ニューシェパード

ニューシェパード2号機

ニューシェパード2号機

ニューシェパード (New Shepard) は、アメリカ合衆国宇宙企業ブルーオリジン社が開発運用する垂直離着陸型再使用型であり、弾道飛行用の有人宇宙船である。ニューシェパードの名前はアメリカ初の宇宙飛行士であるアラン・シェパード宇宙飛行士に因んでいる。

概要 編集

 
ニューシェパードのカプセル

ニューシェパードは、射場から垂直に上昇して約2.5分間のエンジン噴射を行い、約5分間無重力状態で飛行する。その後、クルーカプセルは分離されパラシュートで降下、残りの機体は垂直に降下して着陸するコンセプトである[1]。1回の飛行時間は10分から15分とされる。[2]組み立て工場はワシントン州シアトルの近くにあり、打上げはテキサス州カルバーソン郡郡庁所在地であるバン・ホーン英語版の郊外に建設されたローンチサイト・ワン英語版で実施している。ブルーオリジン社はAmazon.comの創業者であるジェフ・ベゾスの出資により設立された。[3] [4]

2015年に高度100kmへの打ち上げに成功、2021年には初の有人打ち上げにも成功しており、2022年9月現在6回の有人宇宙飛行を実施している。

設計 編集

ニューシェパードは単段式の垂直離着陸機として計画されており、その設計思想はDC-Xとほぼ同じである。質量は54トン、エンジンの推力は1000キロニュートンであり、高度100kmへの商業弾道飛行を目指している。

エンジンは液体酸素液体水素を燃料とするBE-3を使用する。BE-3は垂直離着陸に必要なスロットリング機能を持ち、490kNから89kNまで推力を調整できる。燃料サイクルには、J-2Sロケットエンジンでテストされた、燃焼室で発生したガスでターボポンプを駆動するタップオフ・サイクルが採用されている。BE-3の設計、開発、製造は全てブルー・オリジン社内で行われ、ジョン・C・ステニス宇宙センターで合計30,000秒に上る450回以上の燃焼試験が実施された。[2]

沿革 編集

  • 2006年11月13日に試験機の初飛行に成功し、高度87mに到達した。
  • 2011年8月末には別の新しい試験用の機体の飛行試験中に爆発を起こし失敗した。この飛行では高度14,000mに到達した。この機体が2011年6月頃に垂直離着陸を行う飛行試験に成功した際の映像が2011年11月に公開された[5]
  • 2015年4月29日、ニューシェパードの初打ち上げを実施。機体は高度93.5km、最大速度マッハ3に到達、クルーカプセルの分離ならびに回収に成功した。しかし打ち上げ機については、降下中の油圧系の圧力低下により回収に失敗した。[6]
  • 2015年11月23日、ニューシェパード2号機の初打ち上げ。機体はカーマンラインを超え、宇宙空間とみなされる高度100.5kmに到達、さらに今回はクルーカプセルの回収に加え、打ち上げ機の垂直離着陸も達成した。[7]
  • 2016年1月22日、ニューシェパード2号機の2回目の打ち上げ。この打ち上げでは、前回の打ち上げで回収した機体を整備したものが用いられた。機体は再び高度101.7kmまで到達、その後再度の垂直着陸を果たした。垂直離着陸式のロケットが実際に再使用され、再度宇宙空間に到達したのはこれが史上初となる。[8]
  • 2016年4月2日、ニューシェパード2号機の3回目の打ち上げ。
  • 2016年6月19日、ニューシェパード2号機の4回目の打ち上げ。この打ち上げでは、クルーカプセルのメインパラシュート3つのうち1つが開かなかったという想定でのクラッシュテストが行われた。また、打ち上げの様子が初めてライブ配信された。[9]
  • 2016年10月5日、ニューシェパード2号機の5回目の打ち上げ。
  • 2017年12月12日、ニューシェパード3号機ならびに新型クルーカプセルの初打ち上げ。
  • 2018年4月29日、ニューシェパード3号機の2回目の打ち上げ。
  • 2021年1月14日、ニューシェパードNS-14で乗員カプセルの打ち上げと着陸に成功[10][11]
  • 2021年4月14日、無人飛行(uncrewed mission)で高度106キロに到達[12]
  • 2021年7月20日、初の有人飛行に成功した。ジェフ・ベゾスとその弟のマーク英語版、オランダ出身の18歳のオリバー・デーメン英語版、初の女性宇宙飛行士候補「マーキュリー13」に選ばれながらも宇宙に行けなかった82歳のウォリー・ファンクの4人が搭乗した。デーメンは史上最年少、ファンクは史上最高齡の宇宙飛行士となった。
  • 2022年9月12日、無人の科学ミッションNS-23でエンジントラブルによる初の打ち上げ失敗。緊急脱出システムによりカプセルは無事帰還した。[13]

脚注 編集

  1. ^ http://www.aviationweek.com/aw/generic/story_channel.jsp?channel=space&id=news/awst/2011/09/12/AW_09_12_2011_p39-366720.xml&headline=Blue%20Origin%20Failure%20Unlikely%20Show-Stopper
  2. ^ a b 鳥嶋, 真也 (2015年4月9日). “ブルー・オリジン社、「BE-3」エンジン試験を完了 今年中にもロケット打ち上げか”. sorae.jp. そらえ株式会社. 2015年4月9日閲覧。
  3. ^ Boyle, Alan (2006年1月13日). “Amazon founder unveils space center plans”. MSNBC. http://www.msnbc.msn.com/id/6822763/ 2006年6月28日閲覧。 
  4. ^ David, Leonard (2006年6月15日). “Public Meeting Details Blue Origin Rocket Plans”. Space.com. http://www.space.com/news/050615_blueorigin.html 2006年6月28日閲覧。 
  5. ^ “Short Hop Video”. (2011年11月17日). http://www.blueorigin.com/updates/updates-2011-11-17-video-of-the-short-hop-flight.html 2011年11月20日閲覧。 
  6. ^ Blue Origin’s New Shepard Vehicle Makes First Test Flight” (英語). SPACENEWS (2015年4月30日). 2015年11月25日閲覧。
  7. ^ Blue Origin Makes Historic Rocket Landing” (英語). ブルーオリジン (2015年11月24日). 2015年11月25日閲覧。
  8. ^ 米ブルー・オリジン、ロケットの「再使用」に成功 - 宇宙に到達、着陸にも”. マイナビ (2016年1月25日). 2016年1月31日閲覧。
  9. ^ 米ブルー・オリジン、ロケット再使用で4回目の打ち上げ・着陸に成功”. マイナビ (2016年6月20日). 2016年6月20日閲覧。
  10. ^ Etherington, Darrell. “ブルーオリジンが2021年初ミッションで乗員カプセルの打ち上げと着陸に成功” (英語). TechCrunch Japan. 2021年2月3日閲覧。[リンク切れ]
  11. ^ ジェフ・ベゾスの宇宙船が打ち上げ成功、年内に「有人飛行」へ”. Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン) (2021年1月15日). 2021年2月3日閲覧。
  12. ^ Spectrum59-4 2022, p. 21.
  13. ^ ブルーオリジン「ニューシェパード」無人打ち上げでエンジントラブル、緊急脱出システムが作動”. Sorae (2022年9月13日). 2022年9月14日閲覧。

参考文献 編集

  • Brooks, Rodney (April 2022). “The Long Road to Overnight Success”. IEEE Spectrum 59 (4). 

関連項目 編集

外部リンク 編集