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ヒアルロン酸

ヒアルロナンの構造。2種類のが交互に連結している。

ヒアルロン酸(ヒアルロンさん、: hyaluronic acid)は、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種。学術上はヒアルロナン(英: hyaluronan)と呼ぶ。生体内に広く分布し軟骨では重要な役割を持つ。

変形性関節症や成人の美容を目的とした注射は、FDAによる医療承認がある[1]。健康食品では膝の違和感や乾燥肌の機能性表示がある。保湿成分として化粧品に添加される。

目次

物性編集

N-アセチルグルコサミングルクロン酸 (GlcNAcβ1-4GlcAβ1-3) の二糖単位が連結した構造をしている。極めて高分子量であり、分子量は100万以上になると言われている。コンドロイチン硫酸など他のグリコサミノグリカンと異なり、硫酸基の結合が見られず、またコアタンパク質と呼ばれる核となるタンパク質にも結合していない。

生体内では、関節硝子体皮膚など広く生体内の細胞外マトリックスに見られる。とりわけ関節軟骨では、アグリカン、リンクタンパク質と非共有結合し、超高分子複合体を作って、軟骨の機能維持に極めて重要な役割をしている。ある種の細菌も同様な構造を持つ糖鎖を合成している。

ヒアルロン酸は、悪性胸膜中皮腫腫瘍マーカーであり、胸水でのヒアルロン酸の検出はこれを示唆する。早老症において尿中ヒアルロン酸濃度が高くなる。肝硬変では血清中のヒアルロン酸濃度が上昇する。

工業生産編集

産業レベルの用途に向けた工業生産では鶏冠(とさか)、臍帯などから良質のヒアルロン酸が単離されるが、最近では乳酸菌連鎖球菌により大量生産される。

利用編集

医療編集

ヒアルロン酸の注射は変形性関節症の治療法のひとつ[2]。追加して、21歳以上での、顔のシワや唇への注射がFDAによって承認されており、この使用法では若々しい外観の維持に使われている[1]。浸透圧保護剤などと組み合わせて、ドライアイに有効とされる[3]

また角結膜上皮障害の治療薬、白内障・角膜移植手術時における前房保持剤として利用するほか、過酸化水素水と混ぜ合わせたものをがん放射線治療増感剤として用いる。

保湿剤編集

化粧品などに保湿成分として添加されるが表面での保湿作用がある[4]。ヒアルロン酸入り化粧水を利用したシャボン玉液がある[5]。これはヒアルロン酸の保水力や粘性の大きさに着目したもので、割れにくいシャボン玉になる。毛糸の手袋や軍手を使用すると、弾ませることができる。

マイクロニードルの技術を使って肌への浸透性を高めている化粧品もある[4]。以前は、痛みを伴う注射でしかヒアルロン酸の皮膚への投与は難しかったが、ヒアルロン酸を微細な針の形状へと加工することで、痛みを感じることなく皮膚から吸収することができる[6]。韓国人女性を対象としたランダム化研究では、週に2回マイクロニードルのヒアルロン酸をあてることで8週間後に目元のシワを改善しており、皮膚刺激も痛みも生じておらず安全であった[7]。ヒアルロン酸のマイクロニードルそれ自体は化粧品として市販され、他の成分を吸収させる医療用のパッチ型ワクチンにもこのヒアルロン酸マイクロニードルの使用が考えられている[8]

経口摂取編集

食べるヒアルロン酸では、乾燥肌が気になるといった機能性表示がある[9]。鶏冠由来ヒアルロン酸では、「膝の違和感の自覚症状」が減ったとして「ひざ関節が気になる方へ」の機能性表示がある[10]

2015年の調査では、ランダム化された二重盲検試験が10研究以上見つかり、膝の痛みを改善する可能性を示している[11]。分子量が1x105を超えるものはほとんど吸収されないが、分子量の減少によって吸収量が増加し、また腸内細菌によって多糖類へと分解されて吸収される[11]

