ひとりでしにたい』は、カレー沢薫とドネリー美咲(原案協力)による日本漫画作品。『モーニング・ツー』(講談社)にて2019年9月号から2020年3月号まで連載された後[1][2]、『コミックDAYS』(同)に移籍して2020年10月から連載[2]。「30代後半の独身女性の終活」をコミカルに描く作品[3][4]

ひとりでしにたい
ジャンル 青年漫画
漫画
作者 カレー沢薫
(原案協力)ドネリー美咲
出版社 講談社
掲載誌 モーニング・ツー
コミックDAYS(Web連載)
レーベル モーニングKC
発表号 モーニング・ツー:
2019年9月号 - 2020年3月号
コミックDAYS:
2020年10月 -
発表期間 2019年7月22日[1] -
巻数 既刊7巻(2023年11月22日現在)
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 漫画

2021年3月、第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞[5][6]

制作背景 編集

きっかけ 編集

30代後半になったカレー沢は、「多分この先も子どもは作らない」と考えるようになり、夫と親が亡くなって「最後に一人になる確率が高い」ことに気づいた[3]。それ以降、「いずれ“一人で死ぬ”かもしれないという漠然とした不安を抱え」ていた[3]。老後破産や介護に関連した事件など、「『老い』に関連した事件やニュース」を耳にし、「他人事ではない」と考えることもあった[4]。新連載の話が挙がった際、それらを思い出したカレー沢は「孤独死や老後のことはいま自分にとっていちばん興味のあるテーマ」であり、漫画を制作する過程で知識を得ることができ、一石二鳥ではないかと考えたことをきっかけに、本作を執筆することを決意する[3]

本作の制作に当たり、「自身の『終活』」と向き合ったカレー沢は、「『子どもの世代がどうにかしてくれる』という価値観」の時代ではないため、「30代や40代のうちから終活を始めることは、決して早過ぎない」と考えている[3]

ストーリーについて 編集

話の大筋をカレー沢が構想し、小さなネタは原案協力のドネリー美咲の体験談が使用されている[3]。カレー沢は介護や終活に関連する本や資料を読むほか、「Twitterで流れてきた介護の当事者の方のリアルなつぶやき」も参考にして制作している[3]。カレー沢が「暗いだけであまりにも救いのない話はわざわざフィクションで読みたくない」と考えているため、「暗くなり過ぎないよう」意識して描かれている[3]。読者からの「重いテーマではあるけど、漫画が暗すぎないので読みやすい」という意見をありがたいと感じているという[3]。那須田が鳴海に好意があるような描写があることについて、読者から「結局男か」という感想が寄せられているが、カレー沢は「恋愛や結婚をすることで老後も安泰、という話にしようとは決して思っていない」ため、「そう言わずに続きを読んでください」と言い続けたいと話している[3]。しかし、「恋愛や結婚が馬鹿らしいと言いたい作品」ではない[3]

あらすじ 編集

山口鳴海35歳、独身[7]。伯母が「孤独死」したことをきっかけに「終活」を意識し、各方面から情報収集を始める[8]

登場人物 編集

主人公と愛猫 編集

山口鳴海(やまぐち なるみ)
主人公[3]。35歳、独身[7]。美術館学芸員[7]。自分で購入したマンションで猫と暮らしている。伯母が孤独死したことがきっかけで終活について考え出す[8]。人の話を聞くような素直な性格の持ち主[3]
カレー沢によると、主人公であるため「読者に嫌われてもよくない」が、「いい子過ぎてリアリティーがないのは違う」と考え、共感する読者がいるかもしれないと思いながら描かれている[3]
魯山人(ろさんじん)
鳴海の飼い猫。ブリティッシュショートヘアのハチワレ。

鳴海の同僚 編集

那須田優弥(なすだ ゆうや)
24歳。官庁から出向中のエリート。鳴海に興味を持っており、孤独死をネタに話をするようになる。情報豊富で、鳴海の両親も那須田のレクチャーに真剣に耳を傾けている。
松岡(まつおか)
独身。母が遠方の特別養護老人ホームに入所している。認知症が進んだ母の介護を全く手伝わなかったくせに、やっと母を施設に入れる際に「姥捨て山に捨てる気か!」と罵ってきた兄を恨んでいる。
山崎(やまざき)
広報担当。年代は那須田と近い。大学は日本学生支援機構の奨学金(第一種)で行った。

