデータを受け取る例を示す:
古典的な例編集
var the_object;
var http_request = new XMLHttpRequest();
http_request.open( "GET", url, true );
http_request.onreadystatechange = function () {
if ( http_request.readyState == 4 ) {
if ( http_request.status == 200 ) {
the_object = eval( "(" + http_request.responseText + ")" );
} else {
alert( "There was a problem with the URL." );
}
http_request = null;
}
};
http_request.send(null);
新しい記法を利用した例編集
var the_object;
var http_request = new XMLHttpRequest();
http_request.open( "GET", url, true );
http_request.responseType = "json";
http_request.addEventListener ( "load", function ( ev ) {
if ( ev.target.status == 200 ) {
the_object = http_request.response;
} else {
alert( "There was a problem with the URL." );
}
delete http_request;
});
http_request.send(null);
ここでいずれも、http_request
はXMLHttpRequestオブジェクトであり、それを url
にアクセスして返ってきたJSONで記述されたデータを the_object
に格納される。いま、XMLHttpRequestを用いて実装をしたが、iframeなどの他の実装方法もある。また、JavaScriptライブラリのprototype.jsではHTTPの X-JSON
ヘッダを利用して簡単にJSONデータの受渡しができる。
改行区切りのJSON編集
1行を1つのJSONとする改行区切りのJSONが複数の人によって提案されている。仕様は同一である。改行コードは \n を使わなければならないが、JSON の末尾に \r があっても無視されることから \r\n も利用可能である。
- JSON Lines (JSONL)[7] - 拡張子は jsonl
- Newline delimited JSON (NDJSON)[8](旧称 Line delimited JSON, LDJSON[9])- 拡張子は ndjson 、MIMEタイプは application/x-ndjson
Comma-Separated Values よりも柔軟性がある。また、JSONの配列を使うよりも可読性があるうえ、ストリーミングにすることができる。以下は例。
{"ts":"2020-06-18T10:44:12","started":{"pid":45678}}
{"ts":"2020-06-18T10:44:13","logged_in":{"username":"foo"},"connection":{"addr":"1.2.3.4","port":5678}}
{"ts":"2020-06-18T10:44:15","registered":{"username":"bar","email":"bar@example.com"},"connection":{"addr":"2.3.4.5","port":6789}}
{"ts":"2020-06-18T10:44:16","logged_out":{"username":"foo"},"connection":{"addr":"1.2.3.4","port":5678}}
他のデータ記述法との関係編集
- XML
- JSONはXMLと違ってマークアップ言語ではない。ウェブブラウザから利用できるという点では共通している。また両者とも巨大なバイナリデータを扱う仕組みがないことが共通している。
- YAML
- JSONはYAMLのサブセットと見なしてよい[10]。YAMLにはブロック形式とインライン形式(フロー形式)の表記法があるが、JSONは後者にさらに制約を加えたものと捉えることができる。例えばRubyでは以下のようにしてJSONをYAMLとして読み込むことができる:
the_object = YAML.load('{"name": "John Smith", "age": 33}')
- YAML 1.1以前は、配列と連想配列の区切りをそれぞれ
,
のようにカンマ+スペースの形にすることでJSONのスーパーセットとなったが、YAML 1.2では区切り文字も互換となったため、正常なJSON文書においては公式に完全なスーパーセットとなった。僅かな相違点として、連想配列のキーがユニークであるべきことをJSONではSHOULDレベルで要請するのに対し、YAML 1.2ではMUSTレベルで要請している[11]為、該当する異常データのエラーハンドリングに違いが出る可能性はある。
実装編集
JSONは多くのプログラミング言語で利用可能なライブラリーなどが提供されている。例えば、ActionScript, C, C++, C#, ColdFusion, Common Lisp, Curl, D, Delphi, E, Elixir, Erlang, Groovy, Haskell, Java, JavaScript (ECMAScript), Lisp, Lua, ML, Objective-C, Objective CAML, Perl, PHP, Python, R, Rebol, Ruby, Scala, Squeakなど。
ただし、テキストファイル、データを交換する手段を持つプログラミング言語であれば自力でパースして入力したり、フォーマット処理で出力は可能である。
出典編集
- ^ JSON is a lightweight, text-based, language-independent syntax for defining data interchange formats. ECMA-404
- ^ “Introducing JSON”. json.org. 2008年4月19日閲覧。
- ^ a b ongoing by Tim Bray · The Last JSON Spec
- ^ Subsume JSON a.k.a. JSON ⊂ ECMAScript · V8
- ^ Douglas Crockford: The JSON Saga - YouTube
- ^ A JSON value can be an object, array, number, string, true, false, or null. ECMA-404
- ^ JSON Lines
- ^ ndjson
- ^ Update specification_draft2.md · ndjson/ndjson-spec@c658c26
- ^ “YAML is JSON”. 2009年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月15日閲覧。
- ^ “3.2.1. Representation Graph - YAML Ain’t Markup Language (YAML™) Version 1.2”. yaml.org. 2013年5月15日閲覧。
関連項目編集
外部リンク編集
- Introducing JSON (英語)
- JSONの紹介 (日本語)
- JSON フォーマッタ
- IETFの仕様書
- IETF STD 90 および RFC 8259
- 古い廃止された仕様書
- ECMA-404 (英語)