U級潜水艦 (イギリス海軍)
U級潜水艦(Uきゅうせんすいかん、U-class submarine)、公式には戦時緊急計画1940および1941年・短船体型(War Emergency 1940 and 1941 programmes, short hull)[1]は、第二次世界大戦直前から戦中にかけて49隻が建造されたイギリス海軍の小型潜水艦。1番艦アンダイン(HMS Undine)の名にちなんで、アンダイン級とも呼ばれる。
U級潜水艦 | |
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ホーリー・ロックを出航するU級潜水艦アルティメイタム(HMS Ultimatum, P34)(1943年8月) | |
基本情報 | |
種別 | 潜水艦 |
運用者 | イギリス海軍 |
建造数 | 49隻 |
前級 | T級潜水艦 |
次級 |
V級潜水艦 P611級潜水艦(購入) |
要目 | |
排水量 |
540トン(基準), 630トン(満載、水上) 730トン(水中) |
長さ | 191 ft (58 m) |
幅 | 16 ft 1 in (4.90 m) |
吃水 | 15 ft 2 in (4.62 m) |
主機 |
ディーゼル・エレクトリック2基2軸 パックスマン・リカルド・ディーゼルエンジン2基 + 電動機 615 馬力 (460 kW), 825 馬力 (615 kW) |
速力 | 水上11.25ノット、水中10ノット |
航続距離 | 11ノットで4,500海里 (水上航走) |
乗員 | 27 - 31人 |
兵装 |
21インチ(533mm)魚雷発射管 6門(内装4門、外装2門〈第1グループのみ〉)、魚雷8 - 10基 3インチ砲 1門 |
設計と開発
編集排水量約630トンのこれらの小型潜水艦は当初、非武装の練習潜水艦として老朽化しつつあったH級潜水艦を代替し、対潜水艦戦訓練において標的役をつとめることを意図したものであった。
最初の3隻、すなわちアンダイン(HMS Undine, N48)、ユニティ(HMS Unity, N66)、アーシュラ(HMS Ursula、N59)は、1936年に発注され、建造中の改正で艦首に内装式魚雷発射管4門および外装式魚雷発射管2門を装備することになった。アンダインおよびユニティを除く全艦は、3インチ(76ミリ)砲1門を装備したが、砲手用のハッチがなかったため、砲手は司令塔のメインハッチから出入りしなければならなかった。
戦争が迫るにつれ、12隻がさらに発注されたが、外装式発射管を備えるのは、ユニーク(HMS Unique, N95)、アプホルダー(HMS Upholder, N99)、アップライト(HMS Upright, N89)、アットモスト(HMS Utmost, N19)の4隻のみとされ、後に建造された艦には外装式発射管は省略された。外装式発射管は大きな艦首波を生じさせ、潜望鏡深度での深度維持を困難にしたためである。
魚雷発射管を備えたU級は、北海やとりわけ地中海のような閉水域において有用な戦闘艦であることを示した。第3グループとしてさらに34隻が1940年から1941年にかけて発注され、これらは第2グループと同じ設計だったがさらに流線型の船型とするために5フィート艦体が延長された。
全49隻のうち2隻を除く全ての艦は、ヴィッカース・アームストロングで建造された。例外は、アンパイア(HMS Umpire, N82)およびウナ(HMS Una, N87)で、これらはチャタム工廠で建造された。U級の機関部はパックスマンのディーゼルエンジン(出力615馬力/460キロワット)と電気モーター(825馬力/615キロワット)からなり、これらにより水上で11.25ノット(時速21キロメートル)、水中で10ノット(時速19キロメートル)の速力を発揮した。従来の単品の手製エンジンではなく市販の既製品のエンジンを搭載するのは本級の技術的な革新点であり、エンジン含めU級の潜水艦同士であらゆる部品が供用可能であった[2]。
戦歴
編集建造された艦のほとんどは、マルタ島を根拠地とする第10潜水戦隊で任務に就いた。戦争中に19隻が失われ、そのうち13隻は地中海で、残りは北海および大西洋で失われた。加えて、アンテームド(HMS Untamed, P58)は1943年5月に沈没し、後に引き上げられて再生され、ヴァイタリティ(HMS Vitality)として再就役した。1941年からは数隻がソ連や自由フランス海軍、その他の連合国の海軍に移管された。U級の設計は、大戦後期にV級潜水艦(en:British V class submarine)に発展した。
艦名一覧
編集第1グループ
編集U級最初の3隻は、1937年に進水し[3]、1938年後半に就役した。当初、訓練用潜水艦として設計されたU級だが、その設計は、海軍省が設計を拡大し、敵国の海上輸送にいっそう効果的に脅威を与えられるように攻撃能力を改善するのに充分なものであった。しかしながら、戦後まで生き延びたのはアーシュラのみであった。
- アンダイン(HMS Undine, N48)
- ユニティ(HMS Unity, N66)
- アーシュラ(HMS Ursula, N59)
第2グループ
編集U級第2グループは12隻からなり、第1グループの3隻と同一の設計である。しかし、多くは深度保持能力を改善する改正を受けている。第2グループにはとりわけ著名になった数隻の艦が含まれている。アーキン(HMS Urchin, N97)はポーランド海軍に譲渡され、ソコル(ORP Sokół)として大きな戦果をあげた。もっとも有名なのは、アプホルダー(HMS Upholder, N99)で、全就役期間にわたってマルコム・ウォンクリン少佐が指揮をとっていた。ウォンクリンは、1941年5月25日、厳重に護衛された輸送船団を襲撃し、イタリアの客船「コンテ・ロッソ」を撃沈した功績によりヴィクトリア十字章を授与された。地中海における16ヶ月の作戦行動中に、アプホルダーは24回の哨戒に出撃し、11万9000トンの枢軸国艦船を沈めた。これら艦船の中には、Uボート3隻、駆逐艦1隻、輸送船15隻、さらに巡洋艦および駆逐艦と思われる艦艇が含まれる。しかしながら、第2グループの艦の喪失は多く、戦後まで生き延びたのは3隻に過ぎない。
