ゴッドマン (インド)

ゴッドマンとは、主にインドで用いられる俗称で、ヒンドゥー教カリスマ的な行者を指す言葉[1]。また、カルト信者より半ば神のように崇拝されるカリスマ的グルを指す。しばしば、際立った存在感をもち、広く社会からの注目と支持を集めることができる[2]。ともすれば、ゴッドマンは治癒能力、未来予知と改変、読心などの超能力をもつと主張する[3]

概要編集

ゴッドマンは特別な人間として崇拝され、しばしばその信奉者たちから礼拝を受ける[4]。ゴッドマンのうちのいくつかは既存の確立された宗派から生まれるが、通常は何らかの宗教的権威には属さない。近年は、多くのゴッドマンがインド国外で多くの信奉者を獲得し、名声と富を得ている[3]

特筆すべきゴッドマンとしては非常に多くの信奉者を獲得したサイババが挙げられる[3][4][5]。サイババはヴィブーティー(vibhuti, 聖灰)や時計、宝石などを出現させる奇跡を起こせると主張することで知られる。また、病院や大学の設置などの慈善事業に関与した[4]

また、信奉者たちから女神のように崇拝される女性のグルも存在し、そのうちのいくつかは著名な男性グルの妻や協力者である。信奉者たちによって生き神や聖者として敬られる女性グルとしては、ミラ・アルフレッサ英語版アーナンダマイー・マー英語版マーター・アムリターナンダマイーマザー・ミーラ英語版などが挙げられる[4]

自身の超能力の科学調査を許可したゴッドマンがわずかながら存在し、スワミ・ラマ英語版は1970年頃メニンガー財団のエルマー・グリーンによるバイオフィードバック調査へと協力したことで著名となった[6][7]

政治的支援編集

ゴッドマンのうちいくつかは政治家や政府高官などの後援者を持つ。サイババはインド人民党ラール・クリシュナ・アードヴァーニーなどの政治に携わる何人かの信奉者を持った[8][9] 。 2001年には、サイババを告発から擁護する公式書簡が発行され、これにはバジパイ首相や元主席判事のバグワティミスラ英語版、かつて内務大臣を務めたシブラージ・パティル英語版らが署名した[10]

2006年には、ラビ・シャンカールがアメリカ合衆国下院議員のジョセフ・クローリー英語版の推薦により、ノーベル平和賞候補にノミネートされた[11]。元大統領のプラティバ・パティルは、2007年6月にダダ・レクラジ英語版から訪問され大統領任命の予知を受けたと主張した[8][12]

2013年9月、ショブハン・サルカールは19世紀の王ラオ・ラージャ・ラム・バクシュ・シンの宮殿の下に黄金が埋められてると夢で告げられたと預言した[13]。サルカールの門弟の一人が、当時の食品加工産業省英語版の大臣であったチャラン・ダス・マハント英語版に連絡を取ると、マハントは順に様々な官庁職員の説得を行った。のちの10月12日、インド考古調査局がこの遺跡の調査の実施を行い、15日にはこの発掘を発表した。11月18日、金の痕跡がないことがはっきりしたため、インド考古調査局は発掘を中止し、掘削跡を埋め戻した[14]ウンナーオ埋蔵金事件英語版)。

懐疑論・暴露編集

インドの合理主義者団体英語版は「奇跡」と呼ばれるものが実際には手品によって行われていることを示すセミナーを開催している[15]インド合理主義者協会英語版の会員たちはインドの村々を渡って「奇跡」の正体を暴くショーを行い、村民がゴッドマンへ金品を支払わないよう指導している[16]盲信撲滅委員会英語版「私たちは賢い」運動英語版もまた、また、霊的指導者・グルの虚偽を暴露することに積極的に取り組んでいる。

