ピコビリ藻
ピコビリ藻(Picobiliphyta)は2007年に報告された新たな真核藻類の一群である。細胞径3.0-0.5μmほどのピコプランクトンであり、海洋を漂って生活している。
ピコビリ藻 | |||
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分類 | |||
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不明
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発見の背景編集
1990年代より、ヨーロッパを中心としたプロジェクト“PICODIV”[1]によって、各地でピコプランクトンの調査が行われてきた。この中で、大西洋、地中海、アラスカ付近の北極海やノルウェー沿岸の北海などにおいて未知のピコプランクトンが確認された。後にピコビリ藻と名付けられるこの生物は貧栄養で寒冷な海域に広く分布しており、時に調査対象としたピコプランクトン全体のバイオマスの50%に達したと報告されている。
特徴編集
緑:rRNA(FISHによる)、赤:フィコビリン自家蛍光
ピコビリ藻は非常に小さく、通常の光学顕微鏡で観察する事は困難である。この藻類が最初に認識されたのは、環境サンプルのメタゲノム解析による成果であった。Not らは海水中から様々なピコプランクトンの18s rRNA配列を決定し、系統解析を行った。その結果、既知のどの生物ともクレードを形成しないピコプランクトンの一群が見出されたのである。
次に Not らは、この rRNA 配列を元に蛍光物質で標識したプローブを作成し、FISH法により生物の実体観察を試みた。その結果、この未知の生物はフィコビリンタンパク質を含む色素体様の構造を細胞の中に持っており、従って光合成を行っているであろうと予想された。この結果から生物はピコビリ藻(Picobiliphyta)と命名され、新奇の真核光合成生物として報告されるに至った。また、DAPI による染色実験から、ピコビリ藻の色素体の中にはヌクレオモルフ様の構造も確認されている。この細胞小器官の存在は二次(あるいはさらに高次の)共生による色素体獲得の可能性を示唆しており、ピコビリ藻の系統と進化を考える上で重要な形質として位置づけられている。
関連項目編集
参考文献編集
- Not F, Valentin K, Romari K, Lovejoy C, Massana R, Töbe K, Vaulot D, Medlin LK. (2007). “Picobiliphytes: a marine picoplanktonic algal group with unknown affinities to other eukaryotes.”. Science 315 (5809): 253-5.
- Georg Kääb: Eine neue Welt so klein. Neue Klasse von Eukaryoten entdeckt: Picobiliphyta. In: biologen heute. Nr. 1, 2007, S. 18f., ISSN 1432-8631.