アップフェルラント物語 (漫画)

アップフェルラント物語』は田中芳樹同一題名の小説ふくやまけいこが漫画化した作品。月刊アニメージュ(徳間書店)において1992年2月号から1992年11月号にかけて連載された。コミックスは連載時のものを加筆・訂正し1993年に全1巻がアニメージュコミックス徳間書店から刊行されている[1]。2007年にはKCデラックス(講談社)全1巻が刊行されている。

東京物語
ジャンル 冒険漫画
漫画
原作・原案など 田中芳樹
作画 ふくやまけいこ
出版社 徳間書店
掲載誌 アニメージュ
発表号 1992年2月号 - 1992年11月号
巻数 全1巻(アニメージュコミックス、徳間書店
全1巻(KCデラックス、講談社
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 漫画

物語の時期は1905年、ヨーロッパの列強が植民地政策を進め、戦争の危機が高まっているとき、小国ながら中央ヨーロッパで独立を維持しているアップフェルラント王国に起きた出来事を描いている[2]。1905年はドイツ理論物理学者アルベルト・アインシュタイン特殊相対性理論の論文を発表している。作品中の地図によると、アップフェルラント王国はドイツ帝国、ロシア帝国、オーストリア帝国に囲まれた地域となっている。

原作者の田中芳樹は「ふくやまさんの絵に接するとヨーロッパの小さな山国の森と野を吹きぬける風の色が見えます」とコメントしている。[3]

1993年に徳間書店により原作小説がアニメ化されたとき、ふくやまけいこがキャラクター原案を担当している[4]。また、2003年に光文社から原作小説の文庫本が刊行されたとき、ふくやまけいこのイラストが挿入されている[5]


あらすじ 編集

写真の女の子
アップフェルラント王国の首都シャルロッテンブルグに住む孤児のヴェルは露店の親子に難癖を付けている悪人から親子を救い、ついでに彼の財布をスリとる。財布の中には可愛い女の子の写真が入っている。悪人たちを尾行したヴェルは操車場の列車の中でとらわれている写真の女の子を発見する。
ヴェルは自動車の情報から隠れ家に乗り込むが、逆にアリアーナたちに捕まってしまう。アリアーナたちは車で逃走し、ヴェルは車の荷物室に押し込められる。ヴェルは自力で脱出し、追ってきたフライシャー警部と追い詰めるが、船で湖に逃げられる。ヴェルと警部は別の船を雇い、フリーダを救出する。
印章
フリーダはリボンから印章を取り出し、カロリーナ女王への謁見を要求する。フリーダの身分を知りヴェルの心は重い。エーリッヒは口が滑り、ヴェルがスリだと話してしまう。警視総監が印章を確認しているとアッチラが印章を奪い去る。アリーナの言い値は高すぎて、ノルベルトガスを使用して印章を奪う。
ヴェルたちが王宮に行くと、それは駅前のホテルより小さな建物であった。ツェーレンドルフ大佐の娘さんの小さな頃の服に着たフリーダの可愛らしさにヴェルはあたふたする。女王との会見のためフライシャー警部は髭を落としており、ヴェルたちはしばらく誰だか分かない。
女王との会見でフリーダと印章を受けた祖父の関係およびオーバーケルテン岩塩坑に隠された恐ろしいものが明らかになる。女王は岩塩坑の探検隊を組織することを提案する。フリーダが参加を希望し、ヴェルも一緒に行くことにする。
そこにノルベルト陸軍大臣が入ってきて、印章を手に入れたと話す。それは、岩塩坑の所有権を証明するものであった。ノルベルトはドイツ帝国との合併を提案するが、女王はそれを拒否し、印章はフリーダに返すよう命令する。フリーダは返して下さいとノルベルトに迫り、もみ合いの中でヴェルは印章を取り戻す。
岩塩坑
探検隊が組織され、一行はオーバーケルテン岩塩坑のは入り口でレーンホルムや案内人と合流する。ノルベルトにとらわれていたアリーナは脱出するときフライシャー警部に助けられる。フライシャーにお礼として名前を聞かれ、アリアーナ・ヴィシンスカヤと答える。
鍾乳洞の中で水流に飲まれたヴェルたちは流れてくるフリーダの髪の毛に導かれ、本隊に合流する。一行は印章の跡が残る岩塩の壁を見つける。フリーダは印章の中の薬剤を水に溶き、ヴェルが上から流すと壁面に文字が現れる。それは、ロシア語の暗号になっており、フリーダはそのまま解読することができる。
デンマンの襲撃によりヴェルとフリーダは斜面の下に落ちる。フリーダはヴェルがスリであることと知っていてなお、ヴェルを信頼していることが明らかになる。傷ついたアッチラに導かれるようにヴェルたちは出口を見つける。
クーデター
王宮ではノルベルト陸軍大臣のクーデターが発生した。女王はアップフェルラント人同士の殺し合いを避けるため、近衛兵に闘わないよう厳命していた。女王は落ち着いて夕食の用意を指示する。
岩塩坑を脱出した探検隊は国境を越えて進んでくるドイツの軍用列車を発見する。この列車は皇帝秘蔵のもので、その威力を見せつけ、各国を沈黙させようと目論んでいる。レーンホルムは動力飛行機で後を追うというと、フリーダが真っ先に手を挙げ、ヴェルと警部が同乗する。
飛行機は列車に追いつき、その上に不時着する、ヴェルたちは連結器を外し、軍用列車の一部は川に転落する。ドイツ軍はそれでも首都を目指す。ドイツ軍を出迎えたノルベルトは反逆者として逮捕される。女王はドイツ皇帝からの合併の申し入れを拒否する。そのとき秘密の通路を通り、ヴェルたちが乱入する。
女王は合併宣言書を持って帰らなければデンマーク血盟を発動すると言明する。すでに、各国からは撤兵要請が出され、レーンホルムは科学者グループからの学術的な協力拒否の通知を見せる。ドイツ軍は撤退し、岩塩坑の壁に記されていた原子の人為的壊変から発生する巨大なエネルギーは秘密にされることになった。3人の子どもたちにはそれぞれ後見人が付くことになり、フリーダは将来、女性飛行士になりたいと言い出す。

