マリ共和国の地方行政区画

マリ共和国の地方行政区画は、2023年2月22日以降19州(Region)と1つの特別区に分けられる。さらに各州は156の圏(Cercle)に分けられ、間に466の地区(arrondissement)が、その下に最小単位である819のコミューン(Commune)がある[1][2]

2023年以降の州
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現在の行政区画 編集

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州(Région)は第一級行政区画で、19つに区分される。独立時は6州があった。1977年にトンブクトゥ州が、1991年にキダル州が創設され8州となった[3]

2011年12月7日アマドゥ・トゥマニ・トゥーレ政権は閣僚理事会で既存の8州を5年間で段階的に分割し、最終的に19州とする方針を決定した[4]。最初に選ばれたのはタウデニ州メナカ州で、12月14日国民議会で2州を創設する法案が採択された[5]2012年3月2日に採択された地方行政区画法(N°2012-017)によると、以下の19州とバマコに区分される予定であった[6]

しかし2012年1月に新州創設の対象地域となっていた北部地方で紛争が勃発し、トゥーレ大統領も3月のクーデターで失脚した。情勢の悪化と政局の混乱によってタウデニ州とメナカ州の創設は停滞し、ようやく2016年1月19日になって州知事が任命され、10州となった[7]

未設置の9州についても国民議会で議論が行われ、2018年にネット上へ流出した文章では9州にグルマ州を加えた10州が挙がっていた[8][9]2020年の軍事クーデター後、軍事政権は20州のうち13州の州知事に軍人を任命したと報じられた[10]。12月2付けで州知事に任命されたのはバマコを含めた17名で、シカソ州、セグー州、タウデニ州、グルマ州は掲載されていない[11]ソーシャルネットワークサービス上では2020年11月末頃より「20州とバマコ特別区が存在する」という新しい行政協定が流布されているが[12][13]、領土管理省は同行政協定は2008年の草案であり同省は何も発表していないと主張している[14]。またグルマ=ラロー圏の住民は独自の州創設を要望しており、グルマ州については2023年時点でも延期状態にあるという[15][16]

2023年2月22日、新たな地方行政法が採択された。州は2012年の法案を踏襲した19州から構成される。

首都バマコは特別区として州と同等の扱いを受ける。バマコ特別区には圏が無く、7つのコミューンで構成されている。州は州議会によって管理され、州議会議員はコミューン議員から選出される。

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圏(cercle)は第二級行政区画で、幾つかのコミューンが集まって構成し、法人格が付与され独立した財政を有する自治体である。マリ共和国には圏が49存在している。圏議会議員はコミューン議員から選出され5年間の任期となっている。

圏には以下に示す業務を所掌している。

  • 圏の予算と報告。
  • 環境の保護。
  • 圏の領域管理と物権の獲得。
  • 圏にとって重要な施設の管理について政策の作成。次に示す分野が特に重点を置いている。基礎教育、保健センター、幾つかの道路基盤と農業水利。
  • 田園でのアグロフォレストリーに関わる生産活動の組織。
  • 伝統と観光活動の組織。
  • 圏機関および管理業務の組織化。
  • 建設や供給市場およびリース契約その他について。
  • 圏内の特定役務や法律により定められた上限額内での税基準および税率の固定。
  • 資本介入、融資保証および裏書、助成金および手当の保証。
  • マリの共同体と外国の姉妹都市プロジェクトや協力活動。
  • 業務担当者と圏機関の法令適用のあり方。
  • 寄付金、補助金および遺産の承認または拒否。

