スピン (Spin) は、アメリカ合衆国音楽雑誌である。アメリカ国内では『ローリング・ストーン』誌と並ぶ大手音楽雑誌である。1985年にボブ・グッチョーネ・ジュニアによって創刊された。2012年に印刷版の発行を中止し、Webマガジンに移行している[1]。2020年よりネクスト・マネージメント(NEXT Management)により運営されている。

スピン
Spin
ジャンル 音楽雑誌
刊行頻度 隔月
発売国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
出版社 Next Management Partners
発行人 Charles Aaron
ISSN 0886-3032
刊行期間 1985年5月 - 2012年9月(印刷版)
ウェブサイト www.spin.com
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雑誌で扱う内容は様々だが、主に音楽ニュース、レビュー、インタビュー、ライブレポートなどが掲載されている。

歴史

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『スピン』は1985年に創刊された[2]。創刊したのは『ペントハウス』発行者のボブ・グッチョーネ・シニアの長男のボブ・グッチョーネ・ジュニアで、父親からの出資を受けて創刊した。

創刊当初は、カレッジ・ロックグランジインディー・ロックや、当時台頭し始めたヒップホップに重点を置き、カントリー・ミュージックヘヴィメタルなどの他のジャンルをほとんど取り上げなかった。これは、既存の音楽雑誌『ローリング・ストーン』とは違う方向性の音楽雑誌として、全米で受け入れられた。

1987年末の時点で、発行から2年で発行部数は15万部に達し、広く成功したと考えられていた。しかし、グッチョーネ・ジュニアの父のグッチョーネ・シニアは、自分の会社の経営不振に伴い、この雑誌を突然休刊した。グッチョーネ・ジュニアは、元MTV社長であるデイビッド・H・ホロウィッツと提携して新たな出資元と事務所を探し出し、休刊の1か月後に再創刊した。

1994年、ボスニア・ヘルツェゴビナでのボスニア戦争の取材中に、同誌に勤務していたジャーナリスト2人が地雷で死亡し、同行していたウィリアム・T・ヴォルマンが負傷した。

1997年、グッチョーネ・ジュニアは『スピン』をミラー・パブリッシング(Miller Publishing)に売却した。

2000年代以降

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2006年、ミラー・パブリッシングは『スピン』を、サンフランシスコに拠点を置く、クロニクルブックスの親会社でもあるマックヴォイ・グループ(McEvoy Group LLC)に売却した[3]。マックヴォイ社は、『スピン』を発行する会社としてスピン・メディア(Spin Media LLC)を設立した。

2012年7月、『スピン』はバズメディア(Buzzmedia)に売却され、同社はスピンメディア英語版に改称した[4]。2012年9・10月号をもって印刷版の発行を終了し、Webマガジンに移行した[5]

2016年12月、エルドリッジ・インダストリーズ英語版がスピンメディアを買収した。買収価格は非公開である[6]

2020年、『スピン』の出版権はプライベート・エクイティ・グループのネクスト・マネージメント・パートナーズ(NEXT Management Partners)に売却された。

スピン・オルタナティヴ・レコード・ガイド

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1995年、『スピン』は初めての書籍『スピン・オルタナティヴ・レコード・ガイド英語版』を出版した[7]。この本は、オルタナティヴ・ロックに関連したアーティストやバンドに関する、64人の音楽評論家による文章をまとめたものである。それぞれのアーティストについてディスコグラフィーとアルバムのレビューが掲載され、1から10点の間で点数が付けられている[8]ピッチフォーク・メディアのマシュー・ペルペツア(Matthew Perpetua)によると、この本には、ロブ・シェフィールド英語版バイロン・コーリー英語版アン・パワーズ英語版サイモン・レイノルズ英語版アクセル・ロス英語版など、後に音楽評論における主要人物となった作家たちが多数執筆している。この本はあまり売れなかったが、多くの若い読者に音楽評論の道を志すきっかけを与えた[9]

この本が出版された後、バイロン・コーリーによって書かれた1960年代のフォーク・アーティスト、ジョン・フェイヒー英語版に関する記事は、フェイヒーの音楽への関心を再び高め、レコード会社やオルタナティブ・ミュージック・シーンからがフェイヒーに関心を持つようになった。

ベスト・リスト

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スピンでは年間のベストアルバム、ベストソングをランキングにして発表している[10]

