デュランダル(Durandal)は、フランスのマトラ社(現在のEADS傘下のMBDA社)が開発した滑走路破壊用特殊爆弾航空機搭載爆弾であり、フランス以外にもイスラエルアメリカ(BLU-107として採用)など世界各国で採用された。名前の由来は、『ローランの歌』の主人公ローランの持つ剣『デュランダル』から命名された。

ジェネラル・ダイナミクスF-111 アードバークに搭載されたBLU-107 デュランダル

概要 編集

デュランダルは、低高度からの投下を前提に設計されており、投下されるとパラシュートを開き、姿勢制御および着弾までの時間を稼ぐようになっている。無誘導兵器であるため、進入方向を滑走路沿いにする事で投入タイミングを稼ぐ。

標的の滑走路や誘導路に対して垂直の姿勢をとった段階でパラシュートは切り離され、固体ロケットモーターに点火、900km/h 程に加速し滑走路に突入する。滑走路下の地中に突き刺さった時点で起爆し、地中での爆発により地表爆発よりも大きく修復困難なクレーターを滑走路に造る。このクレーターにより固定翼機の離着陸を不可能にすることで基地機能を麻痺させ、航空部隊を無力化する。

クレーターの大きさは滑走路の状態によるが、深さ5m×直径16mに達する。また、時限信管を取り付け、滑走路の復旧作業中に爆発させて作業を妨害する事も可能である。

デュランダルと従来の遅延信管破砕兵器との最大の違いは、独自の二段式弾頭にある。主弾頭の爆発は滑走路にクレーターを作ると同時に、小型の副弾頭をさらに深部に突入させ、通常1秒の遅延で炸裂させる。これによりクレーターより直径で15m程度広い範囲の滑走路舗装面を最大50cmほど浮き上がらせる効果があり、単純な穴の埋め戻し作業による仮復旧を不可能にする。

復旧作業の困難化を狙った遅延の長時間化は、後期型から採用された。

実戦投入 編集

第三次中東戦争(六日戦争)において、イスラエル国防軍による1967年6月5日の先制攻撃時に、イスラエル空軍の第一次攻撃隊がエジプトシリアヨルダンイラクの空軍基地に対してデュランダルを使用し、滑走路を破壊した。この攻撃によりアラブ諸国空軍戦闘機MiG-17MiG-19MiG-21Su-7ホーカー ハンター)や爆撃機Il-28Tu-16)の半数は離陸不可能となり、機銃掃射や第二次以降の攻撃隊の無誘導爆弾ナパーム弾で破壊され、イスラエル制空権は確固たるものとなった。

デュランダルの実戦使用が1967年の第三次中東戦争であるとの説は長く信じられているが、実際にデュランダルが兵器市場に供給されるようになる10年前の戦争である。この戦争で使用されたのは、イスラエル・フランス共同開発の試作品でありデュランダルとは別物と考えるのが妥当だろう。実際にイスラエル軍が投下した兵器はパラシュートではなくロケットモーターで減速するなどの違いがある。

なお、投下方法については、滑走路に沿ってと表現すると平行に飛行する航空機からの投下を想起させるが、これでは中心を外してしまった場合に1発も滑走路に当たらないことが予想される。実際の運用方式は、平行でも直角でもなく、滑走路と鋭角をなすような直線経路で飛行し、つまり斜めに横切りながら投下することとされている。

要目 編集

  • 全長:2.5m
  • 直径:223mm
  • 全重量:204kg
  • 弾頭:高性能爆薬約15kg

関連項目 編集