圏議会は、圏に関する全ての事項について意見を発することができ、国または州の開発プロジェクトの実現のために協議をしなければならない。

バマコ特別区(Bamako) -
カイ州(Kayes) カイ圏(Kayes)、バフーラベ圏(Bafoulabé)、ケニエバ圏(Kéniéba)、キタ圏(Kita)、ディーマ圏(Diéma)、ニオロ・デュ・サエル圏(Nioro du Sahel)、イェリマネ圏(Yélimané)
クリコロ州(Koulikoro) ナラ圏(Nara)、バナンバ圏(Banamba)、カンガバ圏(Kangaba)、コロカニ圏(Kolokani)、クリコロ圏(Koulikoro)、ディオイラ圏(Dioïla)、カティ圏(Kati)
シカソ州(Sikasso) ブグニ圏(Bougouni)、カディオロ圏(Kadiolo)、コロンディーバ圏(Kolondiéba)、クーティアラ圏(Koutiala)、シカソ圏(Sikasso)、ヤンフォリラ圏(Yanfolila)、ヨロッソ圏(Yorosso) 
セグー州(Ségou) ブラ圏(Bla)、バルーエリ圏(Barouéli)、マシーナ圏(Macina)、ニオノ圏(Niono)、サン圏(San)、セグー圏(Ségou)、トミニアン圏(Tominian)
モプティ州(Mopti) バンディアガラ圏(Bandiagara)、バンカス圏(Bankass)、ジェンネ圏(Djenné)、ドゥエンツァ圏(Douentza)、コロ圏(Koro)、モプティ圏(Mopti)、テネンクー圏(Ténenkou)、ユーワルー圏(Youwarou)
トンブクトゥ州(Tombouctou) ニアフンケ圏(Niafunké)、ディレ圏(Diré)、グンダム圏(Goundam)、トンブクトゥ圏(Tombouctou)、グルマ=ラロー圏(Gourma-Rharous)
タウデニ州Taoudénit フーム・アルバ圏(Foum Alba)、アシュラト圏(Achouratt)、アルウーシェ圏(Al-Ourche)、ブージェベア圏(Boudje-Béha)
ガオ州(Gao) アルムストラ圏(Almoustrat)、アンソンゴ圏(Ansongo)、ブーレム圏(Bourem)、ガオ圏(Gao)
メナカ州Ménaka メナカ圏(Ménaka)、オンドラムブーカーヌ圏(Andéramboukane)、イネカール圏(Inékar)、ティダメヌ圏(Tidermène)
キダル州(Kidal) キダル圏(Kidal)、テッサリト圏(Tessalit)、アベイバラ圏(Abeibara)、タンエサッコ圏(Tin-Essako)

コミューン 編集

コミューン(Commune)は第三級行政区画で、国内に703のコミューンが存在している。これについて、都市となっている19の一級コミューンと684の新コミューン(18の都市的コミューンと666の農村コミューン)がある。

最初のコミューンは、フランス領スーダンにやってきたフランス人入植者によって確立される(1918年にバマコを皮切りに1955年にはガオでコミューンが成立している)。1992年、バナンバ、ニオノ、ディレ、ディオイラおよびバンディアガラでコミューンが成立する。

1996年11月4日のコミューン確立法に基づき、旧市街地区を含まない範囲を対象に新しい都市および農村コミューンとして再編成される。

コミューンは直接普通選挙によって選出されたコミューン議会によって運営される。コミューンの首長と議員は被選挙権を持つ地元民から選出され、コミューン事務局を形成する。コミューンの専門分野には児童教育、識字、一次健康管理や出産、地元の重要インフラストラクチャーの管理および環境を含んでいる。

地区 編集

地区(arrondissement)とは、圏とコミューンの間にあるが、圏やコミューンと異なり行政権および行政当局を持たない。これは、単に土地の境界として存在し、管理業務を円滑にするため区分されたものである。一部にはコミューンと地区が一致するところもある。

フラクスィオン 編集

フラクスィオン(Fraction)とは、主に村落に属する住居の断片を構成している。これは、遊牧生活と住居の不安定な形態のため見られるものであり、フラクスィオンはマリ北部で非常に多い。この地帯では、遊牧民達は村落または水源のそばに即座に設置して家族を代表する。他の地方においてフラクスィオンは生産活動のための自家設備(農業や畜産)が実際の姿である。このため、更に南の地方では、フラクスィオンは主に1970年から1973年と1985年に発生した旱魃の結果、北部地方から流入してきたフラニ族の居住者たちの間で作られている。

