セドロール: Cedrol)は、三環式セスキテルペンアルコールの一種である。シダーウッドヒバなどの針葉樹精油に含まれる。ポットマジョラム (Origanum onitesからも同定されている[4]。主に香料として利用される[5]スギの葉や材[6]コウヨウザンの材にもセドロールが含まれる[7]

セドロール
識別情報
CAS登録番号 77-53-2
PubChem 65575
ChemSpider 59018
ChEMBL CHEMBL1974890
特性
化学式 C15H26O
モル質量 222.37 g mol−1
外観 純粋なものは無色結晶。純度により、半固体ないしは液体
匂い シダーウッド様香気
密度 1.01 g/mL
融点

86 - 87℃ [2]

沸点

273 °C, 546 K, 523 °F [3]

への溶解度 不溶[1]
有機溶媒への溶解度 アルコール、油類に可溶[1]
危険性
半数致死量 LD50 >5g/Kg(ラット、経口)[1]
関連する物質
関連する異性体 C15H26O
関連物質 セドレン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

セドロールのヒトへの効果については、交感神経系の活動や精神緊張を低下させる作用を有すること[8]、睡眠に早く入り深い眠りが持続すること[9]が報告されている。コウヨウザンの材に含まれるセドロールはヤマトシロアリに対して高い抗蟻活性が認められた[10]。2015年の研究では、摂食後の妊娠した雌の蚊がセドロールに誘引されることから、セドロールを使ったマラリアの運び屋となっている蚊のトラップの可能性が示唆された[11]

用途

編集

シダーウッド油の分留・再結晶により精製され、石鹸洗剤、家庭用品向けのウッディ・スパイス・オリエンタル系調合香料の保留剤として使用される。純粋なものは結晶であるが、市販品は半固体ないし液体であることが多く、凝固点は20℃ないし34℃以上である。「セドレノール」の名称で市販されているものでも、本物質を主成分としていることがある[1]

脚注

編集
  1. ^ a b c d 合成香料 化学と商品知識』p.111
  2. ^ Budavari, Susan, ed. (1996), The Merck Index: An Encyclopedia of Chemicals, Drugs, and Biologicals (12th ed.), Merck, ISBN 0911910123 , 1961
  3. ^ (+)-Cedrolシグマアルドリッチ
  4. ^ Connolly, JD; Hill, RA, ed (1991). Dictionary of Terpenoids. Volume 1 Mono- and sesquiterpenoids. Chapman&Hall. SQ02555. ISBN 0-412-25770-X 
  5. ^ Breitmeier, E (2006). Terpenes: flavors, fragrances, pharmaca, pheromones. Wiley-VCH. pp. 46–47. ISBN 3-527-31786-4 
  6. ^ 上堀美知子、伊藤耕志(2010)スギ材設置内空間におけるテルペン類の調査.大阪環農水研報 3: 1-5.
  7. ^ 加福均三 (1917) . 福州杉の揮発成分.東京化学会誌 38: 563-578.
  8. ^ 四十竹美千代、堀悦郎、八塚美樹ほか4名 (2012). 天然匂い物質“セドロール”の生理学的作用とアロマセラピーへの応用. The Journal of Nursing Investigation 10: 56-63
  9. ^ 山本由華吏、白川修一郎、永嶋義直ほか5名 (2003) 香気成分セドロールが睡眠に及ぼす影響.日本生理人類学会誌 8(2): 69-73
  10. ^ 齋藤聖馬、楠本倫久、橋田光、磯田圭哉、吉村謙一、芦谷竜矢 (2022) コウヨウザン (‘’Cunnighamia lanceolat’’) 心材抽出物のヤマトシロアリに対する活性.木材学会誌 68(4): 172-178
  11. ^ Lindh, JM., Okal, MN., Herrera-Varela, M., Borg-Karlson, AK., Torto, B., Lindsay, SW., Fillinger, U. (2015) Discovery of an oviposition attractant for gravid malaria vectors of the ''Anopheles gambiae'' species complex. Malaria Journal 14:119. DOI: 10.1186/s 12936-015-0636-0

参考文献

編集
  • 印藤元一『合成香料 化学と商品知識』化学工業日報社、2005年。ISBN 4-87326-460-X