シトナイ

アイヌ神話の英雄

シトナイ近現代日本説話集に登場する架空のアイヌの少女。彼女は赤岩山の洞窟の大蛇を殺した、と言われる[1]

あらすじ編集

むかし、赤岩山の洞窟に大蛇がすんでいた。身の丈は七、八丈(二十二・三メートル)、胴の太さは四斗樽ほど。夜な夜な村に出て来ては人をさらい、作物を荒らすので、村人はいつも不安な毎日を送っていた。少しでも大蛇からの被害をなくそうと、熊の肉や鹿の肉などをお供えして祭りをしてみたが、いっこう効き目がない。そんなある夜、大蛇は村人の夢枕にたち”十二、三歳の無垢の娘をくいたい”といった。村中大さわぎになり、しかし相変わらず被害が絶えないので、やむをえず、村の娘達を毎年一回、八月十五日の日に供えることにした。 こうして、すでに九年たち、九人の娘がいけにえになった。そして十人目の娘を供える祭りの日が近づいてくる。 アイヌの村長の末娘、シトナイが、このいけにえの話を聞き。彼女は犠牲になることを志願する。父母は愛しい娘の願いをとても許すことが出来なかったが、シトナイの決心は堅かった。シトナイは切れ味の良いマキリ(小刀)と猟につれて行く猛犬をつれて、家を出た。赤岩山に着いたのは、夕やみ迫る頃であった。シトナイは十五夜の月が出ないうちと、数十メートルの岸壁を、なんの苦もなくよじ登り、その洞窟へ行き、持って来た熊と鹿の肉を入口に供え、岩かげに身をしのばせて、ようすをうかがっていた。 満月がだんだんと頭上にのぼりはじめ、山や海を照らすその時、天地もくずれんばかりの響きとともに大蛇は両眼を太陽のごとくに光らせ、穴の口に出てきた。大口をあけ一気に熊の肉をくいつくすや、次に鹿の肉にくいかかろうとした。その時岩かげのシトナイは、愛犬を放した。ひと声高くほえるやいなや、犬は猛然と大蛇に飛びかかり、しばし組み争っていたが、遂に大蛇ののどにかみついた。急所の痛手にたえられず、さすがの大蛇もとうとう動かなくなった。シトナイは、かくし持っていたマキリを抜きはなち大蛇にとどめをさし、洞窟へと入っていった。中には今まで犠牲にとなった九人の娘の骨が散らばっていた。一つ一つ拾い集めながら、シトナイは骨を背負い、愛犬を従えて家に帰って行った。 この時から、村に平和な生活が訪れたが、あとのたたりを恐れて、この洞窟に白竜大権現を祭ることになったという[2]

バージョン編集

シトナイ譚には主に2つの「型」がある。ひとつはシトナイが10人目の生贄で、6人姉妹の末っ子で、年齢が12、3歳という型。もうひとつは9人目の生贄で、9人姉妹の末っ子で、15歳という型。前者は新聞記者・青木純二、後者は郷土史家・橋本堯尚が文章化したのが初出。

青木型
  • 『アイヌの伝説と其情話』
  • 『北海道の口碑伝説』
  • 『北海道昔ばなし』
  • 『伝説は生きている 写真で見る北海道の口承文芸』
橋本型
  • 『北海道郷土史研究』
  • 『昔話北海道』
  • 『少年少女日本伝説全集1』
  • 『コタンの大蛇:小人のコロボックルほか』

シトナイが登場する作品編集

ゲーム編集

脚注編集