フラクスィオンはコミューンに含まれており遊牧民の人口を再編成する。

各種統計 編集

  • 新州のタウデニ州とメナカ州はない。
州名 英語(English) フランス語(Français) 州都 人口(2009年) 面積(km²) 人口密度(/km²) 圏数 コミューン数
バマコ特別区 Bamako Capital District Bamako - 1,809,106 252 7,178 - -
カイ州 Kayes Region La région de Kayes カイ 1,996,812 119,743 16 7 129
クリコロ州 Koulikoro Region La région de Koulikoro クリコロ 2,418,305 95,848 25 7 108
シカソ州 Sikasso Region La région de Sikasso シカソ 2,625,919 70,280 37 7 150
セグー州 Ségou Region La région de Ségou セグー 2,336,255 64,621 36 7 118
モプティ州 Mopti Region La région de Mopti モプティ 2,037,330 79,017 25 8 108
トンブクトゥ州 Tombouctou Region La région de Tombouctou トンブクトゥ 681,691 174,600 1 5 52
タウデニ州 Taoudénit Region La région de Taoudénit タウデニ 323,326 4 20
ガオ州 Gao Region La région de Gao ガオ 544,120 89,532 3 4 24
メナカ州 Ménaka Region La région de Ménaka メナカ 81,040 4 9
キダル州 Kidal Region La région de Kidal キダル 67,638 151,430 0.2 4 11
  • 2012年4月6日に独立宣言をしたアザワドは、トンブクトゥ州、キダル州、ガオ州、モプティ州の一部と2つの新州(創設前)から成っていた。

脚注 編集

  1. ^ Nouveau découpage administratif au Mali: 19 régions, 819 communes et 12 712 villages”. ボイス・オブ・アメリカ (2023年2月22日). 2024年4月24日閲覧。
  2. ^ Mali. Document sur le nouveau découpage administratif février 2023”. Malinews tv (2023年2月22日). 2024年4月24日閲覧。
  3. ^ RÉGIONS ET CERCLES DU MALI: 60 ANS DE DÉCOUPAGE”. Bamada.net (2018年11月15日). 2024年4月24日閲覧。
  4. ^ Conseil des Ministres du 7 Decembre 2011”. Journal du Mali (2011年12月8日). 2012年1月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月23日閲覧。
  5. ^ Mali: redécoupage territorial pour lutter contre l'insécurité”. ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI) (2011年12月16日). 2024年4月23日閲覧。
  6. ^ JOURNAL OFFICIEL DE LA REPUBLIQUE DU MALI” (pdf). p. 364 (2012年3月9日). 2024年4月24日閲覧。
  7. ^ Mali : Bamako nomme les gouverneurs des nouvelles régions administratives du Nord”. Jeune Afrique (2016年1月20日). 2024年4月23日閲覧。
  8. ^ Mali: le nouveau découpage administratif au cœur d'une polémique”. RFI (2018年10月12日). 2024年4月23日閲覧。
  9. ^ Législatives au Mali : les nouvelles régions du Nord au cœur de la polémique”. Jeune Afrique (2018年10月18日). 2024年4月24日閲覧。
  10. ^ Mali: nomination massive de militaires à la tête des régions”. RFI (2020年11月26日). 2024年4月23日閲覧。
  11. ^ JOURNAL OFFICIEL DE LA REPUBLIQUE DU MALI” (pdf). pp. 1275-1276 (2020年12月4日). 2024年4月24日閲覧。
  12. ^ 一例、地図は2019年のJeune Afriqueの記事のもの
  13. ^ Nomenclature administrative du Mali : La nouvelle loi crée 20 régions et 10 communes à Bamako”. Maliactu.net (2021年3月3日). 2024年4月24日閲覧。
  14. ^ Réorganisation administrative et territoriale: le projet sur les réseaux sociaux est un ancien document”. Studio Tamani (2021年4月30日). 2024年4月24日閲覧。
  15. ^ Nouveau Découpage administratif et territorial du Mali : Les populations de Gourma Rharous exigent l’érection de leur cercle en région”. Afribone (2021年5月10日). 2024年4月24日閲覧。
  16. ^ LA LUTTE EFFICACE CONTRE LE TERRORISME : PASSE PAR L’ÉRECTION DE GOURMA RHAROUS EN RÉGION”. Bamada.net (2023年3月14日). 2024年4月24日閲覧。

関連項目 編集