ボンベイ (映画)
『ボンベイ』(Bombay)は、1995年に公開されたインドのタミル語ロマンティック・ドラマ映画[3]。マニ・ラトナムが監督を務め、アルヴィンド・スワーミとマニーシャ・コイララが主演を務めた。1992年12月から1993年1月にかけて発生したボンベイ暴動とヒンドゥー教徒、ムスリムの異宗婚を題材としている。本作はインドの政治情勢を背景にした人間関係を描いたラトナム三部作(『ロージャー』『ボンベイ』『ディル・セ 心から』)の2作目である[4]。ヒンディー語、テルグ語、マラヤーラム語吹替版が製作されている。
ボンベイ | |
---|---|
Bombay | |
監督 | マニ・ラトナム |
脚本 | マニ・ラトナム |
製作 |
S・シュリラーム マニ・ラトナム ジャムー・スガーンド |
出演者 |
アルヴィンド・スワーミ マニーシャ・コイララ |
音楽 | A・R・ラフマーン |
撮影 | ラジーヴ・メーノーン |
編集 | スレーシュ・ウルス |
製作会社 | アーラヤム・プロダクション |
配給 |
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公開 |
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上映時間 | 145分[1] |
製作国 |
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言語 | タミル語 |
興行収入 | ₹140,000,000[2] |
『ボンベイ』は最も興行的な成功を収めたタミル語映画の一つであり、批評的にも高い評価を受けており、フィラデルフィア映画祭などの国際映画祭でも上映された。A・R・ラフマーンが手掛けたサウンドトラックはインド史上最も成功したサウンドトラックの一つに挙げられている[5]。
ストーリー編集
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キャスト編集
- シェーカル - アルヴィンド・スワーミ[1]
- シャーイラー・バーノー - マニーシャ・コイララ[1]
- ナラヤナン・ピラーイ - ナーサル[1]
- バーシェール - キッティ[1]
- シャクティ協会代表 - ティーヌー・アーナンド[6]
- ムスリム指導者 - アーカーシュ・クラーナー[6]
- カビール・ナラヤナン - マスター・ハルシャ[1]
- カマル・バーシェール - マスター・リダイ[1]
- 警察官 - A・R・スリニヴァサン[1]
- セルヴァント - クレイジー・ヴェンカテーシュ[1]
- クマール - プラカーシュ・ラージ[1]
- トランスジェンダー - ララパリ[7]
- M・V・ヴァスデーヴァ・ラーオ[1]
- ペリヤ・ターンヴィ - プラモート[1]
- ヴィサラーム - ヴィジャヤ・チャンドリカ[1]
- パンカジャム - パダバーイー[1]
- スジータ(特別出演)[1]
- 「Humma Humma」シーン登場 - ソナリ・ベンドレ、ナゲンドラ・プラサード(アイテム・ナンバー)[8][9]
製作編集
企画編集
『Thiruda Thiruda』の映画音楽のレコーディング中にボンベイ暴動が発生した。マニ・ラトナムは暴動に巻き込まれた少年を題材にしたマラヤーラム語映画の製作を企画し、M・T・ヴァスデヴァン・ナーイルに脚本の執筆を依頼した。この映画はラトナムにとって『Unaru』に次ぐ2作目のマラヤーラム語映画になる予定だった。しかし、企画が途中で中止となり、後にタミル語映画として企画が再始動し、タイトルは「Bombay」に決まった[10]。
ラトナムはヴィクラムとマニーシャ・コイララを起用して写真撮影を行ったが、ヴィクラムは同時期に製作が進行していた『Pudhiya Mannargal』の役作りのために生やしていた髭を剃ることができなかったため、ラトナムは彼の起用を断念した[11]。ラトナムによると、『ボンベイ』は元々政治映画として企画したものではなかったという[12]。マニーシャ・コイララの声はロヒニが吹き替えている[13]。この他、ムスリムのナーサルは映画ではヒンドゥー教徒役、ヒンドゥー教徒のキッティはムスリム役に起用されたが、ラトナムは2人の役柄は意図的にキャスティングしたものと語っている[14][6]。
