MACアドレス(マック・アドレス、英語: Media Access Control address)とは、Media Access Controlにおいて、ネットワークインタフェースを識別するために使用される識別子である。OSI参照モデルでいえば、第2層(データリンク層)にあたる。

原則として全てのネットワーク機器に一意に割り当てられるが、様々な要因で例外が存在する。

概要 編集

WindowsコマンドプロンプトではPhysical Addressと表記されており、単に物理アドレスと呼ばれたりNode ID(ノードID)の別名でも呼ばれたりすることがある。

イーサネットIEEE 802.11 (Wi-Fi)の場合、48ビット(EUI-48)の符号である。MACアドレスの表現には、04-A3-43-5F-43-23や32:61:3C:4E:B6:05といったオクテットで区切り16進数表現を用いる。このMACアドレスの6つのオクテットのうち、最初の3オクテットがベンダーID部、次の1オクテットが機種ID、最後の2オクテットがシリアルIDとなることが一般的である。この場合、上位4オクテットでネットワーク機器の機種名まで特定可能である。

グローバルアドレスとローカルアドレス 編集

 
IEEEでOUIを検索する
OUI検索ページで6桁のアドレスを入力すると登録されている製造者名が表示される。

先頭オクテットのビット0x02がグローバルアドレスとローカルアドレスを識別するビットで、GLビットと呼ばれる。OFFであればグローバルアドレス、ONであればローカルアドレスであることを示している。また、先頭オクテットのビット0x01がユニキャストとマルチキャストを識別するビットで、IGビットと呼ばれる。詳細は、英文記事のMAC address#Address detailsを参照。

グローバルアドレスの場合、世界中のMACアドレスの管理を行なっているIEEEに料金を支払って、割り当てと登録を受けている。上位3オクテットはOUI(Organizationally Unique Identifier)と呼ばれる[1]OUIを割り当てられた各製造者は下位3オクテットを独自に重複しないように割り当てており、1つのOUIの割り当てを受けることで1677万7216個の製品に個別のMACアドレスが割り振れる。この仕組みにより、原則として、MACアドレスは世界中で唯一の番号となる。IEEEではOUIの登録データをWebで検索できるようにしている。

IPv4では、MACアドレスとIPアドレスの相互変換には、ARPRARPというプロトコルを用いる。IPv6では、MACアドレスとIPアドレスの相互変換には、ICMPv6で規定されている近隣探索プロトコル(Neighbor discovery, NDP)を用いる。

変更と重複 編集

MACアドレスは物理アドレスと呼ばれるが、ソフトウェアの設定により変更可能なネットワーク機器も存在する。また、仮想マシンなどでは任意の値に変更できる場合もある。このため、無線LAN (Wi-Fi)などの情報セキュリティの確保のためにMACアドレス・フィルタリングを利用する場合、ブラックリストによる防御は突破される可能性がある[2]

また、以下のOSでは、程度の差こそあれWi-Fiにおいて毎回異なるMACアドレスを使用する。

このようにMACアドレスは変更可能なため、MACアドレスが重複することがある。また、ハードウェアの出荷時点から重複が存在している可能性がRFC 7136RFC 7217で指摘されている[6]

近傍にMACアドレスが重複するネットワーク機器が複数あると正常な通信ができない。また、DHCPなど、MACアドレスを装置の識別に使用する場合もMACアドレスが重複すると意図しない動作となることがある。特に管理用途でMACアドレスを使う場合は、同一セグメントに限らず重複が問題となることがある。

枯渇の可能性 編集

MACアドレスが有限の符号である以上、理論的には枯渇というものが考えられる。しかし、IPアドレス枯渇問題などで話題になるIPv4と違い、MACアドレスは248=281,474,976,710,656個≒281兆個(IGビット/GLビットを除外すると246=70,368,744,177,664≒70兆個)と多いことなどにより、2012年時点では差し迫った問題にはなっていない。

MACアドレステーブル 編集

L2スイッチなどの通信機器では、通信機器の[[ポート]]と、そのポートに接続される相手の通信機器のMACアドレスのマッピング情報を「MACアドレステーブル」に保存している。

出典 編集

  1. ^ 日経NETWORK 2006年9月号「ネットワークの基礎 MACアドレス」p.82
  2. ^ MACアドレス制限は“効果ゼロ”今さら聞けない「無線LAN認証」の基本【1/4】”. 大塚商会. 2020年8月22日閲覧。
  3. ^ iOS 14、iPadOS 14、watchOS 7 でプライベート Wi-Fi アドレスを使う”. Apple サポート (2020年8月13日). 2020年8月22日閲覧。
  4. ^ Privacy changes in Android 10 MAC アドレスのランダム化”. Android デベロッパー. 2020年8月22日閲覧。
  5. ^ ランダム ハードウェア アドレスを使う理由と方法”. Microsoftサポート. 2020年8月22日閲覧。
  6. ^ MACアドレスの再利用は、みんなが思っているよりもはるかに一般的”. Geekなぺーじ (2020年6月16日). 2020年8月22日閲覧。 “RFC 7136では、「製造業者が複数のデバイスに対して同じMACアドレスを割り当てているという報告が頻発している」、とあります。 また、「バーチャルマシンが同じMACアドレスを使い回している」という話も書かれています。RFC 7217では、「MACアドレスの再利用は、みんなが思っているよりもはるかに一般的であることを実世界のデータが示している」、とあります。 さらに、その根拠として、 Derbycon 2012での発表がRFC 7217で紹介されています。”

関連項目 編集

外部リンク 編集

  • IEEE OUI検索ページ(英語)
  • NICベンダーID一覧 - 非公式なOUIを含む一覧。本文にあるようにIEEEに登録されていないOUIというものが存在する、そのような厄介なベンダ製のNICを調査するためのリスト。