チャールズ・L・ハーネス

チャールズ・レナード・ハーネス(Charles Leonard Harness、1915年12月29日 - 2005年9月20日)は、アメリカ合衆国SF作家ワイドスクリーン・バロックの作家として評価が高い。

経歴 編集

テキサス州コロラド郡に生まれ、兄の影響で子供の頃からSFファンタジーを愛読し、化学実験やラジオ製作にも熱中した。コネチカット州弁理士業に就く。

1948年に『アスタウンディング』誌に「時間の罠 (Time Trap)」が掲載され作家デビュー。いくつかのSF雑誌に十数編の中短編を発表し、1949年に中長編 Flight into Yesterday を『スタートリング・ストーリーズ』誌に発表(1953年に書籍化)する。この作品について自身はA・E・ヴァン・ヴォークトの影響について「A.E.ヴァン・ヴォートへのトリビュートになるはずだった。」「どれもアクション、謎、サスペンス、超人性があふれている。彼の世界が、多次元の明晰さをともなって読者の眼前に展開する」と述べているが、当時の評判は時代錯誤の冒険活劇といったものだった[1]

1953年に書いた中編The Roseはアメリカでは買い手が付かず、イギリスの『オーセンティック』誌に掲載されたが、以後作家活動を中断、本業の弁理士に専念する。1955年にFlight into Yesterdayが『パラドックス・メン』に改題されてエース・ダブルとして刊行され、デーモン・ナイトからは高い評価を得るが、それ以上は評判になはらなかった。

1964年にブライアン・オールディスが『パラドックス・メン』を再評価してイギリスで再出版し、SF史論『十億年の宴』(1973年)では、この作品のスケールの大きな舞台、想像力に溢れ複雑なプロットに対して「(SFの)十億年の宴のクライマックス」と評し、ハーネスのような作品を「ワイドスクリーン・バロック」と命名した。またマイケル・ムアコックは、1953年のThe Rose の象徴性、観念性を高く評価し、1966年に自身の編集する『ニュー・ワールズ』誌から他の短編2編と合わせて単行本として出版。

1965年に再度執筆を開始し、いくつかの中短編と、長編 The Ring of Ritornel を執筆。しばらく休筆の後、1974年から執筆を再開、1977年に本業を退職し執筆に専念[2]。1977年に『ウルフヘッド (Wolfhead)』を発表。1984年にジョージ・ゼブロウスキーによる『現代SFの古典』全10巻の1冊として『パラドックス・メン』が加筆されて刊行。1999年には、『パラドックス・メン』、The Ring of RitornelFirebirdDrunkard's Endgame(新作)の長編4作の合本Ringsが刊行された。

受賞等 編集

作品 編集

長編 編集

  • 『パラドックス・メン』Flight into Yesterday 1953年(改題The Paradox Men 1955年)(中村融訳、竹書房文庫) 2019年
  • The Rose 1966年(中編「現実創造」The New Real、短編The ChessPlayersを併載)
  • The Ring of Ritornel 1968年
  • 『ウルフヘッド』Wolfhead 1978年(秦新二訳、サンリオSF文庫 23-A) 1979年
  • The Catalyst 1980年
  • Firebird 1981年
  • The Venetian Court 1982年
  • Redworld 1986年
  • Krono 1988年
  • Lurid Dreams 1990年
  • Lunar Justice 1991年
  • Drunkard's Endgame 1999年
  • Cybele, With Bluebonnets 2002年

中短編(日本語訳のあるもの) 編集

脚注 編集

  1. ^ 中村融「訳者あとがき-元祖ワイドスクリーン・バロック」(『パラドックス・メン』竹書房文庫、2019年)
  2. ^ 中村融(『20世紀SF1 1940年代 星ねずみ』河出文庫、2000年)

外部リンク 編集