経口摂取による皮膚の水分量増加が報告されている[12]。また、腸管のTLR4受容体に結合することで、自己免疫疾患を抑制する可能性が示唆されている[13]

ヒアルロン酸の基本構造はグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの2糖が直鎖上に交互に結合した繰り返し構造であり、その結合はβ-1,3グリコシド結合およびβ-1,4グリコシド結合で、ヒアルロニダーゼによって加水分解されることが知られている[14]。また、ヒアルロン酸は、既存添加物として厚生労働省に認められている[15]。安全性についてはLD50 2400 mg/kg/day以上(マウス、経口投与)[16]、変異原性試験の陰性[17]が確認されている。

脚注編集

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  1. ^ a b Walker K, Pellegrini MV (2018-1-31). Hyaluronic Acid. PMID 29494047. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK482440/. 
  2. ^ 川口浩「変形性関節症治療の国内外のガイドライン」、『日本関節病学会誌』第35巻第1号、2016年、 1-9頁、 doi:10.11551/jsjd.35.1
  3. ^ Mateo Orobia AJ, Saa J, Ollero Lorenzo A, Herreras JM (2018). “Combination of hyaluronic acid, carmellose, and osmoprotectants for the treatment of dry eye disease”. Clin Ophthalmol 12: 453–461. doi:10.2147/OPTH.S157853. PMC 5846763. PMID 29563769. https://doi.org/10.2147/OPTH.S157853. 
  4. ^ a b 松永由紀子「自己溶解型マイクロニードル技術の化粧品領域への応用」、『Drug delivery system』第30巻第4号、2015年、 371-376頁、 doi:10.2745/dds.30.371
  5. ^ 吉田のりまき「シャボン玉を弾ませよう」『RikaTan』2007年4月号、28-29頁、星の環会
  6. ^ マイクロニードル技術 (生体溶解型マイクロニードル技術)”. グッドデザイン賞 (2015年). 2019年2月10日閲覧。
  7. ^ “Hyaluronic acid microneedle patch for the improvement of crow's feet wrinkles”. Dermatol Ther 30 (6). (November 2017). doi:10.1111/dth.12546. PMID 28892233. 
  8. ^ 権英淑、神山文男「マイクロニードル製品化への道程」 (pdf) 、『薬剤学』第69巻第4号、2009年7月1日、 272-276頁。
  9. ^ 機能性表示食品「ヒアロモイスチャー240」を新発売”. キューピー (2015年5月28日). 2018年7月26日閲覧。
  10. ^ 様式Ⅰ:届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け)” (2017年3月30日). 2018年7月26日閲覧。
  11. ^ a b Oe M, Tashiro T, Yoshida H etal. (January 2016). “Oral hyaluronan relieves knee pain: a review”. Nutr J 15: 11. doi:10.1186/s12937-016-0128-2. PMC 4729158. PMID 26818459. https://nutritionj.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12937-016-0128-2. 
  12. ^ 「乾燥肌に対するヒアルロン酸含有食品の臨床効果」梶本修身ら, 新薬と臨牀, 50(5), p548 (2001)
  13. ^ Asari, Akira and Kanemitsu, Tomoyuki and Kurihara, Hitoshi (2010). “Oral administration of high molecular weight hyaluronan (900 kDa) controls immune system via Toll-like receptor 4 in the intestinal epithelium”. Journal of Biological Chemistry 285 (32): 24751-24758. doi:10.1074/jbc.M110.104950. 
  14. ^ 南山堂、医学大辞典、第19版、p.2040「ヒアルロン酸」(2006)
  15. ^ 既存添加物の安全性評価に関する調査研究, 林裕造, 平成8年厚生科学研究報告書, p82 (1996)
  16. ^ United States National Library of MedicineHyaluronate Sodium
  17. ^ 「ヒアルロン酸ナトリウム(SH)の変異原性試験」,大西瑞男ら, 薬理と治療, 20(3),p767 (1992)

外部リンク編集