カワヒラ(川平、:Predatory carp学名:Chanodichthys erythropterus)は、コイ目コイ科クセノキプリス亜科に属する大型淡水魚。国内にはいない。

カワヒラ
Chanodichthys erythropterus by OpenCage.jpg
須磨海浜水族園で飼育されていた個体
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: コイ目 Cypriniformes
: コイ科 Cyprinidae
亜科 : クセノキプリス亜科 Oxygastrinae
: カワヒラ属 Chanodichthys
: カワヒラ C.erythropterus
学名
Chanodichthys erythropterus
(Basilewsky, 1855)
和名
カワヒラ
パイユ
英名
Predatory carp

英語ではSkygazerとも呼ばれ、カワヒラ属 Chanodichthys に分類される[1]

分布域は東アジア一帯で、アムール川から南は台湾紅河、そしてモンゴルブイル湖からも記録されており[2] 、最大で体長102cm(3フィート4インチ)、重量9kg(20ポンド)に達する。

名称編集

その体形や大きさがニシン科の海水魚ヒラを連想させるので「カワヒラ」の名がある[3]。台湾に分布するものには、大島正満博士によって「セッパリ (Culter aokii)」[4]の名が与えられていたことがある。

分布編集

アムール川から紅河台湾まで、東アジアの広域に分布する[5]朝鮮半島黄海に注ぐ河川にも生息する[6]

形態編集

最大で1mに達する。体色はやや赤みがかった銀白色。体形は側偏する。背面の輪郭は直線的である。背鰭は小さい。腹面の輪郭は緩い弧を描き、腹部外縁は腹鰭基部から肛門にかけてのみ[7][8]竜骨状を呈する。尻びれは長く、わずかに湾入する。尾鰭は深く二叉する。胸鰭は尖ってやや長い。成魚の各鰭は淡黄色を帯びる。

頭部上面は平らで、口はほぼ直角に上を向く。口ひげはない。目は比較的小さく、頭部の上方に付く。

繁殖期には追星が現れる[9]

生態編集

大河川や湖沼などの広い水域を好む。遊泳力が強く、水中の小動物を活発に捕食する。幼魚は魚類のほかに甲殻類、昆虫類などの無脊椎動物も積極的に捕食するが、成長するにつれて魚食性が強まっていく。

オスは2年、メスは3年で成熟し、6月から8月にかけて河川や湖の浅瀬で産卵する。生まれた稚魚は岸辺や小川などの小さな水域に入り、そこで成長する[10]

条虫の一種 Ligula intestinalis の中間宿主となることが報告されている。2016年、韓国の洛東江ではこの条虫の寄生によって本種の大量死が起こり、河岸に多数の死骸が打ち上がった[11]

外来種問題編集

韓国の洛東江には元々分布していなかったが、2004年に確認されたのを始めに個体数が急増し、既存の生態系に悪影響を及ぼしている。胃の内容物はコイフナコウライギギなど流域で食用とされている淡水魚が多く、漁業への被害も心配されている。解析の結果、韓国国内での自然分布域、漢江錦江の個体とDNAに有意の差が見られなかったことから、国内移植に由来するものと考えられる。[12]

人間との関係編集

中国では河川や湖沼に多産し、養殖も盛んに行われ、重要な食用魚となっている。ケツギョコイと並ぶ味の良さとして中国三名魚に数えられている[9]。また、春から夏にかけて獲れたものは薬膳の材料としても用いられ、食欲増進、利尿、脾臓の活性化、浮腫の軽減などの効果があるとされる[10]。台湾の日月潭では、かつて蒋介石が視察の際にその味を絶賛したことから「総統魚」の愛称で親しまれ、湖中に張られた生け簀で育ったものが名物となっている[13]。日本には元々分布しない上、国外から移植された例もなく、馴染みの薄い魚である。観賞魚として輸入されたことがある[14]

近似種との混同編集

 
ツマリカワヒラ

本種とツマリカワヒラの2種間では種類と種小名との対応関係に深刻な混乱が生じており、解決を見ていない。

戦前、森為三内田恵太郎は本種に Culter erythropterus[15][16] 、ツマリカワヒラに Culter brevicauda[17][18](C.alburnus のシノニム) を充てている。韓国は2021年現在でもこの対応関係を採用している[19][20]