SPIN Albums of the Year

アーティスト アルバム 出典
1990年 Ice Cube AmeriKKKa's Most Wanted   アメリカ合衆国 [1]
1991年 Teenage Fanclub Bandwagonesque   イギリス [2]
1992年 Pavement Slanted And Enchanted   アメリカ合衆国 [3]
1993年 Liz Phair Exile In Guyville   アメリカ合衆国 [4]
1994年 Hole Live Through This   アメリカ合衆国 [5]
1995年 Moby Everything Is Wrong   アメリカ合衆国 [6]
1996年 Beck Odelay   アメリカ合衆国 [7]
1997年 Cornershop When I Was Born For The 7th Time   イギリス [8]
1998年 Lauryn Hill The Miseducation of Lauryn Hill   アメリカ合衆国 [9]
1999年 Nine Inch Nails The Fragile   アメリカ合衆国 [10]
2000年 Your Hard Drive 「あなたのハードディスク」の意味。ファイル共有が音楽試聴に与えた影響を認めて、第1位となった。 [11]
2001年 System of a Down Toxicity   アメリカ合衆国 [12]
2002年 The White Stripes White Blood Cells   アメリカ合衆国 [11]
2003年 The White Stripes Elephant   アメリカ合衆国 [12]
2004年 Kanye West The College Dropout   アメリカ合衆国 [13]
2005年 Kanye West Late Registration   アメリカ合衆国 [14]
2006年 TV On the Radio Return to Cookie Mountain   アメリカ合衆国 [15]
2007年 Against Me! New Wave   アメリカ合衆国 [16]
2008年 TV On the Radio Dear Science   アメリカ合衆国 [17]
2009年 Animal Collective Merriweather Post Pavillion   アメリカ合衆国 [18]
2010年 Kanye West My Beautiful Dark Twisted Fantasy   アメリカ合衆国 [19]
2011年 Fucked Up David Comes to Life   カナダ [20]
2012年 Frank Ocean Channel Orange   アメリカ合衆国 [21]
2013年 Kanye West Yeezus   アメリカ合衆国 [22]
2014年 The War on Drugs Lost in the Dream   アメリカ合衆国 [23]
2015年 Kendrick Lamar To Pimp A Butterfly   アメリカ合衆国 [46]
2016年 Solange A Seat at the Table   アメリカ合衆国 [24]
2017年 Kendrick Lamar Damn.   アメリカ合衆国 [25]
2018年 The 1975 A Brief Inquiry into Online Relationships   イギリス [26]
2019年 Big Thief Two Hands   アメリカ合衆国 [27]
2020年 Fiona Apple Fetch the Bolt Cutters   アメリカ合衆国 [28]

Spin Singles of the Year

アーティスト 出典
1994年 Beck Loser / Beercan   アメリカ合衆国 [29]
1995年 Moby Feeling So Real / Every Time You Touch Me   アメリカ合衆国 [30]
1996年 Fugees Ready or Not / Killing Me Softly   アメリカ合衆国 [31]
1997年 The Notorious B.I.G. Hypnotize   アメリカ合衆国 [32]
1998年 Fatboy Slim The Rockafeller Skank   イギリス [33]
1999年 TLC No Scrubs   アメリカ合衆国 [34]
2000年 Eminem The Real Slim Shady   アメリカ合衆国 [35]
2001年 Missy Elliott Get Ur Freak On   アメリカ合衆国 [36]
2002年 Eminem Cleanin’ Out My Closet   アメリカ合衆国 [37]
2003年 50 Cent In Da Club   アメリカ合衆国 [38]
2004年 Green Day American Idiot   アメリカ合衆国 [39]
2005年 Gorillaz Feel Good Inc.   イギリス [40]
2006年 Gnarls Barkley Crazy   アメリカ合衆国 [41]
2007年 Kanye West Stronger   アメリカ合衆国 [42]
2008年 M.I.A. Paper Planes   スリランカ [43]
2009年 Yeah Yeah Yeahs Zero   アメリカ合衆国 [44]
2010年 Cee Lo Green Fuck You   アメリカ合衆国 [45]
2011年 Adele Rolling in the Deep   イギリス [46]
2012年 GOOD Music Mercy   アメリカ合衆国 [47]
2013年 Daft Punk Get Lucky   フランス [48]
2014年 Future Islands Seasons (Waiting on You)   アメリカ合衆国 [49]
2015年 Justin Bieber What Do You Mean?   カナダ [50]
2016年 Rae Sremmurd Black Beatles   アメリカ合衆国 [51]
2017年 Calvin Harris feat. Frank Ocean & Migos Slide   イギリス [52]
2018年 Valee and Jeremih Womp Womp   アメリカ合衆国 [53]
2019年 Big Thief Orange   アメリカ合衆国 [54]
2020年 Bartees Strange Boomer   アメリカ合衆国 [55]

脚注

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出典

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参考文献

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  • Anon. (2012). “Bibliography”. In Ray, Michael. Alternative, Country, Hip-Hop, Rap, and More: Music from the 1980s to Today. Britannica Educational Publishing. ISBN 1615309101 
  • Mazmanian, Adam (1995). “Library Journal”. In White, William. Buyer's Guide. Bowker 
  • Johnston, Maura (2007年). “Never Mind The Anglophilia, Here’s The Queens Brothers”. Idolator. July 29, 2015閲覧。
  • Perpetua, Matthew (2011年). “The SPIN Alternative Record Guide”. Pitchfork Media. July 29, 2015閲覧。
  • Ratliff, Ben (1997年). “A 60's Original With a New Life on the Fringe”. The New York Times (January 19). https://www.nytimes.com/1997/01/19/arts/a-60-s-original-with-a-new-life-on-the-fringe.html July 29, 2015閲覧。 

外部リンク

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