チェゲト(ロシア語: Чегет)とは、ロシアにおける核のブリーフケース英語版である。チェゲトの名はロシア連邦のカバルダ・バルカル共和国内にそびえるチェゲト山にちなんでいる。ロシアの戦略核兵器の最高指揮及び統制を行う自動システム「カズベク」(こちらも山の名前からきている)の一部である[1]

ロシアの核兵器を制御する「核のブリーフケース」を受け取るプーチン大統領(1999年12月31日)
2012年の大統領就任にあたっての引き継ぎセレモニー

チェゲトは1980年代初頭のアンドロポフ時代に開発され、1985年3月にゴルバチョフが政権を握った時から運用が始まっている[2]。このカバンはコードネーム「カフカズ」と呼ばれる特殊な通信システムとつながっており「核兵器を使用するかどうかについて決断を下すまでの間、政府高官とコミュニケーションをとることを容易にするとともに、順を追って戦略的核兵器の指揮・統制に関わるあらゆる人員や機関を対象とする『カズベク』に接続される」。しかし、このブリーフケースが実際にロシア国防相や参謀長に命令を出せるというのが明らかな事実であるとは一般に考えられていない[3][4]。また、基本的にはロシア連邦大統領に付き従う士官がこのチェゲトを持ち歩く。ロシアはソ連時代と同じく「トリプルキー」方式をとっているため、まず大統領がこのチェゲトに保管されたコードを国防相に送り、国防相が自身のコードと組み合わせて、それをさらに参謀長に送る。参謀長が最後のキーと合わせたコードをミサイル発射施設に送信するのである。このコードの伝達は参謀本部作戦総局が実行・管理を行い、15分から20分ほどで完了するといわれている[5]

1995年1月25日のノルウェーロケット事件英語版では、ノルウェーアメリカの研究者が打ち上げた観測用ロケットが誤認され、報復のためにチェゲトが使われた。これは攻撃に備えて核のブリーフケースが実際に運用された唯一の例である[2]

関連項目編集

脚注編集

  1. ^ Игорь Сутягин (1999年3月15日). “О дискуссии по поводу планов создания ОГК ССС: не все так однозначно”. Центр по изучению проблем разоружения, энергетики и экологии при МФТИ. 2007年12月25日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2014年11月16日閲覧。
  2. ^ a b David Hoffman (1998年3月15日). “Cold-War Doctrines Refuse to Die”. Washington Post. http://www.washingtonpost.com/wp-srv/inatl/longterm/coldwar/shatter031598a.htm 2014年8月7日閲覧。 
  3. ^ Mikhail Tsypkin (September 2004). “Adventures of the "Nuclear Briefcase"”. Strategic Insights 3 (9). オリジナルの2004-09-23時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20040923072304/http://www.ccc.nps.navy.mil/si/2004/sep/tsypkinSept04.asp. 
  4. ^ Alexander Golts (2008年5月20日). “A 2nd Briefcase for Putin”. Moscow Times. オリジナルの2011年6月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110604040029/http://www.themoscowtimes.com/opinion/article/a-2nd-briefcase-for-putin/362896.html 
  5. ^ Alexander A. Pikayev (Spring–Summer 1994). “Post-Soviet Russia and Ukraine: Who can push the Button?”. The Nonproliferation Review 1 (3). doi:10.1080/10736709408436550. http://cns.miis.edu/npr/pdfs/pikaye13.pdf 2014年8月6日閲覧。.