タイ国鉄RTS型気動車(タイこくてつRTSがたきどうしゃ)は、1971年に営業運転を開始したタイ国有鉄道メークローン線一般形気動車である。その車番からD9形と呼ばれる場合もある[1]

タイ国鉄RTS型気動車
日本国鉄12系客車などとともに留置される
RTS型の制御動力車(D13号車)
マップカバオ駅にて
基本情報
運用者 タイ国有鉄道
製造所 東急車輛
製造年 1971年
製造数 制御動力車 8両
中間付随車 8両
投入先 メークローン線
主要諸元
軌間 1,000 mm
最高運転速度 70 km/h
車両定員 制御動力車 84名(座席数30)
中間付随車 60名(座席数25)
自重 制御動力車 31.8 t
中間付随車 24.8 t
全長 20,800 mm
全幅 2,748 mm
全高 3,765 mm
機関 カミンズ製NHH220B1
ディーゼルエンジン × 1基
機関出力 220 HP/2,100 rpm
制動装置 自動空気ブレーキ
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導入の経緯 編集

本形式が導入されたメークローン線は、元々私鉄であり一部区間が電化もされていたという経緯や、路線延長が短く折り返しが多い平坦線であるという特徴から、動力分散化が国鉄本線に比べ進んでいた。そのため、国有化され再非電化された後も慣例的にメークローン線専用設計の気動車[注釈 1] が導入されていた[2]。本形式はこれに続いて導入された、メークローン線専用設計車両である。

車両 編集

構造 編集

本形式は本線とは異なるメークローン線の特殊な事情に合わせた特別な設計となっている。本形式は同時期に製造されたRHN型と同じカミンズ製220馬力エンジンを搭載するが、RHN型では1両に2基搭載するのに対して本形式では1両に1基のみの搭載である。これはメークローン線の距離や運転間隔を考慮したものであり、最高速度を70 km/hに落とす[注釈 2] 代わりにギア比を大きくすることで、小さい出力で必要な牽引力を確保している。

車体 編集

タイ国鉄初のオールステンレス車両である。車体側面はコルゲート板が使用され、屋根にはグローブ型ベンチレータが搭載されている。なお、車内はRHN型に準じた仕様である。

  • 制御動力車は貫通扉付で、側扉は片開きで2か所である。全室客室で、全体的に後に登場する本線用THN型NKF型と似た車体である。
  • 中間付随車には車体中央部に荷物室が設けられていて、この荷物室には両開きの側扉が付いている。これ以外に、客室用に片開きの側扉が2か所設けられている。

塗装 編集

製造時は排障器が赤く塗られている以外車体全体が無塗装だった[3] が、その後は車体前面の全体が警戒色として黄色に塗られ、側面は窓下に黄色の細帯を巻いている。

運用 編集

 
ナコンラチャシーマ駅に留置される中間付随車
妻面右下に「TOKYU CAR」の銘板が見える

当初からメークローン線に導入され、他の国鉄各本線に導入されることはなかった。導入時はメークローン線の主力として活躍したが、2000年頃にはNKF型などが導入されたことで既に予備車的な使用方となっており[1]、現在では全車引退している。2019年現在数両が東北本線ナコンラチャシーマ駅マップカバオ駅に留置されているが、全体的に状態はあまり良くない。なお、ナコンラチャシーマ駅に留置されているうちの1両(中間付随車)は窓下の黄色帯が赤色に変更され、また幕板部に青色が追加されているが、使用用途は不明。

注釈 編集

  1. ^ TEIKOKU型、あるいは車番からD形とも。戦後のタイ国鉄初の気動車で1961年帝国車輛製であったが、1970年代までに全車廃車されている。
  2. ^ RHN型の最高速度は90 km/hである。

脚注 編集

  1. ^ a b 『鉄道ピクトリアル』2000年6月号 (No.686) p.108 電気車研究会
  2. ^ 『鉄道ピクトリアル』第686号、電気車研究会、2000年6月、106頁。 
  3. ^ 『オールステンレス車両1000両の歩み』 東急車輛製造株式会社

参考文献 編集

  • 『鉄道ピクトリアル』第686号、電気車研究会、2000年6月、107-108頁。 

関連項目 編集

外部リンク 編集

タイ国鉄のディーゼル・カー