エリザベス・ギルバート

エリザベス・ギルバート: Elizabeth Gilbert1969年7月18日 - )は、アメリカ合衆国コネチカット州生まれの著作家随筆家、短編作家、伝記作者、小説家、回想録作家である。2006年に著した回想録『食べて、祈って、恋をして』は2010年12月時点で199週間連続で「ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー・リスト」に載り、同年、同名の映画にもなったことで知られている[2]

エリザベス・ギルバート
Elizabeth Gilbert
エリザベス・ギルバート、2009年撮影
誕生 (1969-07-18) 1969年7月18日(54歳)
コネチカット州ウォーターバリー
職業 小説家、回想録作家
国籍 アメリカ合衆国
最終学歴 ニューヨーク大学
活動期間 1997年 – 現在
ジャンル フィクション、回想録
代表作 『食べて、祈って、恋をして』(2006年)
配偶者 マイケル・クーパー(1995年–2002年)
ホセ・ヌーネス(2007年–2016年)
Rayya Elias (2016年–2018年)
署名
公式サイト ElizabethGilbert.com
ウィキポータル 文学
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初期の経歴 編集

ギルバートはコネチカット州ウォーターバリーで生まれた。父は化学技術者、母は看護師だった。二人姉妹であり、妹のキャサリン・ギルバート・マードックも小説家である。ギルバートは リッチフィールドのクリスマスツリーを生産する農園で、小さな家族の中で育った。隣人もいない田舎であり、テレビもレコード・プレイアーも無かった。家族の皆は大いに読書し、ギルバート姉妹は本や戯曲を書くことで楽しんだ[3][4]

1991年、ニューヨーク大学政治学の学士号を取得し、その後はコック、ウェイトレス、雑誌社の従業員として働いた。観光牧場でコックとして働いた経験を短編小説に書き、また著作『最後のアメリカ人男性』(ヴァイキング・プレス、2002年)に簡潔に書いた。

経歴 編集

ジャーナリズム 編集

1993年雑誌「エスクァイア」にギルバートの短編『ピルグリム』が「アメリカ人作家のデビュー」という見出しで掲載された。「エスクァイア」にまだ著作を出版していない短編作家としてデビューを果たしたのは、ノーマン・メイラー以来のことだった。このことでジャーナリストとして全国的な様々な雑誌に作品が載るようになった。例えば「スピン」、「GQ」、「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」、「アルア」、「リアル・シンプル」、「トラベル + レジャー」などの雑誌だった。回想記の『食べて、祈って、恋をして』に書いているように、高い原稿料のフリーランス作家としてその経歴を積んだ。

1997年の雑誌「GQ」に乗せた記事『コヨーテ・アグリー・サルーンの女神』は、ニューヨーク市のイースト・ヴィレッジにあるテーブルダンスを行う草分けである店、コヨーテ・アグリーで、バーテンダーとして働いた時の経験を書いたものであり[5]、これが2000年の映画『コヨーテ・アグリー』のネタになった。1998年、ギルバートは「GQ」に乗せた記事『最後のアメリカ人男性: ユースタス・コンウェイは貴方達がこれまで出逢った男性とはとても似ていない』を書き換えて、現代の博物学者の伝記『最後のアメリカ人男性』として仕上げた[6]。この作品は全米図書賞ノンフィクション部門の候補作品になった。2000年に「GQ」に掲載したハンク・ウィリアムズ3世のプローファイルである『ザ・ゴースト」は、2001年アメリカの雑誌優良記事に選ばれた。

著作 編集

ギルバートの最初の単行本『ピルグリム』(ヒュートン・ミフリン、1997年)は短編集であり、プッシュカート賞を受賞し、PEN/ヘミングウェイ賞では最終選考にまで残った。その次の『厳格な男たち』(ヒュートン・ミフリン、2000年)は、ニューヨーク・タイムズから「注目すべき本」に選ばれた。2002年、現代の森の住人で博物学者であるユースタス・コンウェイの伝記、『最後のアメリカ人男性』は全米図書賞の候補作品になった。それから間もなく、『大きな魔法: 恐れを知らぬ創造的生活』を出版した[7]

