ショウロ
ショウロ(松露、Rhizopogon roseolus)は担子菌門のイグチ目ショウロ科に属するキノコの一種である。
ショウロ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Rhizopogon roseolus (Corda) Th. Fries | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
ショウロ (松露) |
形態編集
子実体は歪んだ塊状をなし、ひげ根状の菌糸束が表面にまといつく。初めは白色であるが成熟に伴って次第に黄褐色を呈し、地上に掘り出したり傷つけたりすると淡紅色に変わる。外皮は剥げにくく、内部は薄い隔壁に囲まれた微細な空隙を生じてスポンジ状を呈し、幼時は純白色で弾力に富むが、成熟するに従って次第に黄褐色ないし黒褐色に変色するとともに弾力を失い、最後には粘液状に液化する。
胞子は楕円形で薄壁・平滑、成熟時には暗褐色を呈し、しばしば1 - 2個の小さな油滴を含む。担子器はこん棒状をなし、無色かつ薄壁、先端には角状の小柄を欠き、6 - 8個の胞子を生じる。シスチジアはなく、子実体の外皮層の菌糸は淡褐色で薄壁または幾分か厚壁で、通常はかすがい連結を欠いている。子実体内部の隔壁(Tramal Plate)の実質部の菌糸は無色・薄壁で、かすがい連結を有することがある。
生態編集
子実体は春および秋に、二針葉マツ属の樹林で見出される。通常は地中に浅く埋もれた状態で発生するが、半ば地上に現れることも多い。マツ属の樹木の細根に典型的な外生菌根を形成して生活する。先駆植物に類似した性格を持ち、強度の攪乱を受けた場所に典型的な先駆植物であるクロマツやアカマツが定着するのに伴って出現することが多い。既存のマツ林などにおける新たな林道開設などで撹乱された場所に発生することもある。
担子器は、胞子を能動的に射出する機能を喪失しているため、胞子の分散は、成熟して粘液化した子実体断片が雨水に流されることによるとともに、昆虫その他の食害に伴って行われると考えられている。
分布編集
類似種編集
オオショウロ(Rhizopogon nigrescens Coker and Couch)は全体に黒変性を有し、アカショウロ(Rhizopogon superiorensis A. H. Smith)は外皮が全体に橙赤色を帯びる。ホンショウロ(Rhizopogon luteolus Fr. et Nordh.)は外皮に赤変性を欠き、幼時から一種の不快臭を有する点で区別されている。
分類学上の位置づけ編集
単純な球塊状の子実体を形成することから、古くは腹菌類の一種として扱われてきたが、マツ属の樹木に限って外生菌根を形成することや、胞子の所見・子実体が含有する色素成分などが共通することに加え、分子系統学的解析の結果に基づき、現在ではヌメリイグチ属に類縁関係を持つとして、イグチ目のヌメリイグチ亜目に置かれている。外生菌根の形態も、ヌメリイグチ属の種類のそれとよく似ている。
西洋の高級食材であるトリュフとして知られるセイヨウショウロ(Tuber spp.)は、地中に形成される子実体がやや似ることから和名がついたが、子嚢菌門に属するもので、ショウロとの間の類縁関係は非常に薄い。
食・毒性編集
安全かつ美味な食用菌の一つで、古くから珍重されたが、発見が容易でないため希少価値が高い。現代では、マツ林の管理不足による環境悪化に伴って産出量が激減し、市場には出回ることは非常に少なくなっている。栽培の試みもあるが、まだ商業的成功には至っていない。
調理編集
未熟で内部がまだ純白色を保っているものを最上とし、これを俗にコメショウロ(米松露)と称する。薄い食塩水できれいに洗って砂粒などを除去した後、吸い物の実・塩焼き・茶碗蒸しの具などとして食用に供するのが一般的である。成熟とともに内部が黄褐色を帯びたものはムギショウロ(麦松露)と呼ばれ、食材としての評価はやや劣るとされる。さらに成熟が進んだものは弾力を失い、色調も黒褐色となり、一種の悪臭を発するために食用としては利用されない。
栽培の試み編集
マツ林の林床の有機物層を除去し、木炭や黒土を土壌に加えることで、ショウロの新たな発生(ないしは子実体発生量の増加)を誘導する試みが行われている[2][3]。
クロマツの若齢林(23年生)を対象に10メートル四方の方形区を50区設定し、砂が露出する程度まで腐植層を除去した後、各区に長さ3メートル・深さおよび幅25センチメートルの溝を設け、その溝の内部に粉炭を厚さ10センチメートルに敷き詰めた後に埋め戻し、さらに、林内の下層植生の狩り払いと林床の腐植層除去とを年二回行ったところ、炭の埋め込みを行った翌年1月からショウロの発生が確認され、その後の約一年間では、50の試験区全体で2,016個(生重7,332グラム)の発生が認められたという[4]。
2016年からは、鳥取県の鳥取砂丘(鳥取市)、北条砂丘(北栄町)にて、鳥取県、鳥取大学、地元住民らにより、ショウロの栽培に取り組むプロジェクトが進められている[5]。
参考画像編集
脚注編集
- ^ Kawai, M., Yamahara, M., and A. Ohta, 2008. Bipolar incompatibility system of an ectomycorrhizal basidiomycete, Rhizopogon rubescens. Mycorrhiza 18: 205-210.
- ^ 小川眞、2007.炭と菌根でよみがえる松.築地書館、東京. ISBN 978-4-80671-347-0.
- ^ 黒木秀一、2008.ショウロ栽培の新たな可能性?. 千葉菌類談話会通信24: 62-64.
- ^ 福里和朗、1993.明るい林内でショウロが多く発生(宮崎県).現代林業(328): 51.
- ^ 鳥取)砂丘の松林で松露栽培復活へ 鳥大と県が研究 朝日新聞(2016年9月29日)2017年9月22日閲覧