撮影監督にはラジーヴ・メーノーンが起用された。彼はラトナムからボンベイ暴動を題材にした映画の撮影を打診された際に「可能な限り暴動を美しく撮影する必要がある」と語り、雨の中での撮影を提案した。屋内のシーンはポラチ、屋外のシーンはカサラゴッドとカンヌール県で撮影された。「Kannalane」の歌曲シーンはティルマライ・ナヤッカル・マハル[15]、「Uyire」の歌曲シーンはベカル砦で撮影された[16]。バーブリー・マスジドの破壊シーンは中央映画認証委員会が描写することに難色を示したため、新聞記事と写真での描写に変更された[17][18]。
音楽編集
映画音楽を手掛けたA・R・ラフマーンは『ロージャー』『Thiruda Thiruda』に続いてラトナム監督作品への参加となった。タミル語版の作詞はヴァイラムトゥが手掛け、「Antha Arabi Kadaloram」のみヴァーリが作詞している。サウンドトラックは1500万枚の売上数を記録し、歴代最高販売数を記録したアルバムの一つとなった[19][20]。アルバムはガーディアンの「死ぬ前に聞くべきアルバム1000」の一つに選ばれ[21]、K・S・チスラが歌った「Kannalanae」は「誰もが聞くべき1000曲」の一つに選ばれている[21]。
作品のテーマ編集
ラトナムは『ボンベイ』を「共同社会の調和を描いたポジティブな映画」と表現している。彼によるとボンベイ暴動は作品のテーマではないが、「無力で罪のない男は、自らが作り出したものではない暴力に巻き込まれた」と語っている[6]。
公開編集
1995年3月10日に公開され、同日にテルグ語吹替版『Bombayi』も公開された[22][23]。マレーシアとシンガポールでは宗派対立の描写が問題視され、上映が禁止された[24][25]。
評価編集
興行収入編集
Box Office Indiaによるとヒンディー語版の興行収入は1億4000万ルピー(2019年換算で6億7000万ルピー/940万ドル)を記録し、1995年公開のインド映画興行成績第10位にランクインしている[2]。
批評編集
アナンダ・ヴィカタンは1995年3月19日付けの批評で、53/100の評価を与えている[26]。アーナンド・カンナンはプラネット・ボリウッドに寄稿し、「私は『ボンベイ』をマニ・ラトナムの最高傑作とは呼びません……しかし、良い演技、社会性の高いテーマ、そしてペースの速さは観賞する価値を生み出しています」と批評している[27]。1996年にジェームズ・ベラーディネリは3.5/4の星を与え、「北米ではアピールが限定的で、さらにクオリティーにも疑問符が付くためインド映画の存在は配給業者から無視されることが多いです。しかし、時折素晴らしい映画が国際映画祭の中で栄誉を得ることにより、人々に十分な魅力を持つことを気付かせます。そのような映画の一つに、名監督マニ・ラトナムの14番目の作品である『ボンベイ』があります」と批評している[28]。英国映画協会は『ボンベイ』を「インド映画トップ20」の一つに選んでいる[29]。バンガロール・ミラーは、『ボンベイ』と『愛と哀しみの旅路』の間に類似点があると指摘している[30]。
受賞編集
映画賞 | 部門 | 対象 | 結果 | 出典 |
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第43回ナショナル・フィルム・アワード | ナルギス・ダット賞 国民の融和に関する最優秀映画賞 | マニ・ラトナム | 受賞 | |
最優秀編集賞 | スレーシュ・ウルス | |||
第41回フィルムフェア賞 | 批評家選出最優秀作品賞 | マニ・ラトナム | ||
批評家選出最優秀主演女優賞 | マニーシャ・コイララ | |||
第43回フィルムフェア賞 南インド映画部門 | 最優秀タミル語作品賞 | S・シュリラーム | ||
最優秀タミル語監督賞 | マニ・ラトナム | |||
最優秀タミル語主演女優賞 | マニーシャ・コイララ | |||
最優秀タミル語音楽監督賞 | A・R・ラフマーン | |||
マトリ・シュリー・メディア・アワード | 最優秀作品賞 | マニ・ラトナム | [31] | |
タミル・ナードゥ州映画賞 | 最優秀作詞家賞 | ヴァイラムトゥ | ||
最優秀女性プレイバックシンガー賞 | K・S・チスラ | |||
シネ・ゴールズ・アワード | 最優秀タミル語音楽賞 | A・R・ラフマーン | ||
映画ファン賞 | 最優秀タミル語音楽賞 | |||
カラサーガル・アワード | 最優秀タミル語音楽賞 | |||
エディンバラ国際映画祭 | ガラ・アワード | ボンベイ | ||
政治映画協会賞 | 特別賞 | [32] | ||
エルサレム国際映画祭 | リア・ヴァン・リー・スピリット・フリーダム賞 |
出典編集
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o Rangan 2012, p. 292.
