森ビル

日本の不動産会社・デベロッパー

森ビル株式会社(もりビル、: MORI BUILDING Co., Ltd.)は、東京都港区六本木に本社を置く日本デベロッパー・総合不動産会社である。

森ビル株式会社
MORI BUILDING Co., Ltd.
種類 株式会社
機関設計 監査役会設置会社[1]
本社所在地 日本の旗 日本
106-6155
東京都港区六本木六丁目10番1号
六本木ヒルズ森タワー
北緯35度39分37.43秒 東経139度43分45.25秒 / 北緯35.6603972度 東経139.7292361度 / 35.6603972; 139.7292361座標: 北緯35度39分37.43秒 東経139度43分45.25秒 / 北緯35.6603972度 東経139.7292361度 / 35.6603972; 139.7292361
設立 1959年昭和34年)6月2日
業種 不動産業
法人番号 1010401029669 ウィキデータを編集
事業内容 総合デベロッパー
代表者 辻󠄀慎吾(代表取締役社長)
資本金
  • 895億円
(2023年3月31日現在)[2]
発行済株式総数
  • 25万4893株
(2023年3月31日現在)
売上高
  • 連結: 2855億8200万円
  • 単独: 2258億1400万円
(2023年3月期)[2]
営業利益
  • 連結: 628億2700万円
  • 単独: 501億7000万円
(2023年3月期)[2]
経常利益
  • 連結: 599億5100万円
  • 単独: 541億6000万円
(2023年3月期)[2]
純利益
  • 連結: 443億4500万円
  • 単独: 411億4900万円
(2023年3月期)[2]
純資産
  • 連結: 6851億0700万円
  • 単独: 5132億7800万円
(2023年3月31日現在)[2]
総資産
  • 連結: 2兆6074億5300万円
  • 単独: 2兆1848億2100万円
(2023年3月31日現在)[2]
従業員数
  • 連結: 3,383人
  • 単独: 1,539人
(2023年3月31日現在)[2]
決算期 3月31日
会計監査人 清陽監査法人[2]
主要株主
  • 森喜代株式会社 70.24%
  • 森磯株式会社 25.61%
  • 多田野祐子 0.93%
  • 森京子 0.93%
  • 森佳子 0.40%
  • 森ビル持株会 0.34%
  • 森泰子 0.33%
  • 森拓 0.33%
  • 辻󠄀慎吾 0.32%
  • 森浩生 0.32%
(2023年3月31日現在)[2]
主要子会社
  • 森ビルホスピタリティコーポレーション 100.0%
  • 森ビル・インベストメントマネジメント 100.0%
  • 森ビル都市企画 100.0%
  • 上海環球金融中心投資 100.0%[2]
関係する人物
外部リンク https://www.mori.co.jp/
テンプレートを表示

本社は六本木ヒルズ森タワー港区を拠点としており、港区を中心とした東京都心部に複数の複合商業施設を有する。大型再開発施設であるアークヒルズ六本木ヒルズ虎ノ門ヒルズ麻布台ヒルズ、商業施設のラフォーレ原宿表参道ヒルズなどの運営などで知られる。

多数の関連会社・関連事業を擁した森ビルグループであったが、創業者であった森泰吉郎の死後、後継の不和により森トラストが分離・独立した(詳細は後述)。

概要 編集

本社を六本木ヒルズ森タワー(東京都港区)に置き、市街地再開発事業ならびに各種ビルの企画・開発・設計監理・営業・運営管理を主な事業としている。2003年平成15年)に完成した六本木ヒルズ2006年(平成18年)に完成した表参道ヒルズなどは話題となり、一般にも広く知られる。また、日本国外では中国に進出し、初の海外プロジェクトである森茂大厦を皮切りに上海ワールド・フィナンシャル・センターなどを開発・運営している。

1993年に創業社長・森泰吉郎が死去したのち、次男森稔が社長に就任し、路線対立から三男森章森トラストをグループから分離するなどして、2012年3月8日に亡くなるまで長らくトップ(会長)を務めた。森稔は、信奉するル・コルビュジエの思想に基づいて[3]、港区を中心とした東京都心部での衣・食・住・文化を一まとめとした職住近接型の総合的な街作りを行っている。森ビルは、密集している低層建築物を高層ビル化と地中化により垂直に集積させ、緑地面積と公開空地を確保する再開発手法をとっており、このようにして生み出した都市を「垂直庭園都市(バーティカルガーデンシティ)」と呼称している[4]。森稔の都市や文化に寄せる強い思いは森ビルの経営に大きく反映されており、かつてのセゾングループを強く意識しているとも指摘されている[5]

また、市街地再開発に当たっては、自社の社員の手による地上げを行う数少ない不動産会社である(他に住友不動産も自社で地上げする)[注釈 1]

