エル・エスコリアル修道院
王立サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアル修道院(おうりつサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルしゅうどういん、Monasterio de El Escorial)はスペイン、マドリッド郊外のサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルにある広大な宮殿、修道院、博物館にして図書館の複合施設である。左右対称の幾何学的な設計と、外観の装飾を極力排除したシンプルなエレラ様式の建造物。反して内装は非常に豪華で、修道院の半円筒形の天井には、学問をテーマにした色彩豊かなフレスコ画が描かれている。
| |||
---|---|---|---|
![]() エル・エスコリアル修道院 | |||
英名 | Monastery and Site of the Escurial, Madrid | ||
仏名 | Monastère et site de l'Escurial (Madrid) | ||
登録区分 | 文化遺産 | ||
登録基準 | (1),(2),(6) | ||
登録年 | 1984年 | ||
公式サイト | 世界遺産センター(英語) | ||
地図 | |||
![]() | |||
使用方法・表示 |
沿革編集
グアダラーマ山脈の麓にこの複合施設は国王フェリーペ2世の命令でスペイン王家の墓所でありスペインの反宗教改革の研究を目的として建てられた。これはフアン・バウティスタ・デ・トレード、 ジョヴァンニ・バッティスタ・カステッロ、フアン・デ・エレーラの3人の建築家によって厳格な古典様式にデザインされ、1563年から1584年にかけて造営された[2]。建物は、聖ロレンソの殉教を記念するために格子型に形成されている。1557年のサン=カンタンの戦いでは、スペイン軍はロレンソに捧げられた小さな庵を破壊したという。国王フェリペ2世は、勝利を授かった礼として聖人に修道院を奉献することを決断した。
概要編集
エル・エスコリアルの建築群は芸術の莫大な宝庫であり、スペインを中心に活躍した画家エル・グレコをはじめ、ティツィアーノ、ティントレット、ディエゴ・ベラスケス、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン、パオロ・ヴェロネーゼ、アロンソ・カーノ、ホセ・デ・リベーラ、クラウディオ・コエーリョなどの芸術家の傑作が収蔵されている。敷地内には無数の貴重な古代古文書を蔵書した図書館がある。スペイン黄金時代美術 5~18世紀頃の貴重な書籍が数多く保管されており、歴史的価値の高い蔵書の中には一般公開されていないものもある。
ここは5世紀の間、アブスブルゴ(ハプスブルク)家およびボルボン家のスペイン国王の埋葬場所であった。
王家の霊廟にはカルロス1世(神聖ローマ皇帝カール5世)、フェリペ2世、フェリペ3世、フェリペ4世、カルロス2世、ルイス1世、カルロス3世、カルロス4世、フェルナンド7世、イサベル2世、アルフォンソ12世、アルフォンソ13世が眠っている。なお、ボルボン朝のフェリペ5世はラ・グランハ宮殿附属教会の廟所に、フェルナンド6世はマドリードのサレサス・レアレス修道院に、サボヤ朝のアマデオ1世はトリノのスペルガ聖堂に埋葬されている。
修道院は夏の間、王家の避暑の為の離宮としても使用され、多くの宮廷人で賑わった。スペイン音楽史上の重要な人物でもあるアントニオ・ソレル神父(1729 年12月3日受洗 - 1783年12月20日)は、このような機会にドメニコ・スカルラッティから教わることも多かったとされている。
現在編集
この複合施設はユネスコ世界遺産である。きわめて人気の高い観光スポットで、旅行者はマドリッドから日帰りで訪れることが多い。尚、建造物の内部撮影は禁止されている。
マドリード=バラハス空港からエル・エスコリアル駅(El Escorial)の終点まで電車で移動でき、駅から修道院までの距離は徒歩で約30分。
サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルの周辺都市は、マドリード・コンプルテンセ大学の人気のある夏季コースの拠点でもある。同様に「エル・エスコリアル」と名づけられている麓の町には、スペイン国鉄(RENFE)の同じ名前の駅がある。
エル・エスコリアルの近くには世界最大の十字架のある「戦没者の谷」(Monumento Nacional de Santa Cruz del Valle de los Caidos)がある。
世界遺産登録基準編集
この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。
- (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
- (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
- (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
ギャラリー編集
脚注編集
- ^ 『スペイン文化読本』 2016, p. 176.
- ^ 『ヨーロッパの「古城・宮殿」がよくわかる本』 2010, p. 186.
参考文献編集
- 川成洋『スペイン文化読本』丸善出版、2016年。ISBN 978-4-621-08995-8。
- 桐生操監修、レッカ社編『ヨーロッパの「古城・宮殿」がよくわかる本』PHP研究所〈PHP文庫〉、2010年。ISBN 978-4-569-67468-1。