食べて、祈って、恋をして 編集

2006年、『食べて、祈って、恋をして: イタリア、インド、インドネシアに跨るある女性の全てを探す旅』(ヴァイキング・プレス、2006年)は、ギルバートが海外を旅して過ごした「精神と個人の探求」の時期を編年体で綴ったものだった[8]。出版社に本の概念を提案して20万ドルを前金として受け取ることで旅行費用を捻出した。このベストセラーとなった作品は、作家たちから「私小説」と批判され[9]、また「計算された事業判断」だとも言われている[10]。この回想録は2006年春にニューヨーク・タイムズ・ベストセラー・リストのノンフィクション部門に入り、2008年10月には88週連続となり、しかも第2位にあった[11]。ギルバートは2007年に全国ネットのテレビ番組「オプラ・ウィンフリー・ショー」に出演し、また同番組に再出演して著作と哲学、さらに映画について話した[12]。雑誌「タイム」からは世界の影響力ある人を選ぶ「タイム100」に選ばれた[13]。『食べて、祈って、恋をして』はコロンビア ピクチャーズが映画化し、2010年8月13日に同名の映画として封切られた。女優ジュリア・ロバーツがギルバートの役を演じた[14]

ギルバートの5番目の著書『傾倒: 懐疑心が結婚を平和にする』は2010年1月にヴァイキング・プレスから出版された。この本は『食べて、祈って、恋をして』の続編の趣があり、ギルバートがベストセラー作家となってからの人生を取り上げている。『傾倒』では、ギルバートがインドネシアで出逢ったフェリペというブラジル人男性との結婚を決断したことも明かされている[15]。この本は、特に女性で結婚を躊躇う人々を含め、歴史的および現代的概念から結婚という制度を検証するものである。また同性婚に関する考えも披瀝され、これを1970年代以前の人種間結婚と比較している。

2012年、『家庭のレンジで』を再出版した。これはギルバートの曾祖母で料理コラムニストのマーガレット・ヤードリー・ポッターが1947年に書いた料理本だった[16]。2013年、ギルバートは第2の小説『あらゆる物の特徴』を出版した。

文学界における影響 編集

ギルバートはあるインタビューに答えて、『オズの魔法使い』についてノスタルジーを持って触れ、「私は子供の時に読書を愛することを学んだから現在作家になっており、特に"オズ"のシリーズを読んだからだ...」と付け加えた。特にチャールズ・ディケンズの影響を受けたと言っており、多くのインタビューでこのことに触れている。マルクス・アウレリウス・アントニヌスによる『自省録』を哲学上の好きな本に挙げている[17]

個人的なこと 編集

2015年「ニューヨーク・タイムズ」の『誘惑依存の告白』と題する記事で、「ある親しい付き合いから次の付き合いまで突き進み、その数は数ダースもあり、ロマンスの間に1日も無いこともあった」と記していた。「誘惑は私にとって日常的なスポーツであったことは無かった。強奪のようであり、奮起させるものであり、執拗なものがあった。私はその強奪を数か月間計画し、目標を偵察し、無防備な入口を探したことだろう。その後に私は彼の深い空間に押し入り、彼の感情的な利用価値を全て盗み、それを私のために消費することになる。」と認めていた[18]

ギルバートは1995年から2002年までマイケル・クーパーと結婚していた[19]

2013年時点でニュージャージー州フレンチタウンに、現在の夫であるホセ・ヌーネスと共に住んでいる。ギルバートは『食べて、祈って、恋をして』の旅の途中で、バリでヌーネスと出逢った。この二人は2007年に結婚し、「2つのボタン」と呼ぶ大型のアジア商品輸入店を経営している[20][21][22]