2021年現在、中国と台湾では本種に Culter alburnus[10][21] 、ツマリカワヒラに Chanodichthys erythropterus[22][23] が充てられている。

参考文献編集

  • 『朝鮮魚類誌』(1939年、朝鮮総督府水産試験場)
  • 『原色満洲有用淡水魚類圖説』(1939年、南満州鉄道)
  • 『台灣淡水及河口魚蝦圖鑑』(2020年、晨星出版社)

出典編集

  1. ^ Huckstorf, V. (2012). "Chanodichthys erythropterus". The IUCN Red List of Threatened Species. IUCN. 2012: e.T166143A1115090. doi:10.2305/IUCN.UK.2012-1.RLTS.T166143A1115090.en. Retrieved 9 January 2018.
  2. ^ Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2006). "Chanodichthys erythropterus" in FishBase. April 2006 version.
  3. ^ 『朝鮮魚類誌』朝鮮総督府水産試験場、1939年、352-353頁。
  4. ^ 大島正満 (1923). “臺灣産淡水魚の分布を論じ併せて臺灣と附近各地との地理的關係に及ぶ”. 動物学雑誌 35: 22. 
  5. ^ Chanodichthys erythropterus”. FishBase. 2021年3月13日閲覧。
  6. ^ 『朝鮮魚類誌』朝鮮総督府水産試験場、1939年、355頁。
  7. ^ 『原色満洲有用淡水魚類圖説』南満州鉄道、1939年、24頁。
  8. ^ 멸종위기 백조어 우리가 지켜요!”. 국립낙동강생물자원관. 2021年3月14日閲覧。
  9. ^ a b 須磨海浜水族園 (2010). “パイユ”. うみと水ぞく 110: 8. 
  10. ^ a b c “[www.kepu.net.cn/gb/lives/fish/import/200210230029.html 淡水四大名鱼之一――翘嘴鲌]”. 中国科学院. 2021年3月16日閲覧。
  11. ^ Woon-Mok Sohn , Byoung-Kuk Na , Soo Gun Jung , Koo Hwan Kim (2016). “Mass Death of Predatory Carp, Chanodichthys erythropterus, Induced by Plerocercoid Larvae of Ligula intestinalis (Cestoda: Diphyllobothriidae)”. Korean Journal of Parasitology 54: 363-368. 
  12. ^ 강찬수 (2019年3月29日). “낙동강 ‘최상위 포식자’된 강준치 어디서 왔나”. 中央日報. https://news.joins.com/article/23425789 2021年3月26日閲覧。 
  13. ^ 日月潭美食…總統魚”. 南投縣政府. 2020年3月14日閲覧。
  14. ^ クルター・アルブルヌス”. 東熱帯魚研究所. 2021年3月14日閲覧。
  15. ^ 『朝鮮魚類誌』朝鮮総督府水産試験場、1939年、352頁。
  16. ^ 『原色満洲有用淡水魚類圖説』南満州鉄道、1939年、23-24頁。
  17. ^ 『朝鮮魚類誌』朝鮮総督府水産試験場、1939年、355頁。
  18. ^ 『原色満洲有用淡水魚類圖説』南満州鉄道、1939年、26頁。
  19. ^ “[fishillust.com/Chanodichthys_erythropterus 강준치(Predatory carp).Chanodichthys erythropterus (Basilewsky, 1855)]”. 김인영. 2021年3月17日閲覧。
  20. ^ “[fishillust.com/Culter_alburnu 백조어(Topmouth Culter).Culter alburnus(Basilewsky, 1855). Family 102]”. 김인영. 2021年3月17日閲覧。
  21. ^ Culter alburnus”. 臺灣魚類資料庫. 2021年3月17日閲覧。
  22. ^ “[www.kepu.net.cn/gb/lives/fish/small/200210240027.html 短尾红梢子――红鳍原鮊]”. 中国科学院. 2021年3月17日閲覧。
  23. ^ Chanodichthys erythropterus”. 臺灣魚類資料庫. 2021年3月17日閲覧。