ジュラ語 (Dioula, Dyula)は、ニジェール・コンゴ語族 マンデ語派に属する言語である。主にブルキナファソコートジボワールマリ共和国で話される他、ガーナギニアギニアビサウなどでも話され、第一言語または第二言語として何百万人もの話者を擁する。マンディング諸語のひとつで、言語系統的にバンバラ語にもっとも近い関係にある。マンディンカ語バンバラ語相互理解性がある。西アフリカで商用言語として使われている。ラテン文字ンコ文字、またはアラビア文字で表記される。

ジュラ語
Julakan
話される国 ブルキナファソの旗 ブルキナファソ
コートジボワールの旗 コートジボワール
マリ共和国の旗 マリ
話者数 2,700,000人(第二言語話者を含む)
言語系統
ニジェール・コンゴ語族 ?
表記体系 ラテン文字アラビア文字
言語コード
ISO 639-2 dyu
ISO 639-3 dyu
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言語名別称

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  • デュラ語
  • デゥウラ語
  • ディユラ語
  • ディュラ語
  • ディウラ語
  • Dioula
  • Dioula Véhiculaire
  • Diula
  • Djula
  • Dyoula
  • Dyula
  • Jula
  • Jula Kong
  • Kong Jula
  • Tagboussikan
  • Trade Jula

歴史

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歴史的に「ジュラ(ジュラ語:jula)」は民族名ではなく、マンディング諸語で「商人」を意味する名称である。この語は、ムスリムの商人を、同じ地域に住む非ムスリムの住民(主にセヌフォ族の農業従事者)と区別して称するものだった。後に、バンバラ族マンディンカ族など、マンディング語を話す商人およびその言語を指すエクソニム(外部からの呼称)となった[1]

その後、「ジュラ」はマニンカ語の要素が混じった簡略版マリバンバラ語も指すようになった。この簡略化された言語は広く使われるリングア・フランカとなった。サヘルからの何百万人もの移民労働者の流入以降、リングア・フランカの必要からコートジボワールにおけるジュラ語の使用はさらに促進された。多くのブルキナファソ人はコートジボワール滞在中にジュラ語を学び、母国でさらに広めた。今日、ジュラ語は少なくともコートジボワール人の約61%とブルキナファソ人の約35%(主に同国南部ないし西部の居住者)などに使用されている。

2024年6月27日、Google 翻訳にジュラ語が追加された。

音韻論

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モシ語とジュラ語を話すジュラ語話者(台湾録音)

子音

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両唇音 歯茎音 硬口蓋音 軟口蓋音 声門音
鼻音 m n ɲ ŋ
破裂音 無声 p t k
有声 b d ɡ
歯擦音 無声 c
有声 j
摩擦音 無声 f s h
有声 v z
ふるえ音 r
接近音 j w
側面接近音 l

母音

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前舌 中舌 後舌
狭母音 i u
半狭母音 e o
半広母音 ɛ ɔ
広母音 a

これら7母音はいずれも「長母音-短母音」「口母音-鼻母音」の対立を持つ。

表記体系

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ラテン文字

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ラテン文字(ローマ字)の正書法は、ブルキナファソでは国立言語委員会ジュラ語小委員会によって統制されている。この小委員会は1971年7月15日に設立され、翌16日、ジュラ語アルファベットを定むべく研究を開始した。アルファベットは1973年7月27日に公開され、1979年2月2日に公的地位を得た。後に、借用語用に "c" "j" が追加され、 "sh" が "s" に、"ny" が "ɲ" に改められた。

ジュラ語アルファベット
A B C D E Ɛ F G H I J K L M N Ɲ Ŋ O Ɔ P R S T U V W Y Z
a b c d e ɛ f g h i j k l m n ɲ ŋ o ɔ p r s t u v w y z
音価
a b c d e ɛ f g h i ɟ k l m n ɲ ŋ o ɔ p r s t u v w j z

ブルキナファソにおいて、ジュラ語アルファベットは28文字で構成され、それぞれが単一の音素を表す。正書法では、長母音は二重音字で表され、鼻母音はnを付して表される。

例:

  • /e/ → "e"
  • /eː/→ "ee"
  • /ẽ/ → "en"

声調の表記は、1973年に推奨されたが、実質上使用されていない。2003年発行の転写ガイドでは、この推奨が再度行われることはなかった。声調は辞書関係の場面にのみ付記される。しかしながら、多義性を回避するために、声調の表記が必須となるケースがある。

  • "a"(低)→彼、彼女
  • "á"(高)→あなた方

ンコ文字

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ンコ文字は、マンディング方言連続体専用の表記体系であり、1949年にギニアの教育者ソロマナ・カンテによって考案された。現在、この文字はUnicodeとしてデジタル化されており、ンコ文字によるンコ語(マンディング諸語共通の書記言語)版ウィキペディアも存在する。

方言

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  • Kong Jula (dyu-kon)
  • Dioula Véhiculaire (dyu-dio)
  • Tagboussikan (dyu-tag)

脚注

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  1. ^ その一方で、数世紀にわたる民族形成の過程の中で、ボボ・ジュラッソ、オディエンネ、コングなどの近代的市街地のいくつかのコミュニティが、民族的アイデンティティの一つとしてこの名称を採用するに至った。これらのコミュニティで話されるジュラ語は、リングア・フランカとしてのジュラ語(ブルキナファソからコートジボワールにかけて市場で聞かれるもの)と異なる言語変種であり、共通の特徴を持っている。

関連項目

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外部リンク

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