- アンパイア(HMS Umpire, N82)
- ウナ(HMS Una, N87)
- アンビーテン(HMS Unbeaten, N93)
- アンドーンテッド(HMS Undaunted, N55)
- ユニオン(HMS Union, N56)
- ユニーク(HMS Unique, N95)
- アプホルダー(HMS Upholder, N99)
- アップライト(HMS Upright, N89)
- アーキン(HMS Urchin, N97)
- アージ(HMS Urge, N17)
- アスク(HMS Usk, N65)
- アットモスト(HMS Utmost, N19)
第3グループ
編集第3グループの34隻は3度に分けて発注された。喪失は依然として多かった。1940年6月の決定により、非常に多くの潜水艦が発注されることを見越して、潜水艦を命名する慣行は省略され、これらの潜水艦は当初、艦名を与えられる代わりにP.31からP.39、P.41からP.49といったように識別された。1942年の終わりに、チャーチルは、すべての潜水艦が艦名を与えられるべき旨を個人的に命じたが、公式に艦名を与えられる前にすでに8隻がイギリス海軍では失われていた。また、数隻は連合国の海軍で任務に就いており、戦後も引き続き各国にとどまった。ノルウェー海軍のウーレド(HNoMS Uredd)は触雷により喪失した。戦争を生き延びたU級潜水艦は、1950年代にスクラップ処分された。
10隻は1940年5月11日、1940年計画のもとで発注された。
- アップロア(HMS Uproar, P31)
- P32(HMS P32, 1940)
- P33(HMS P33, 1941)
- アルティメイタム(HMS Ultimatum, P34)
- アンブラ(HMS Umbra, P35)
- P36(HMS P36, submarine)
- アンベンディング(HMS Unbending, P37)
- P38(HMS P38, 1941)
- P39(HMS P39)
- ウーレド(ノルウェー海軍、HNoMS Uredd, P-41)
12隻は1940年8月23日、1940年計画のもとで発注された。
- アンブロークン(HMS Unbroken, P42)
- ユニゾン(HMS Unison, P43)
- ユナイテッド(HMS United, P44)
- アンライバルド(HMS Unrivalled, P45)
- アンラッフルド(HMS Unruffled, P46)
- P47(HMS P47)
- P48(HMS P48, 1942)
- P49(HMS Unruly, P49)
- アンシーン(HMS Unseen, P51)
- ジーク(ポーランド海軍、ORP Dzik)
- アルトア(HMS Ultor, P53)
- アンシェイクン(HMS Unshaken, P54)
最後の12隻が発注されたのは、1941年7月12日1941年計画の下であった。
- アンスペアリング(HMS Unsparing, P55)
- ユーザーパー(HMS Usurper, P56)
- ユニヴァーサル(HMS Universal, P57)
- アンテームド(HMS Untamed, P58)
- アンタイアリング(HMS Untiring, P59)
- ヴァランジャン(HMS Varangian, P61)
- ユーゼル(HMS Uther, P62)
- アンサーヴィング(HMS Unswerving, P63)
- ヴァンダル(HMS Vandal, P64)
- アップスタート(HMS Upstart, P65)
- ウーラ(ノルウェー海軍、HNoMS Ula, 1943)
- キュリー(FFS Curie)
最終グループの数隻は、艦名がUではなくVから始まっている。しかしながら、最後の2隻はノルウェーおよびフランスへの移管の際に遡及的に改名されたものであり、これらの艦名は新しいV級の潜水艦に割り当てなおされた。
イギリス海軍以外での就役
編集イギリス海軍でと同様、数隻のU級潜水艦は、連合国に譲渡された。
ソビエト海軍
編集- V 2(旧アンブロークン)
- V 3(旧ユニゾン)
- V 4(旧アーシュラ)
ノルウェー海軍
編集- ウーレド(HNoMS Uredd , P-41,旧P41)
- ウーラ(HNoMS Ula, 旧Varne)
ポーランド海軍
編集- ジーク(ORP Dzik, 旧P52)
- ソコル(ORP Sokół, 旧アーキン)
自由フランス海軍
編集- キュリー(FFS Curie, P67, 旧ヴォックス)
オランダ海軍
編集- ドーフィン(HNMS Dolfijn, 旧P47)
出典
編集- ^ Conways All the worlds Fighting Ships 1922-46
- ^ ウインゲート 1994, p. 45-46.
- ^ ウインゲート 1994, p. 45.
- “U class”. uboat.net. 2012年5月6日閲覧。
- “Untiring to Urge”. British submarines of World War II. 2012年5月6日閲覧。
参考文献
編集- Colledge, J. J.; Warlow, Ben (2006) [1969]. Ships of the Royal Navy: The Complete Record of all Fighting Ships of the Royal Navy (Rev. ed.). London: Chatham Publishing. ISBN 978-1-86176-281-8. OCLC 67375475。
- Robert Hutchinson, Submarines, War Beneath The Waves, From 1776 To The Present Day.
- Derek Walters, The History of the British 'U' Class Submarine. (Pen & Sword, 2004).
- ジョン・ウインゲート、秋山信雄(訳)、1994、『イギリス潜水艦隊の死闘』、早川書房 ISBN 4-15-207857-X