辛子蓮根

熊本県の郷土料理
からし蓮根から転送)

辛子蓮根(からしれんこん)は、蓮根の穴に辛子味噌を詰め込み、黄色い衣を付けて油で揚げた熊本県郷土料理である。同様に「辛子」を冠する明太子などとは異なり、唐辛子ではなく和辛子を用いたものが一般的である。

辛子蓮根

発祥と由来

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蓮根は増血剤として優れている上に辛子には食欲増進作用があり、これを使った辛子蓮根は熊本の一般家庭で正月などに昔から作られた郷土料理で、衣が付くようになったのは明治以後のようである。今では有名となったので辛子蓮根の専門店もある。

熊本藩細川忠利は生来病弱だったが、ある時前任地(小倉藩領)である豊前国耶馬渓羅漢寺の禅僧・玄宅が忠利を見舞った時に、蓮根を食べるよう勧めた。そこで藩の賄方であった平五郎が、加藤清正熊本城の外堀に非常食として栽培していた蓮根の穴に和辛子粉を混ぜた麦味噌を詰め、麦粉・空豆粉・卵の黄身の衣をつけて菜種油で揚げたものを忠利に献上し、蓮根を輪切りにした断面が細川家の家紋(九曜紋)と似ていたことから門外不出の料理とされていたという伝説もある。

蓮根の穴に隙間無く詰め込む。家庭であれば、バットのような容器に辛子味噌を山盛り型に置き、蓮根の断面を上から数回押し付けるのがもっとも簡単な詰め方である。製造業者などで大量生産する際は、辛子味噌を50cm程の山盛りにしておき、蓮根の断面を上から山を削るように押しつけて詰める。

辛子味噌を詰めた蓮根は、5時間以上置いておく。 その後、小麦粉ターメリック・水を粘りが出るように混ぜ合わせて作った揚げ衣を、たっぷり満遍なくつけて中温(180度)の油で揚げる。油は通常菜種油を使うため、衣のターメリックとの相乗効果で出来あがりは黄色く発色した状態となっている。揚げあがったら、適度な厚さで輪切りにして食べる。

  • 辛子の代わりに明太子を用いた「明太子蓮根」「辛子めんこん」なるバリエーションが福岡県で販売されている。(うえやまとちの漫画『クッキングパパ』では「からしめんこん」との名称で登場した)。

食中毒事件

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1984年昭和59年)6月、辛子蓮根製造業者の株式会社三香が製造、販売した真空包装の辛子蓮根によるボツリヌス菌の集団食中毒事件が発生し、36名が中毒症状に陥りうち11名が死亡した。その後の調査で工場で使用途中の生からし粉から菌の毒素が検出され、また、同一ロットの未開封品2袋からも毒素と菌が検出された。何らかの原因でからし粉に菌の微量汚染が起こり、このからし粉を使用した辛子蓮根が、真空包装の工程ののちに相当期間冷蔵されたことが嫌気性のボツリヌス菌にとって好環境となり、汚染が進んだものとされている[1]

食中毒が発生した辛子蓮根を製造していた株式会社三香のずさんな衛生管理が指摘され、非難・批判を受けた。この食中毒事件を受けて熊本県内外の百貨店や土産店で販売されていた辛子蓮根の全面撤去が行われた。また食中毒事件とは無関係にもかかわらず、別の辛子蓮根製造業者も風評被害を受けてしまい、50近い業者のうち約半数が廃業に追い込まれる事態も起きた[2]

同年12月に熊本県辛子蓮根協同組合が発足[3]。結成時は33社、2020年現在12社が加盟。組合では真空パック商品を製造しない自主基準を設けているが、非加盟業者による真空パック商品は販売されている[4]

その他

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  • スナック菓子の一種として、辛子蓮根を油で揚げた「からしれんこんチップス」が販売されている。

脚注

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  1. ^ からしれんこんによるボツリヌス中毒事件の概要”. 国立感染症研究所感染症情報センター. 2010年8月3日閲覧。
  2. ^ 熊本・辛子レンコン 伝統料理、時代に合わせ /熊本”. 毎日新聞地方版 (2019年12月2日). 2021年2月14日閲覧。
  3. ^ 組合概要”. 熊本県辛子蓮根協同組合. 2021年2月14日閲覧。
  4. ^ 辛子連根 インタビュー”. 食料新聞電子版 (2020年3月23日). 2021年2月14日閲覧。