フッ化銅(I)(フッかどう いち、Copper(I) fluoride)は、組成式が CuF と表される無機化合物を指す。

性質 編集

他のハロゲン化銅(I) CuClCuBrCuI と異なり、一般的には CuF は不安定とされる[1]。固体状態や結晶状態で CuF は安定に得られず、速やかに不均化を起こしてフッ化銅(II) (CuF2) と Cu(0) に変わる。一方、CuF分子は気相下には発生させることができる。CuF2 を加熱して CuF を発生させたり、Cu と CF4 や SF6 などのフッ素源からレーザーアブレーション法により CuF を得るなどの手法があり[2]、分光学的な解析が行われている。

適切な配位子を加えた錯体には安定なものがある(例: CuF•(PPh3)3•2ROH[3])。

固体が得られるとする文献 編集

塩化銅(I)フッ化水素などを反応させることにより CuF の固体が得られるという文献が存在する[4]

合成 編集

塩化銅(I)にフッ化水素を1100 - 1200℃で反応させることにより合成される。

性質 編集

赤色の透明結晶で、閃亜鉛鉱型の結晶構造をとる。格子定数はα 4.255Å、結合間隔はCu-F 1.84Åである。乾燥空気中では安定であるが、湿気があるとフッ化銅(II)に変化し、青色を呈する。フッ化水素酸塩酸硝酸には溶けるが、冷エタノールには溶けない。

脚注 編集

  1. ^ 文献例: Soehnel, T.; Hermann, H.; Schwerdtfeger, P. J. Phys. Chem. B 2005, 109, 526-531. DOI: 10.1021/jp046085y、導入部分に記述あり
  2. ^ Tanaka, H.; Hirano, T.; Matsuzaki, A. "Gas-phase chemical reaction of laser ablated copper atom with carbon tetrafluoride in electric field: plasma switching by laser ablation (PLASLA)." Trans. Mater. Res. Soc. Jpn. 2004, 29, 3399-3402.
  3. ^ Chaudhuri, M. K.; Dhar, S. S.; Vijayashree, N. Transition Metal Chemistry 2000, 25, 559-561. DOI: 10.1023/A:1007050908874
  4. ^ 例: 化学大辞典編集委員会 『化学大事典(7)』 共立出版 1987年 873頁

関連項目 編集