タトラK2 > タトラK3R-N

タトラK3R-Nは、チェコで使用される路面電車車両の1形式。チェコスロバキア時代に製造された連接車タトラK2を改造した車両で、中間に低床構造を有する車体が挿入されている[1][2][3][4][5]

タトラK3R-N
タトラK3R-N(1751)
2009年撮影)
基本情報
種車 タトラK2
改造所 パルス・ノヴァ(Pars Nova a.s.)
改造年 2002年 - 2006年
改造数 4両
運用開始 2003年
投入先 ブルノ市電
主要諸元
編成 3車体連接車
軸配置 Bo'Bo'Bo'Bo'
軌間 1,435 mm
電気方式 直流600 V
架空電車線方式
車両定員 279人(着席57人)
折り畳み座席2箇所
車両重量 36.2 t
全長 28,250 mm
全幅 2,500 mm
床面高さ 890 mm(高床部分)
375 mm(低床部分)
台車中心間距離 6,400 mm
7,850 mm(連接台車間)
制御方式 電機子チョッパ制御
制御装置 TVプログレス IV
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6][7]に基づく。
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概要 編集

21世紀の世界各地の路面電車ではバリアフリー促進の一環として、床上高さを下げ車椅子ベビーカーでの乗降が容易となる超低床電車の普及が進められており、チェコの都市・ブルノの路面電車であるブルノ市電でも超低床電車の導入が求められるようになっていた。そこで、ブルノ市電を運営するブルノ公共交通会社チェコ語版は近代化工事を兼ねて既存の車両を改造する形で低床構造を有する車両を導入することを決定し、パルス・ノヴァ(Pars Nova a.s.)との協力の元、2車体連接車タトラK2を改造した車両を製作した。これがK3R-Nである[2][3][4][8]

最大の特徴は中間に新造した低床構造の車体を連結している事で、床上高さを375 mmに下げた中央部分に折戸式の乗降扉が設置されている。この中間車体と前後車体の間にはそれぞれ主電動機を搭載した連接台車が設置されている。また前方車体にも改良が加えられ、前方部分はパトリック・コタスチェコ語版が設計したものに改められている他、速度制御には改造前の足踏みペダルではなく運転台にある手動レバーが用いられる。制御装置にはセゲレツ(Cegelez)が手掛けるIGBT素子を用いたTVプログレスIV(TV Progress IV)が搭載されており、これを含めた電気機器の管理には双方向ネットワークシステム「CAN」が用いられている[1][2][5][6][9]

運用 編集

最初の車両である1751は2002年から改造が行われ、2003年に開催されたブルノ技術博覧会(Strojírenském veletrhu v Brně)で公開された。この車両は同年からブルノ市電で運用に就いた一方、ブルノ公共交通会社は更なる増備を計画し、翌2004年には2両目となる1752が営業運転を開始した。この車両については1751と異なり、中間車体の左側に設置されていた非常扉が存在しない。また、2006年にも2両(1753、1754)が増備されたが、これらの車両は既存の車両のような車体改造ではなく、1752と同型の車体を新造する形での改造が実施された(機器流用、車体更新)。当初は更に18両を導入する予定であったが、これ以上の改造は行われなかった[3][4]

これらのK3R-Nの連接部の台車は、大半の連接台車で見られる連接部分にある中心ピンで車体と結合する構造とは異なり、各車体間とピンで結合する特殊な構造が採用されていた。だが、運行開始以降これらの結合部分に過大な力が働く事による破損が報告され、更に一部車両において別の欠陥も発見された事から、一時は1751を除いた3両が長期に渡って運用から離脱する事態に陥った。しかし設計上の耐用年数にまだ達していない事もあり、ブルノ公共交通会社はこれらの車両の大規模修理を決定し、パルス・ノヴァを買収したシュコダ・トランスポーテーションの協力も受けて2020年に順次全車とも営業運転に復帰している[4]

関連項目 編集

脚注 編集

注釈 編集

出典 編集

  1. ^ a b c TRAMVAJ TYP K3R-N” (チェコ語). Škoda. 2020年2月17日閲覧。
  2. ^ a b c d K3R-N” (チェコ語). Pars Nova a.s.. 2007年10月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月17日閲覧。
  3. ^ a b c d Tomáš Kocman (2005). “Provoz tramvají K3R-N v Brně”. Městská doprava 2: 4-6. 
  4. ^ a b c d e f Libor Hinčica (2020年10月14日). “V Brně vyjely všechny čtyři tramvaje K3R-N. Po 11 letech”. Československý Dopravák. 2021年6月22日閲覧。
  5. ^ a b c Jiří Schreier 2004, p. 2.
  6. ^ a b Jiří Schreier 2004, p. 3.
  7. ^ Jiří Schreier 2004, p. 4.
  8. ^ Jiří Schreier 2004, p. 1.
  9. ^ Martin Hemzal (2008年8月30日). “Rekonstrukce tramvají K2”. BMHD. 2021年6月22日閲覧。

参考資料 編集

  • Jiří Schreier (2004年). MODERNIZOVANÁ NÍZKOPODLAŽNÍ TRAMVAJ K3R-N (PDF) (Report). Czech Raildays. 2021年6月22日閲覧