アコニチン
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アコニチン (英: aconitine) は、トリカブト(Aconitum)に含まれる毒成分。猛毒で毒薬(アコニチンを含む生薬は劇薬)扱い。
(+)-アコニチン | |
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(1α,3α,6α,14α,16β)-8-(acetyloxy)-20-ethyl-3,13,15-trihydroxy-1,6,16-trimethoxy-4-(methoxymethyl)aconitan-14-yl benzoate | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 302-27-2 |
PubChem | 245005 |
日化辞番号 | J9.871J |
RTECS番号 | AR5960000 |
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特性 | |
化学式 | C34H47NO11 |
モル質量 | 645.74 g mol−1 |
外観 | 無色透明の結晶 |
融点 |
204 °C |
危険性 | |
EU分類 | T+ Xi |
Rフレーズ | R26/28 R36/37/38 |
Sフレーズ | S24 S45 S36 S26 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
アコニットアルカロイドの一種で[1]、TTX感受性ナトリウムイオンチャネルの活性化による脱分極を引き起こし、嘔吐・痙攣・呼吸困難・心臓発作を引き起こす[2]。不整脈状態を引き起こす試薬としても用いられる。以前は解熱剤や鎮痛剤として使用されていた。治療可能域の狭さのため適切な用量を計算するのは困難であるが、現在も生薬の成分として限定的に使用される[3]。
トリカブトに含まれるアルカロイドとして古くから知られていたが、1831年にヨウシュトリカブトAconitum napellusから単離され[4]、平面構造は1950年代に[5]、絶対立体配置は1972年に決定された[6][7]。
クロロホルムやベンゼンに溶けやすく、水、石油エーテルには溶けにくい[1]。大型の結晶を作りやすい。古来、アイヌなどにより狩猟用の毒矢の毒として使われてきた[1]。適量を使用すれば漢方薬となり、強心剤として使われる。
毒性
編集マウスのLD50は0.166 mg/kg (点滴静脈注射)、0.328 mg/kg (腹腔内注射)[8]、 ラットでは 5.97 mg/kg(経口投与)、経口致死量は成人の場合1.5 - 6mg/kgと推定されている[9]。
食べると嘔吐や下痢・呼吸困難などから死に至ることもある。経皮吸収・経粘膜吸収され、経口から摂取後数分で死亡する即効性がある。
解毒剤や特効薬はないため[10]、治療には催吐や胃洗浄が行われる。テトロドトキシンは、アコニチンとは逆にナトリウムチャネルを阻害してアコニチンの作用を抑制するが、テトロドトキシンの半減期はアコニチンよりも短い為、いずれ拮抗が崩れてしまう[11]。
文化
編集アコニチンはオスカー・ワイルドの1891年の小説『アーサー卿の犯罪 Lord Arthur Savile's Crime』に登場する。
脚注
編集- ^ a b c 今関和泉 著、化学大辞典編集委員会(編) 編『化学大辞典』 1巻(縮刷版第26版)、共立、1981年10月、48頁頁。
- ^ Wang, S.Y.; Wang, G. K. (February 2003). “Voltage-gated sodium channels as primary targets of diverse lipid-soluble neurotoxins”. Cell. Signal. 15 (2): 151–9. doi:10.1016/S0898-6568(02)00085-2. PMID 12464386.
- ^ Chan TY (April 2009). “Aconite poisoning”. Clin. Toxicol. (Phila) 47 (4): 279–85. doi:10.1080/15563650902904407. PMID 19514874.
- ^ Geiger, P. L.; Hesse, O. (1832). “Fortgesetzte Versuche über die verschiedenen blaublühenden Aconiten”. Annalen der Pharmacie 4 (1): 66-74. doi:10.1002/jlac.18320040106.
- ^ Wiesner, K.; Götza, M.; Simmonsa, D. L.; Fowlera, L. R.; Bachelorb, F. W.; Brownb, R. F. C.; Büchib, G. (1959). “The structure of aconitine”. Tetrahedron Lett. 1 (2): 15-24. doi:10.1016/S0040-4039(01)82712-X.
- ^ Birnbaum, K. B. (1972). “Configuration of the ring A methoxyl in delphinine and aconitine from the crystal structure of a synthetic intermediate, C22H30O5N.C2HO4”. Acta Cryst. B28: 1551-1560. doi:10.1107/S0567740872004571.
- ^ Wiesner, K.; Jay, E. W. K.; Tsai, T. Y. R.; Demerson, C.; Jay, L.; Kanno, T.; Křepinský, J.; Vilím, A.; Wu, C. S. (1972). “The Synthesis of Delphinine: A Stereoselective Total Synthesis of an Optically Active Advanced Relay Compound”. Can. J. Chem. 50: 1925-1943. doi:10.1139/v72-308.
- ^ Susan Budavari, ed (1989). The Merck Index. Eleventh Edition. Rahway, N.J.: Merck & Co.. pp. p.117. ISBN 091191028X
- ^ Ludewig, R., Regenthal, R. et al. (2007) (ドイツ語). Akute Vergiftungen und Arzneimittelüberdosierungen. Deutscher Apotheker Vlg. ISBN 3-8047-2280-6
- ^ Roth, L., Daunderer, M. & Kormann, K. (1994). Giftpflanzen-Pflanzengifte. Nikol Verlagsges.mbH. ISBN 3-933203-31-7
- ^ Ohno, Y.; Chiba, S.; Uchigasaki, S.; Uchima, E.; Nagamori, H.; Mizugaki, M.; Ohyama, Y.; Kimura, K.; Suzuki, Y. (June 1992). “The influence of tetrodotoxin on the toxic effects of aconitine in vivo”. Tohoku J. Exp. Med. 167 (2): 155–8. doi:10.1620/tjem.167.155. PMID 1475787.
参考文献
編集- 渡邉治雄ほか5名著 『食中毒予防必携 第2版』 日本食品衛生協会 2007 ISBN 9784889250145