- ^ a b “Box Office 1995”. Box Office India. 2013年10月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年1月24日閲覧。
- ^ “Bombay”. The Times of India. (2008年5月30日). オリジナルの2017年6月12日時点におけるアーカイブ。 2013年8月13日閲覧。
- ^ Pillai, Sreedhar (2008年6月29日). “Tryst with terrorism”. The Times of India. オリジナルの2016年6月23日時点におけるアーカイブ。 2019年5月10日閲覧。
- ^ “Sound of Cinema: 20 Greatest Soundtracks”. BBC Music. BBC (2014年8月19日). 2018年12月25日閲覧。
- ^ a b c d Rai, Saritha (1995年1月15日). “Mani Ratnams Bombay views communalism through eyes of common man”. India Today. オリジナルの2017年9月15日時点におけるアーカイブ。 2017年9月15日閲覧。
- ^ Correspondenthyderabad, N. Rahulspecial (2019年5月17日). “Rallapalli dead”. The Hindu 2019年5月17日閲覧。
- ^ “1997–98 Kodambakkam babies Page”. Indolink. 2016年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年10月4日閲覧。
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- ^ Rangan 2012, p. 147.
- ^ Rangan, Baradwaj (2013年12月1日). “Man of Steel”. The Caravan. オリジナルの2015年1月8日時点におけるアーカイブ。 2014年10月30日閲覧。
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- ^ Rangan 2012, p. 158.
- ^ Teena, L (2012年4月29日). “Thirumalai Nayakar Mahal gets a facelift”. The Times of India. オリジナルの2017年2月17日時点におけるアーカイブ。 2017年2月17日閲覧。
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- ^ Rangan 2012, p. 146.
- ^ “Bombay: The Making of the Most Controversial film of the Decade”. Sunday: 76. (2–8 April 1995) .
- ^ “The "Mozart of Madras" AR Rahman is Performing LIVE in Australia”. SBS. (2017年2月14日) 2020年8月4日閲覧。
- ^ Surajeet Das Gupta, Soumik Sen. “A R Rahman: Composing a winning score”. Rediff.com. 2002年9月21日閲覧。
- ^ a b “100 Best Albums Ever”. The Guardian. 2010年2月3日閲覧。
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- ^ Chatterjee & Jeganathan 2005, p. 158.
- ^ “Malaysia has banned screenings of the film 'Bombay' because...”. UPI. 2020年8月4日閲覧。
- ^ “Bombay”. Independent Cinema Office. 2020年8月4日閲覧。
- ^ “சினிமா விமர்சனம்: பம்பாய் [Movie Review: Bombay]” (タミル語). Ananda Vikatan. (19 March 1995).
- ^ Kannan, Anand. “Bombay”. Planet Bollywood. 2001年7月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月20日閲覧。
- ^ Berardenelli, James (1996年). “Bombay”. ReelViews. 2017年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年10月30日閲覧。
- ^ “Top 10 Indian Films”. BFI (2007年7月17日). 2004年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年10月4日閲覧。
- ^ “Bypassing copycats, Sandalwood style”. Bangalore Mirror. (2012年1月29日). オリジナルの2016年10月9日時点におけるアーカイブ。 2016年11月4日閲覧。
- ^ “1996 : 20th Matrishree Awards” (2013年9月21日). 2013年9月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月4日閲覧。
- ^ “Political Film Society Awards – Previous Winners”. 2009年10月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月4日閲覧。
参考文献編集
- Chatterjee, Partha; Jeganathan, Pradeep (2005) [2000]. Community, Gender and Violence. Permanent Black. ISBN 81-7824-033-5
- Gopalan, Lalitha (2005). Bombay: BFI Film Classics. London: BFI Publishing. ISBN 978-0-85170-956-7
- Rangan, Baradwaj (2012). Conversations with Mani Ratnam. India: Penguin Books. ISBN 978-0-670-08520-0