作品 編集

短編集 編集

  • 『ピルグリム』、1997年、プッシュカート賞受賞、PEN/ヘミングウェイ賞では最終選考にまで残った

小説 編集

  • 『厳格な男たち』、2000年、ヒュートン・ミフリン
  • 『あらゆる物の特徴』、2013年

伝記 編集

  • 『最後のアメリカ人男性』、2002年、全米図書賞と全米図書批評家賞の最終選考まで残った

回想記 編集

  • 『食べて、祈って、恋をして: イタリア、インド、インドネシアに跨るある女性の全てを探す旅』、2006年[23]
  • 『傾倒: 懐疑心が結婚を平和にする』、2010年

投稿記事 編集

  • 『KGB バーの読者: バックル・バーニーズ』1998年
  • 『何故書くか: フィクションの技術に関する考察』、1999年
  • 『作家のワークブック: 作家生活に対する日々の練習』、2000年
  • 『アメリカの雑誌優良記事 2001年: ザ・ゴースト』、2001年
  • 『アメリカの雑誌優良記事 2003年: ラッキー・ジム』、2003年
  • 『家庭のレンジで』[24]: マーガレット・ヤードリー・ポッター、序文、2012年、ISBN 1408832291.

講演 編集

脚注 編集

  1. ^ 本稿の「文学界における影響」の説を参照
  2. ^ “Paperback Nonfiction”. The New York Times. (2010年2月28日). http://www.nytimes.com/2010/02/28/books/bestseller/bestpapernonfiction.html?_r=1 2010年5月1日閲覧。 
  3. ^ Elizabeth Gilbert, Zacharis Award”. 2008年12月13日閲覧。 [リンク切れ]
  4. ^ “Lucky me”. The Guardian. (2009年1月10日). http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2009/jan/10/elizabeth-gilbert-books-interview-family 2013年2月4日閲覧。 
  5. ^ The Muse of the Coyote Ugly Saloon”. GQ (1997年3月). 2013年2月4日閲覧。
  6. ^ The Last American Man”. GQ (1998年2月). 2013年2月4日閲覧。
  7. ^ All About Women at the Sydney Opera House”. 2015年10月26日閲覧。
  8. ^ Eat, Pray, Love (review)”. 2011年10月24日閲覧。
  9. ^ http://bitchmagazine.org/article/eat-pray-spend
  10. ^ http://www.chicagoreader.com/Bleader/archives/2013/10/18/the-elizabeth-gilbert-problem
  11. ^ Paperback Nonfiction New York Times, October 3, 2008.
  12. ^ Why We Can't Stop Talking About Eat, Pray, Love! The Oprah Winfrey Show.
  13. ^ The 2008 TIME 100: Artists & Entertainers:Elizabeth Gilbert”. TIME (2009年4月30日). 2013年2月4日閲覧。
  14. ^ エリザベス・ギルバート - IMDb(英語)
  15. ^ Ariel Levi. “Hitched: In her new memoir, Elizabeth Gilbert gets married.”. The New Yorker. 2011年10月24日閲覧。
  16. ^ Michael Hainey (2012年5月24日). “Elizabeth Gilbert Serves Up a New Classic”. GQ. 2013年2月4日閲覧。
  17. ^ "Elizabeth Gilbert's literary influences", Infloox blog, 23 February 2010
  18. ^ http://www.nytimes.com/2015/06/28/magazine/confessions-of-a-seduction-addict.html?src=recg&_r=0
  19. ^ Kaylin, Lucy (2010年1月). “What Comes After the Eating, the Praying and the Loving?”. Oprah.com. 2015年10月26日閲覧。
  20. ^ Official Website for Best Selling Author Elizabeth Gilbert”. ElizabethGilbert.com. 2015年10月26日閲覧。
  21. ^ Patchett, Ann (2010年1月2日). “Eat, Pray, Love, Then Commit”. The Wall Street Journal. 2015年10月26日閲覧。
  22. ^ Donahue, Deirdre (2010年1月5日). “Elizabeth Gilbert talks about life after 'Eat, Pray, Love'”. USA Today. 2015年10月26日閲覧。
  23. ^ 武田ランダムハウスジャパン
  24. ^ At Home on the Range
  25. ^ All About Women at the Sydney Opera House”. 2015年10月26日閲覧。

外部リンク 編集