よくある奇跡とその手法編集

  • 毛布に包まれた人物が空中浮揚する。:床に横たわった人が毛布で覆われゆっくりと浮かび上がるこのトリックは、2本のホッケースティックを利用し自身を持ち上げることで行われる[17]
  • 杖で支えられた人物が空中浮揚する。:このトリックでは手に持った竹杖だけで敷物の上を浮揚するように見える。実際には中空の竹杖と演者の衣の中には人の体重を支えられる支えが入っており、竹杖の中を通り敷物の下に固定されている[18]
  • 聖水を振り掛け岩を爆発させる。:岩には固体のナトリウムが埋め込まれており、水と反応して瞬間的に爆発する[17]
  • ギーを木材に注ぎ火を起こす。:木材には過マンガン酸カリウムが含まれており、ギーとして流されたグリセリンと反応し発火する[17][18]
  • 火を食べたり、手のひらで炎を運ぶ。:このトリックには樟脳が用いられる。樟脳の炎は訓練により数秒間であれば安全に持つことができる。これは舌の上でも同じであり、樟脳が熱くなりすぎた場合には演者は息を吐いて口を閉じて消火する[18]
  • 燃える炭火の上を歩く。:炭の上に水分を吸収する塩が撒かれている。演者は足を水で濡らしたうえで故意に汚して層を作る。速やかにわたり切れば演者は火傷しない[18]

用語への批判編集

霊的指導者のひとりラビ・シャンカールは「ゴッドマン」という言葉の使用に異議を唱え、この代わりに自身の活動には「グル」を選んで用いている[19]。記者のフランソワ・ゴーティエ英語版はシャンカールの団体である「アートオブリビング」が多くの社会活動を行っていることを理由に、シャンカールとサイババの説明に「ゴッドマン」を用いることに反対している[20][21]