登場人物 編集

フリーダ・レンバッハ
ドイツ人、両親が早くに亡くなり、祖父であるペテルスブルクの大学教授に育てられた。
ヴェルギール・シュトラウス(ヴェル)
アップフェルラントの首都シャルロッテンブルグに住む孤児。日雇い仕事とスリで生計を立てている。
エーリッヒ
ヴェルの親友。
アルフレット・フライシャー
シャルロッテンブルグ警察の有能な警部。かって騎兵憲兵隊に所属していた。年配者に見えるが髭を落とすと若返る。
アリアーナ・ヴィシンスカヤ
ポーランド人のスパイ。祖国を消滅させたロマノフ家、ハプスブルグ家、フォーエンツォレルン家に恨みを抱いている。アッチラという名前の大型猫の飼い主。
カロリーナ・フォン・シュタビッツ
アップフェルラント王国の女王。物事に動じず、王国の独立を守ろうとする。
ヘルムート・フォン・レーンホルム
アップフェルラント王国学士院会員。世界中の科学者と親交がある。
ノルベルト公爵
アップフェルラント王国の陸軍大臣。王国をドイツと併合させるため画策する。
ツェーレンドルフ大佐
騎馬憲兵隊の隊長。フライシャーを高く買っている。

書誌情報 編集

  • ふくやまけいこ『アップフェルラント物語』徳間書店(アニメージュコミックス)、全1巻。
    • 1993年2月20日初版発行、ISBN 4-19-773020-9[6][7]
  • ふくやまけいこ『東京物語』講談社〈KCデラックス〉、全1巻。

脚注 編集

  1. ^ アップフェルラント物語(2007年、講談社)、見開き扉
  2. ^ アップフェルラント物語(2007年、講談社)、物語紹介ページ
  3. ^ アップフェルラント物語”. anobii. 2021年7月10日閲覧。
  4. ^ アップフェルラント物語”. 徳間書店. 2021年7月10日閲覧。
  5. ^ 著作ギャラリー(アップフェルラント物語)”. らいとすたっふ. 2021年7月10日閲覧。
  6. ^ 『アップフェルラント物語 1』(1993年、徳間書店)カバー
  7. ^ アップフェルラント物語”. 国会図書館サーチ. 2021年7月8日閲覧。
  8. ^ アップフェルラント物語(2007年、講談社)奥付