鳴海の親族 編集

山口和夫(やまぐち かずお)
鳴海の父。2年前に定年退職。鳴海と那須田との話し合いから終活について考え出す。
山口雅子(やまぐち まさこ)
鳴海の母。結婚してからは専業主婦。子育てでボロボロのところを義姉の光子に馬鹿にされていた。今はヒップホップに入れ込んでいる。
山頭火(さんとうか)
鳴海の実家の飼い猫。雑種のハチワレ。
山口光子(やまぐち みつこ)
鳴海の伯母。キャリアウーマンだったが、定年後は身を持ち崩し、ゴミ屋敷と化した自宅マンションで孤独死し[3]、無残な状態で発見された。
山口聡(やまぐち さとし)
鳴海の弟。
山口まゆ(やまぐち まゆ)
聡の妻。
山口翔(やまぐち しょう)
聡の息子。5歳。

書誌情報 編集

  • カレー沢薫『ひとりでしにたい』 講談社モーニングKC〉、既刊7巻(2023年11月22日現在)
    1. 2020年3月23日初刷発行(同日発売[9][10])、ISBN 978-4-06-518993-1
    2. 2021年1月21日初刷発行(同日発売[2])、ISBN 978-4-06-521050-5
    3. 2021年7月20日初刷発行(同日発売[11])、ISBN 978-4-06-524101-1
    4. 2022年2月22日初刷発行(同日発売[12])、ISBN 978-4-06-526919-0
    5. 2022年9月22日初刷発行(同日発売[13])、ISBN 978-4-06-529082-8
    6. 2023年4月21日初刷発行(同日発売[14])、ISBN 978-4-06-531333-6
    7. 2023年11月22日発売[15]ISBN 978-4-06-533382-2

脚注 編集

  1. ^ a b “カレー沢薫がアラフォー女子の“終活”を描く新連載「ひとりでしにたい」モーツーで”. コミックナタリー (ナターシャ). (2019年7月22日). https://natalie.mu/comic/news/340650 2022年2月15日閲覧。 
  2. ^ a b c 『ひとりでしにたい(2)』(カレー沢 薫、ドネリー美咲)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2022年2月15日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o ひとりでしにたい”. tayorini. LIFULL senior (2020年12月17日). 2022年2月15日閲覧。
  4. ^ a b 『ひとりでしにたい』カレー沢薫さんに聞く 不安との付き合い方”. CREATIVE VILLAGE. クリーク・アンド・リバー社 (2021年5月28日). 2022年2月15日閲覧。
  5. ^ ひとりでしにたい”. 文化庁メディア芸術祭. 文化庁. 2022年2月14日閲覧。
  6. ^ “メディア芸術祭で「映像研」がアニメ部門、「3月のライオン」がマンガ部門の大賞に”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年3月12日). https://natalie.mu/comic/news/419809 2022年2月15日閲覧。 
  7. ^ a b c ひとりでしにたい”. モーニング公式サイト. 講談社. 2022年2月15日閲覧。
  8. ^ a b 終活する若者に思う”. 読売新聞オンライン. 読売新聞社 (2021年10月18日). 2022年2月15日閲覧。
  9. ^ “アラフォー学芸員の終活を描く、カレー沢薫「ひとりでしにたい」1巻”. コミックナタリー (ナターシャ). (2020年3月23日). https://natalie.mu/comic/news/372330 2022年2月15日閲覧。 
  10. ^ 『ひとりでしにたい(1)』(カレー沢 薫、ドネリー美咲)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2022年2月15日閲覧。
  11. ^ 『ひとりでしにたい(3)』(カレー沢 薫、ドネリー美咲)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2022年2月15日閲覧。
  12. ^ 『ひとりでしにたい(4)』(カレー沢 薫、ドネリー美咲)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2022年2月22日閲覧。
  13. ^ 『ひとりでしにたい(5)』(カレー沢 薫、ドネリー美咲)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2022年9月22日閲覧。
  14. ^ 『ひとりでしにたい(6)』(カレー沢 薫、ドネリー美咲)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2023年4月25日閲覧。
  15. ^ 『ひとりでしにたい(7)』(カレー沢 薫、ドネリー美咲)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2023年12月3日閲覧。

外部リンク 編集