沿革 編集

元来、森家の生業は東京・田村町(現在の港区西新橋)で営む米穀店であった。明治期に愛宕下(現在の港区新橋から西新橋にかけての地域)の江戸藩邸跡地に作られた貸家の差配を副業として始め、のちに借地権付建物の買収を進めて不動産賃貸業に進出した。関東大震災で、自宅および貸家のほとんどが焼失したが、以後太平洋戦争終結まで低額な底地を買い進め、2000坪あまりの土地を有していた[6][7]

終戦後の1946年、家業を引き継いだ創業者森泰吉郎は、日本の地価が「等比級数的」に高騰することを予想し、預金封鎖の直前に引き出した資金をレーヨンに投資して得た利益などで虎ノ門周辺の土地を買い進めた[8]。その後も、港区を中心に土地の整理やビル建設に取り組み[9]1955年昭和30年)に森ビルの前身である森不動産を設立、翌1956年には泰成(現:森トラスト・ホールディングス)を設立して、4月に「西新橋2森ビル」[注釈 2]を竣工した。1957年(昭和32年)11月、「西新橋1森ビル[注釈 3]」を完成させ、以後、貸ビル業者として、竣工順に番号を付したナンバー・ビル(第○○森ビル)を新橋周辺に順次建設していった。後年、森泰吉郎は、港区で創業したことが幸運だったと述懐している[7]

創業者森泰吉郎経営学者[注釈 4]でもあったことから、アメリカで提唱されたオペレーションズ・リサーチをいち早く取り入れ、案件ごとのプロジェクトチームで縦割り組織の弊害を避けた。また再開発事業では地権者なども組織化することで、意思決定の効率化を図った。また、ビルの維持管理へのコンピュータシステムの導入を1970年代から進め、先駆けてコストダウンを実現した[10]

大規模再開発による事業は、1986年(昭和61年)に完成した赤坂アークヒルズ(アークヒルズ)が最初で、これによって森ビルのブランドは全国的なものとなった[6]。以後は御殿山ヒルズ(現:御殿山トラストシティ)、城山ヒルズ(現:城山ガーデン)、愛宕山ヒルズ(現:愛宕グリーンヒルズ)、元麻布ヒルズと続いた。さらに、2003年平成15年)には六本木ヒルズ2008年(平成20年)には上海環球金融中心といった大型プロジェクトを完成させた[6]2014年(平成26年)6月には環状第二号線との一体プロジェクトとして、虎ノ門ヒルズを開業した[11][12]

なお、創業者は森泰吉郎であるが、実質的な創業者は、泰吉郎が死去した1993年に社長についた次男の森稔ともされる[6]

森トラストの分裂 編集

1993年平成5年)に創業者、森泰吉郎が死去すると、次男の森稔が森ビル、三男の森章がグループ会社である森ビル開発(現:森トラスト)や森ビル観光(現:森トラストの一部、並びに森トラスト・ホテルズ&リゾーツ)を継いだ。

しかし、父の路線を引き継ぎ安定したグループ経営を目指す稔と、ホテルや不動産取得を主として積極的な投資、開発でグループの拡大を目指す章との溝は深まっていった。1999年(平成11年)に森章率いる企業群は森ビルグループからの離脱が決定、本社の移転や出向社員、役員の引き上げを経て、現在は一切資本関係も無い別会社となっている。さらに、2000年(平成12年)以降は森トラストは開発、管理、保有する物件から「森」や「ヒルズ」の文字を外すことが多くなっている[注釈 5](詳細は「森トラスト#概要」を参照)。

主な開発施設・地域 編集

日本国内 編集

ヒルズブランド
ナンバービル
 
37森ビル
  • 西新橋2森ビル(1956年竣工、2017年改装)
  • 西新橋二丁目森ビル(実質13森ビル、1966年竣工)
  • 弁護士ビル森ビル14
  • 虎ノ門15森ビル
  • 江戸見坂森ビル(実質24森ビル、1974年竣工)
  • 西麻布28森ビル(1975年竣工)
  • 虎ノ門30森ビル
  • 32芝公園ビル(旧:芝公園32森ビル)
  • 虎ノ門33森ビル
  • 虎ノ門35森ビル
  • 虎ノ門36森ビル
  • 虎ノ門37森ビル
その他
解体
  • 西新橋1森ビル〈1957年竣工〉(→跡地は2009年に駐車場になり、現在はトヨタレンタカー店舗)
  • 西新橋3森ビル〈1959年竣工〉
  • 第5森ビル〈1961竣工、2009年改装〉・虎ノ門10森ビル・虎ノ門12森ビル(→跡地に虎ノ門ヒルズビジネスタワー)
  • 第6森ビル
  • 第7森ビル
  • 虎ノ門9森ビル(→跡地に虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー)
  • 虎ノ門11森ビル〈1966年竣工〉(→跡地に虎ノ門ヒルズステーションタワー)
  • 第16森ビル
  • 虎ノ門17森ビル・虎ノ門23森ビル(→跡地に虎ノ門ヒルズ森タワー)
  • 18森ビル(→跡地に虎ノ門2丁目タワー)
  • 西新橋20森ビル
  • 六本木21森ビル・六本木25森ビル(→跡地にアークヒルズサウスタワー)
  • 新橋29森ビル〈1975年竣工〉(→跡地に新虎通りCORE)

