シーラーズのハーフィズの作品

ガザルغزل‎, ḡazal, 簡易的なラテン翻字: ghazal)は、短い定型抒情詩の一形式。あるいはその形式を用いて作られた詩を指す場合もある。アラブの古典定型詩カスィーダの一部分から派生し、特にペルシアで発展した。歴史的には主に西アジアから南アジアにかけての地域に伝播したが、1990年代半ばから英語でもガザルによる詩作が盛んになりつつある[1]

目次

詩形編集

本節ではペルシア語ガザルの規範的枠組みについて述べる。ガザルを構成する基本単位は、間にカエスーラを挟んだ1行の詩句(ベイト)であり、ひとつのガザル作品は複数のベイトからなる。1ベイト中の前半と後半は、続けて1行で書いても2行に分けて書いてもよい。ガザル作品の長さは、7から14ベイトのものが多い。各ベイトは、末尾で押韻し、また、同一の韻律を共有する。ベイトの前半と後半で同じ詩句がリフレインされる場合もある。最後の対句は「マクター(maqtaʿ)」と呼ばれ、詩人の雅号「タハッロス(taḵallos)」が詠み込まれる。

発展の歴史編集

アラビア語の「ガザル」の語根、ğ-z-l は「糸紡ぎ」に関係する単語群を形成し、名詞 ğazal も原義は「紡ぐこと」である[2]ジャーヒリーヤ時代に遡る伝統的なカスィーダ詩の導入部分に起源を持ち、イスラーム時代以降は単一の主題を扱うキトア詩( قطعة qiṭ‘a 「断片詩」と訳される)の形で多くの作品が作られた。主題としては恋愛が最も多く、求愛者の片思いを歌う。感情の表現には様式化された象徴や物語が用いられる。また、イスラーム神秘主義の影響もあり、恋人を神と解釈できる場合がある。現在のような詩型となったのはペルシア文学の影響による。ペルシア・ガザルの大家としては、ルーダキールーミーハーフィズがいる。

南アジア(インド)においては、12世紀のガズナ朝から19世紀のムガル朝に至るイスラーム王朝の宮廷語であるペルシア語で盛んにガザルが作られていたが、時代が下るにつれ現地語でも作られるようになった[3]。17世紀後半にはハイダラーバードを中心に、ニザーム王国マイソール王国といったデカンの王国の宮廷で、「リーフテ英語版」によりインド風の表現を用いたガザルが作られ、中でもワリー・モハメド・ワリーはウルドゥー語ガザルの創始者とみなされる[4]。「リーフテ」はウルドゥー語やダキニー語の前身となった言葉である。18世紀には、ムガル皇帝の宮廷があるデリーアワド太守の宮廷があるラクナウでウルドゥー・ガザルが盛んになり、18世紀から20世紀にかけての時代、ミールソウダー英語版ゾウク英語版ガーリブイクバールなどの詩人が活躍した[3]。そのほかに、ベンガル語でも、詩人カーズィー・ナズルル・イスラーム英語版らによってガザルが作られた。インドやパキスタンでは、現在も恋愛詩として鑑賞されている。特にウルドゥー語のガザルはカッワーリーなどの歌曲に用いられ、映画で使われることも多い。

出典編集

  1. ^ Arif Waqar (2015年3月22日). “Writing Ghazal in English”. 2017年9月17日閲覧。
  2. ^ Translation and Meaning of غزل”. Almaany English Arabic Dictionary. 2017年9月17日閲覧。
  3. ^ a b 鈴木, 斌 (1968). “詩人ガーリブに就て”. 印度學佛教學研究 17 (1): 358-361. doi:10.4259/ibk.17.358. 
  4. ^ Kanda, K.C. (1992). Masterpieces of Urdu Ghazal from the 17th to the 20th Century. Sterling Publishers Pvt. Ltd. p. 18. ISBN 9788120711952. https://books.google.com/books/about/Masterpieces_of_Urdu_Ghazal.html?id=fUKKvNDYyUEC&redir_esc=y. 

参考文献編集

  • ハーフィズ『ハーフィズ詩集』 黒柳恒男訳、〈平凡社東洋文庫〉、1976年。 - ハーフィズを中心にペルシア・ガザルの歴史を解説。
  • 『ミール狂恋詩集』 松村光耕訳、〈平凡社東洋文庫〉、1999年。 - ウルドゥー・ガザルを中心にガザルの歴史を解説。

関連項目編集

外部リンク編集

  • Urdu poetic forms
  • A Desertful of Roses The Divan-e Ghalib - in Urdu, with Devanagari and Roman transliterations. Also includes a collection of concise commentaries on each verse by well-known scholars, as well as other critical information.
  • The Ghazal Page, an online journal devoted to the ghazal in English