代表的なゴッドマン編集

脚注編集

  1. ^ Abhaya SRIVASTAVA「インドのカルト集団「独自の政府と軍を運営」、警察発表」『AFPBB News』、2016年6月5日。2020年10月29日閲覧。
  2. ^ Mehta, Uday (1993), Modern Godmen in India: A Sociological Appraisal, Mumbai: Popular Prakashan, 81-7154-708-7.
  3. ^ a b c James G. Lochtefeld (2002). The Illustrated Encyclopedia of Hinduism: A-M. The Rosen Publishing Group. p. 253. ISBN 978-0-8239-3179-8. https://books.google.com/books?id=5kl0DYIjUPgC&q=253&pg=PA253 2014年3月26日閲覧。 
  4. ^ a b c d Linda Woodhead (January 2002). Religions in the Modern World: Traditions and Transformations. Psychology Press. p. 35. ISBN 978-0-415-21783-5. https://books.google.com/books?id=rwqFGUKUb58C&pg=PP5 2014年3月26日閲覧. "By far the most famous Godman of today is Sathya Sai Baba." 
  5. ^ Johannes Quack (22 November 2011). Disenchanting India: Organized Rationalism and Criticism of Religion in India. Oxford University Press. p. 96. ISBN 978-0-19-981260-8. https://books.google.com/books?id=TNbxUwhS5RUC&pg=PR14 2014年3月26日閲覧。 
  6. ^ John Ankerberg; John Weldon (1996). Encyclopedia of New Age Beliefs. Harvest House Publishers. pp. 598–. ISBN 978-1-56507-160-5. https://books.google.com/books?id=SghdYBbMds0C&pg=PA598 
  7. ^ Paul G. Swingle (2008). Biofeedback for the Brain: How Neurotherapy Effectively Treats Depression, ADHD, Autism, and More. Rutgers University Press. p. 45. ISBN 978-0-8135-4287-4. https://books.google.com/books?id=rcz9j4qALxkC&pg=PA45 2014年4月1日閲覧。 
  8. ^ a b Padmaparna Ghosh (2007年7月1日). “Hocus focus: Presidential candidate Pratibha Patil is not the only one to believe in spirits and premonitions.”. The Telegraph (India). http://www.telegraphindia.com/1070701/asp/7days/story_7999408.asp 2014年4月1日閲覧。 
  9. ^ “Political leaders condole Sai Baba's death”. India Today. (2011年4月24日). http://indiatoday.intoday.in/story/political-leaders-condole-sai-babas-death/1/136188.html 2014年4月1日閲覧. "I first came in contact with him shortly after my incarceration in the Bangalore Central Jail during the 1975-77 Emergency. After that I have been meeting him frequently." 
  10. ^ “Obituary: Miracle man”. Frontline. (2011年5月7日). http://www.hindu.com/thehindu/fline/fl2810/stories/20110520281002600.htm 2014年4月1日閲覧。 
  11. ^ John Farndon (27 May 2009). India Booms: The Breathtaking Development and Influence of Modern India. Ebury Publishing. p. 68. ISBN 978-0-7535-2074-1. https://books.google.com/books?id=-rvogRuj1_0C&pg=PA68 2014年4月1日閲覧。 
  12. ^ “Pratibha claims divine premonition of greater responsibility”. The Hindu. (2007年6月28日). http://www.thehindu.com/todays-paper/tp-national/tp-newdelhi/pratibha-claims-divine-premonition-of-greater-responsibility/article1862552.ece 2014年4月1日閲覧。 
  13. ^ “Shobhan Sarkar: The truth behind gold digging baba of Unnao”. India Today. (2013年12月29日). http://indiatoday.intoday.in/story/truth-behind-gold-digging-baba-shobhan-sarkar/1/333429.html 2014年4月1日閲覧。 
  14. ^ “No sign of gold, ASI stops Unnao digging”. The Hindu. (2013年11月19日). http://archive.indianexpress.com/news/no-sign-of-gold-asi-stops-unnao-digging/1196575/ 2014年4月1日閲覧。 
  15. ^ “Tricks revealed”. The Hindu. (2003年5月31日). http://www.thehindu.com/thehindu/yw/2003/05/31/stories/2003053100110300.htm 2015年1月24日閲覧。 
  16. ^ “Rationalists expose miracle men to villagers”. New Zealand Herald. (2009年7月14日). http://www.nzherald.co.nz/world/news/article.cfm?c_id=2&objectid=10584228 2015年1月24日閲覧。 
  17. ^ a b c “Exposed: the tricks of India's 'guru' fraudsters”. The National (Abu Dhabi). (2010年5月31日). http://www.thenational.ae/news/world/south-asia/exposed-the-tricks-of-indias-guru-fraudsters#full 2015年1月24日閲覧。 
  18. ^ a b c d “Confrontation in the Twilight zone”. Sify. (2013年8月30日). http://www.sify.com/finance/confrontation-in-the-twilight-zone-news-default-ni5bUiigeagsi.html 2015年1月24日閲覧。 
  19. ^ “Different Folks, Different Strokes”. Outlook India. (2005年1月10日). http://www.outlookindia.com/article/Different-Folks-Different-Strokes/226164 2015年1月24日閲覧。 
  20. ^ “Why the cynicism about Indian gurus?”. Rediff. (2001年3月12日). http://www.rediff.com/news/2001/mar/12franc.htm 2015年3月28日閲覧。 
  21. ^ François Gautier (2001). A Western Journalist on India: The Ferengi's Columns. Har-Anand Publications. p. 61. ISBN 978-81-241-0795-9. https://books.google.com/books?id=o56i5ymOIBkC&pg=PA61 2015年1月24日閲覧。 
  22. ^ a b c d e f g h “India's 10 most controversial gurus”. Rediff.com India News. (2014年11月20日). https://www.rediff.com/news/report/pix-india-10-most-controversial-gurus/20141120.htm 2020年11月17日閲覧。 
  23. ^ a b c d e f g “Top 10 controversial godmen of India”. IndiaToday. (2014年11月19日). https://www.indiatoday.in/india/photo/top-10-controversial-godmen-of-india-373892-2014-11-19 2020年11月17日閲覧。 

関連書籍編集

関連項目編集