エンキ・ビラル (Enki Bilal、1951年10月7日 - )はバンド・デシネ作家(漫画家)および映画監督

エンキ・ビラル
Enki Bilal
2010年3月、パリの書籍見本市にて
2010年3月、パリの書籍見本市にて
本名 エネス・ビラロヴィッチ
Enes Bilalović
生誕 (1951-10-07) 1951年10月7日(72歳)
セルビア ベオグラード
国籍 フランスの旗 フランス
職業 漫画家映画監督
活動期間 1972年-
ジャンル SF政治
代表作 『ニコポル三部作』
『アッツフェルド四部作』
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経歴 編集

ボスニア人の父親とチェコ人の母親のもと、セルビア(旧ユーゴスラビア)のベオグラードで生まれる。1961年、9歳の時に家族でフランスパリに移住[1]。14歳の時にルネ・ゴシニと出会い、その励ましによって自らの才能を漫画に見出す。1971年に、当時の有名コミック雑誌『ピロット』(Pilote)のコンテストに応募し、受賞。翌年に処女作『呪われたバル』(Le Bal Maudit)を発表し、バンド・デシネ作家としてのデビューを果たした。その後、原作者のピエール・クリスタンとともにいくつかのSF作品を発表する。1979年に発表した『黒の旅団』で、彼はバンド・デシネ作家としての地位を確固たるものにするが、このころからは、本格的に政治をテーマに扱った作品を世に送り出すようになった。そして1980年から12年にわたって発表したSF作品「ニコポル三部作」が世界的な人気を博し、第3巻『冷たい赤道』が文芸誌『リール』(Lire)の1993年度最優秀書籍に選ばれ[1]、多くの読者から高い評価を受けた。以後、映画にも活動の幅を広げ、1989年には最初の映画作品『バンカー・パレス・ホテル』を発表。映像作家としてもその手腕をいかんなく発揮している。2012年には、ルーヴル美術館と漫画出版社・フュチュロポリスの共同出版プロジェクトの一環として『ルーヴルの亡霊たち』を発表した。

作品 編集

シリーズ 編集

  • 今日の伝説(Légendes d'Aujourd'hui、ピエール・クリスタン作、1975年 - 1977年、3巻)
    1. 亡き者たちの航海(La Croisière des Oubliés、1975年)
    2. 石の船(Le Vaisseau de Pierre、1976年)
    3. 存在しない町(La Ville qui n'Existait Pas、1977年)
  • ニコポル三部作(1980年 - 1992年、3巻)
    1. 不死なる者の祭典(La Foire aux Immortel、1980年)
    2. 罠の女(La Femme Piege、1986年)
    3. 冷たい赤道(Froid Équateur、1992年)
  • アッツフェルド四部作(1998年 - 2007年、4巻)
    1. 怪物の眠り(Le Sommeil du Monstre、1998年)
    2. 12月32日(32 Décembre、2003年)
    3. パリのランデヴー(Rendez-Vous à Paris、2006年)
    4. 4人?(Quatre?、2007年)

単巻 編集

  • ロサンゼルス ローリー・ブルームの失われた星(Los Angeles - L'Étoile Oubliée de Laurie Bloom、ピエール・クリスタン作、1974年)
  • 星の叫び(L'Appel des Étoiles、1975年)
  • 外宇宙の記憶(Mémoires d'Outre-Espace, Histoires Courtes 1974-1977、1978年)
  • 抹殺者17号(Exterminateur 17、ジャン=ピエール・ディオネ作、1979年)
  • 黒の旅団(Les Phalanges d'Ordre Noir、ピエール・クリスタン作、1979年)
  • 宇宙の十字(Crux Universalis、1982年)
  • 狩猟会(Partie de Chasse、ピエール・クリスタン作、1983年)
  • オフサイド(Hors Jeu、パトリック・コーヴァン作、1987年)
  • 血まみれの心臓とその他の事実(Coeurs Sanglants et Autre Faits Divers、ピエール・クリスタン作、1988年)
  • 別時間の記憶(Memoires d'Autre Temps, Histoires Courtes 1971-1981、1996年)
  • アニマルズ(Animal'z、2009年)
  • ジュリアとロエム(Julia & Roem、2011年)
  • ルーヴルの亡霊たち(Les Fantômes du Louvre、2012年) ※ルーヴル美術館とフュチュロポリス社の共同出版
  • 大気の色(La Couleur de l'Air、2014年)

挿絵 編集

  • 石棺(Le Sarcophage、ピエール・クリスタン作、2000年)

その他 編集

  • 青い血(Bleu Sang、1994年)  ※画集
  • EnkiBilalAnDeuxMilleUn(1996年)  ※画集
  • Tykho Moon - Livre d'un Film(1996年) ※ビラル自身が監督した映画「ティコ・ムーン」のメイキング画像などを収録した本
  • 愛の世紀(Un Siècle d'Amour、1999年) ※画集
  • マグマ(Magma、2000年) ※画集

監督した映画作品 編集

日本での出版 編集

  • 『モンスターの眠り』(大友克洋監修、貴田奈都子訳、1998年 ISBN 4-309-26358-5) ※アッツフェルド四部作『怪物の眠り』の翻訳版。絶版。
  • ニコポル三部作(貴田奈津子訳、河出書房新社) ※絶版
    1. 『不死者のカーニバル』(2000年 ISBN 4-309-26402-6)
    2. 『罠の女』(2000年 ISBN 4-309-26403-4)
    3. 『冷たい赤道』(2001年 ISBN 4-309-26404-2)
  • 『モンスター [完全版]』(大西愛子訳、飛鳥新社、2011年 ISBN 978-4-86410-126-4) ※アッツフェルド四部作を単行本としてまとめた新訳版。
  • 『ルーヴルの亡霊たち』(大西愛子訳、小池寿子監修、小学館集英社プロダクション、2014年 ISBN 978-4-7968-7530-1)

脚注 編集

  1. ^ a b 『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』32-33頁。

参考文献 編集

  • 『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』玄光社、2013年

関連項目 編集

  • チェスボクシング - 『冷たい赤道』の作中に登場する架空のスポーツだったが、2003年、実際に開催された。
  • 新川洋司 - 影響を受けた作家としてエンキ・ビラルの名を挙げ、画集で対談を行った。
  • 弐瓶勉 - 画集内で対談を行っており、エンキ・ビラルを最も好きなバンド・デシネ作家に挙げている。自身の作品にも影響を受けたことを語っている。

外部リンク 編集