イワタケ
イワタケ(岩茸・石茸、Umbilicaria esculenta)は、深山の岩壁に着生する地衣類の一種[1]。東アジアの温帯に分布し、中国、朝鮮、日本では山菜、生薬として利用する。
イワタケ | |||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Umbilicaria esculenta (Miyoshi) Minks | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
イワタケ(岩茸) |
名称
編集中国語では、「石耳」(シーアル shí'ér)という。地方名に「石木耳」(陝西省)、「岩菇」(江西省)、「地木耳」(貴州省)、石壁花などがある。韓国語では「석이」(ソギ、石耳)という。
日本の地方名にイワガシャー(長野県上伊那郡)、タケキノコ(岳茸。長野県北安曇郡)、イワナバ(鹿児島県肝属郡)がある[2]。
生態
編集径数センチメートルから10センチメートルほどの偏平な葉状地衣類で、最大30センチメートルになる。上面は灰色、下面は黒くとげ状の毛が密生する。裏面の中央部にサンゴ状に枝分かれした突起があり、ここで岩に固着する。革状で、乾燥するともろい。
分布
編集東アジアの温帯の日当たりがよい岩壁に分布する。中国では江西省、安徽省、浙江省が主産地で、廬山、黄山、九華山などの観光地として知られる山で、特産品として扱われている。特に廬山では「石魚」(ヨシノボリの同属種)、「石鶏」(スピノーザトゲガエル)と共に「三石」と称され、名産品となっている。雪などの影響がなければ年中採取できるが、断崖絶壁等の採取が困難な場所に生育するため採取には多大な労力を要する。
利用
編集成長が1年でわずか1mm程度と非常に遅いため1kgで1万円以上の値がつくほど高価である。中国では、江西料理や安徽料理で、炒め物、煮物、シロップ煮などに使われる。日本では、ゆでて酢の物などにして食べることが多い。味は余りないので、調味料でしっかり味をつけるのが普通である。長野県北相木村には、味付けしたイワタケを餡にした「岩茸まんじゅう」というものがある[3][4]。
乾物として流通しているので、まず塩を少し加えたぬるま湯に付けて戻し、もみ洗いして細かい砂を洗い落とす。裏側の毛があると食感が悪いので、こすり落とす。
中国では生薬としても利用される例がある。『日用本草』では「性寒、味甘、無毒」とし、「清心、養胃、止血」の効能があるとしている。慢性気管炎に有効との報告もある。成分として、ギロホール酸、レカノール酸を含む事が知られている。
広重の浮世絵にあるように、その採取は古来より大変危険なものであり、しばしば転落事故などで命を落とすものも多かった。大分県には『吉作落とし』と呼ばれる悲劇的な民話が残っている。
脚注
編集- ^ 吉村庸 ほか、「イワタケ科地衣類の組織培養」 高知学園短期大学紀要 20, 527-533, 1989-09-30, NAID 110000409974
- ^ 尚学図書編、『日本方言大辞典』、小学館、1989年
- ^ “さわやか信州旅.net 岩茸まんじゅう”. 長野県観光機構. 2017年1月9日閲覧。
- ^ 武田徹 (2010年4月3日). “郷土料理に乾杯!”. 2017年1月9日閲覧。[リンク切れ]
参考文献
編集- 江蘇新医学院編、『中薬大辞典』、上海科学技術出版社、p582、1986年、ISBN 978-4095830025
- 長井摂郎、「食用地衣イワタケに就いて」 栄養学雑誌 1951年 9巻 1号 p.22-24, doi:10.5264/eiyogakuzashi.9.22