国外 編集

主な関連企業・団体 編集

エリア放送 編集

森ビルはホワイトスペース特区の認定を受け、六本木ヒルズ周辺で実験試験局による実証実験を実施[17]した。 エリア放送の制度化後は地上一般放送局の免許を取得[18]地上一般放送事業者としてフルセグおよびワンセグ放送を実施している。

六本木ヒルズ#エリア放送および虎ノ門ヒルズ#エリア放送も参照。

参考文献 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 地域住民との折衝を辛抱強く重ねて説得する手法を取っている。
  2. ^ 港区西新橋1-10-8。現存。もともと外壁には「森ビル-2」と表示されていたが、2017年に改装工事が実施され、現在は「第二森ビル」と表示されている。
  3. ^ 港区西新橋1-12-1。2008年頃、解体。現存せず。
  4. ^ 横浜市立大学商学部教授を務めた。
  5. ^ 森トラストが管理する御殿山トラストシティは「御殿山ヒルズ」という名称で1990年に開業したが、後に「御殿山ガーデン」という名称に変更され、更に2013年12月には現在の名称にリブランドしている[13]。また、同社が管理する城山ガーデン1991年の開業時には「城山ヒルズ」という名称であったが後に改称されたものである。森ビルのナンバー・ビルも森トラストが継承した分については「MTビル」と改称されている。一方、森ビル側ではファッションビルの名称として使われているラフォーレは森トラスト側では会員制リゾート「ラフォーレ倶楽部」として使用されているが、一部のホテルが他社との提携によって名称が変更された他は使用が継続されている。
  6. ^ 当初ヴィーナスフォートは借地・暫定利用施設(営業期間は10年程度)として開業し、その後当所を含めたパレットタウン一帯を森ビルとトヨタ自動車が土地・建物を買い取るなどして営業を続け、2022年3月27日閉館。

出典 編集

  1. ^ 森ビル株式会社『第65期(2022年4月1日 - 2023年3月31日)有価証券報告書 コーポレート・ガバナンスの状況等』(レポート)2023年6月28日。 
  2. ^ a b c d e f g h i j k 森ビル株式会社『第65期(2022年4月1日 - 2023年3月31日)有価証券報告書』(レポート)2023年6月28日。 
  3. ^ 朝日新聞 2008年1月20日
  4. ^ 森稔インタビュー(森ビル公式サイト)
  5. ^ 暮沢剛巳『美術館の政治学』135頁 青弓社、2007年
  6. ^ a b c d 森ビル会長森氏死去・粘りの交渉で超大型案件 『日本経済新聞』 平成24年3月13日朝刊 企業3面
  7. ^ a b 『私の履歴書 森泰吉郎』(日本経済新聞社、1993.2.)
  8. ^ 「『ストイックな強運』 森泰吉郎・森ビル社長」『日経ビジネス』1986年9月1日号、日経BP社、P.90
  9. ^ 「森泰吉郎氏が語る『近代家主学』」『日経ビジネス』1984年6月25日号、日経BP社、P.8
  10. ^ 森泰吉郎『ビル経営とオペレーションズ・リサーチ』 経営の科学、Vol.33(7)、P.298-299、1988年
  11. ^ a b 虎ノ門ヒルズ:プロジェクト(A NEW LANDMARK)(公式サイト)
  12. ^ 「虎ノ門ヒルズ」が6月11日にオープン(THE PAGE, 2014年3月20日)
  13. ^ 森トラスト、『御殿山トラストシティ』12月3日誕生(スーモジャーナル 2013年10月30日)
  14. ^ “ヒルズの未来形” 虎ノ門・麻布台プロジェクト 街の名称は「麻布台ヒルズ」に決定~「ヒルズ」がつながり、都心部に新たな文化・経済圏を創出~” (PDF). 森ビル (2022年12月14日). 2022年12月14日閲覧。
  15. ^ PDF 1.8MB - 森ビル株式会社(公式サイト)
  16. ^ 「JAKARTA MORI TOWER」 竣工 - 森ビル株式会社
  17. ^ 「ホワイトスペース特区」の認定を受け、六本木ヒルズで実証実験を開始 森ビル ニュースリリース 2011年10月14日
  18. ^ 免許取得状況(エリア放送開発委員会) - ウェイバックマシン(2014年2月2日アーカイブ分)

関連項目 編集

外部リンク 編集