コメット巡航戦車

コメット巡航戦車(コメットじゅんこうせんしゃ、Cruiser Tank Comet (A34))は、第二次世界大戦後期に登場したイギリス巡航戦車(35トン級)である。

コメット巡航戦車
Comet tank 1.jpg
性能諸元
全長 7.77 m
車体長 6.55 m
全幅 3.04 m
全高 2.67 m
重量 33 t
懸架方式 クリスティー方式
速度 50 km/h
行動距離 250 km
主砲 77 mm HV
(実口径 76.2 mm)
副武装 7.92 mm ベサ機関銃×2
装甲 102 mm
エンジン ロールスロイス ミーティア
600 馬力 (447 kW)
乗員 5 名
車長、砲手、装填手、操縦手、機関銃手
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概要編集

北アフリカ戦線でドイツのティーガーI重戦車に遭遇し、またIV号戦車の火力も強化されて苦戦したイギリス軍は、従来の巡航戦車やアメリカからレンドリースされていたM4シャーマン戦車の力不足を痛感していた。巡航戦車の火力増強型としては、クロムウェル巡航戦車17ポンド砲を搭載した巡航戦車 チャレンジャー(A30)が開発されていたが、開発が大幅に遅れた上、車体サイズと重量のバランスが悪く、シャーマンに同じ砲を搭載したファイアフライに比べて少数の使用に止まった。

一方、17ポンド砲を開発したヴィッカース・アームストロング社は、これを短縮し50口径にして、3インチ高射砲用の短い薬莢と17ポンド砲用の弾頭を合わせた砲弾を用いるHV(High Velocity)75 mm 砲を1943年に試作していた。これは75mm砲と命名されながらも実際の口径は76.2 mm で、同口径でも使用砲弾の異なる他の砲があるため、補給上の混乱を防ぐためであったが、最終的には77 mm HV(高初速砲)と呼ばれることとなった。しかし短砲身化したため貫徹力が劣るが発射される榴弾の精度は17ポンド砲よりも向上した。また搭載する砲にアメリカのM10M18などに搭載されているM5 3インチ(76.2mm)砲の改良型である76.2mm M1A1戦車砲も検討されたが本砲が期待外れだったためそのまま77mm砲が採用された。

77mmHV砲、17ポンド砲、3インチ対戦車砲との比較
名称 77mm砲Mk.I 17ポンド砲Mk.II、VII 76mmM1A1
初速/m/秒

(フィート/秒)

APCBC 785(2575) APDS 1120(3674) APCBC 884(2900) APDS 1204(3950) APCBC 792(2600)

APCR 1036(3398)

弾頭重量 kg

(ポンド)

APCBC7.70(17.0) APDS 3.50(7.72) APCBC7.70(17.0) APDS 3.50(7.72) APCBC7.00(15.43)

APCR 3.40(7.6)

距離 m(ヤード) 貫徹カ(傾斜角30°)

mm(インチ)

貫徹カ(傾斜角30°)

mm(インチ)

貫徹カ(傾斜角30°)

mm(インチ)

457.2m(500) APCBC 110(4.33) APCBC 140(5.51) APCBC 94(3.70)
914.4m(1000) APCBC 105(4.13) APCBC 130(5.12) APCBC 89(3.50)
1371.6m(1500) APCBC 91(3.58) APCBC 120(4.72) APCBC 82(3.22)
1828.8m(2000) APCBC 89(3.50) APCBC 111(4.37) APCBC 76(3.00)

この砲の開発の成功により、A27セントーおよびクロムウェル巡航戦車を生産中のレイランド社が、クロムウェルをベースとし、77 mm HV砲を搭載した発展型を開発することとなった。こうしてイギリス軍は、ようやく火力・装甲・機動力のバランスがとれた国産戦車を手に入れることができたのである。

本車の生産はクロムウェルの生産に係わったメーカー(レイランド社、イングリッシュ・エレクトリック社、ジョン・ファウラー社、メトロポリタン・キャメル貨客車製造社)によって戦後も続けられ、最終的に1186輌が完成した。

構成編集

コメットの構造は基本的にはクロムウェルMk.IVのF型車体の拡大発展型で、鋳造製の主砲防盾を除き圧延防弾鋼の溶接によって構成されている。足回りはクロムウェルと同じクリスティー式サスペンションではあるが、重量増に合わせて強化され、上部支持用の小型転輪も追加されている。

主砲の威力は17ポンド砲よりは劣るものの、1000 m 先の圧延防弾鋼に対し、APCBC弾で110 mm、APDSで165 mm を撃ち抜くという高い性能を示し、17ポンド砲よりも弾道が低伸し、命中率も向上したという。77 mm 砲は電動旋回式の砲塔に搭載され、7.92 mm ベサ重機関銃が同軸装備された。

エンジンは600馬力のロールスロイス・ミーティアMk.III 12気筒ガソリンエンジンを搭載している。

運用編集

1944年9月から量産型が軍に引き渡され、翌年初めに第11機甲師団の第29機甲旅団で部隊が編成された。しかし訓練中にバルジの戦いが勃発し、旅団は以前の装備であるシャーマンで再編成されて前線に送られ、戦闘任務を解かれた翌年1月に、再び転換訓練のためコメットで編成された。

最初の実戦投入は終戦も間近い1945年3月、ライン渡河作戦以降であったため、ドイツ戦車と遭遇する機会はほとんどなく、その本領を発揮することはなかったが、運用部隊での評価は高かった。

第二次世界大戦後、生産されたコメットの大半は砲塔側面に煙幕弾発射器を追加したMk.IBに改造された。また朝鮮戦争にも投入されたが、さらなる重装甲とより大火力の20ポンド戦車砲を装備したセンチュリオンMk.3ほどの高評価を得ることはなかった。コメットは鉄道輸送のためにイギリス製戦車に課せられた車幅制限に適合するように設計されていたため、センチュリオンに搭載されている20ポンド戦車砲やL7 105mm戦車砲のような新型主砲への換装が不可能であったためである。

第一線装備から外されたコメットは、予備役部隊である国防義勇軍の装備となり、主に訓練に用いられた。1958年にはイギリス陸軍から退役し、アイルランドフィンランド南アフリカ共和国ミャンマーに売却された。ミャンマーでは2007年まで現役であった。

派生型編集

コメット・クロコダイル
チャーチル・クロコダイルと同様の燃料圧縮トレーラーと放射口を車体前面機銃の位置に装備している。これらはモントゴメリー将軍のキャピタル戦車の考えに基づく戦後の改造車両と思われる。キャピタル戦車とは火焔放射、地雷除去、水陸両用の作戦等すべてを遂行できる能力を持ち合わせた理論上の戦車のことである。
コメット装甲メンテナンス車
南アフリカ共和国軍が運用していた装甲メンテナンス車(AMV)。

登場作品編集

War Thunder
イギリス陸軍中戦車としてMk.Iが登場。
World of Tanks
イギリス中戦車Cometとして登場。
トータル・タンク・シミュレーター
イギリスの改中戦車COMETとして登場。

脚注編集

[脚注の使い方]

関連項目編集