ヴァルトラウテさんの婚活事情

ヴァルトラウテさんの婚活事情』(ヴァルトラウテさんのこんかつじじょう)は、電撃文庫アスキー・メディアワークス)より刊行されている鎌池和馬ライトノベルイラスト凪良。担当編集者は三木

ヴァルトラウテさんの婚活事情
ジャンル ラブコメディ
小説
著者 鎌池和馬
イラスト 凪良
出版社 アスキー・メディアワークス
レーベル 電撃文庫
発売日 2012年2月10日
巻数 全1巻
テンプレート - ノート
プロジェクト ライトノベル

概要 編集

『電撃文庫MAGAZINE』Vol.24 - Vol.26に連載された同タイトル作品。連載分(第1~3話)に加えて新章(A.E.01)を加えた続編。また、鎌池和馬10周年企画として刊行された『とある魔術のヘヴィーな座敷童が簡単な殺人妃の婚活事情』における舞台は本作の世界観であり、本作の設定に繋がりが見られる。
本作の刊行当時、当作者の別シリーズ『とある魔術の禁書目録』にて北欧神話を題材として継続的に扱っていく予定であったため、その事前情報を読者に知ってもらおうという意図もあったという[1]

世界観 編集

北欧神話をモチーフにした中世ヨーロッパに近いファンタジー色の世界観が舞台となっている。ただし史実通りの北欧神話と異なり、北欧神話以外の神話や現代の単語を交えたメタ的な設定など、多少のアレンジが加えられている。

登場人物 編集

天界アスガルド 編集

ヴァルトラウテ
本作のヒロイン。「~であるぞ」といった、堅苦しい口調で話す。
ワルキュリエの四女。『機動性』に優れたワルキュリエ。規律の正しさを好み、他者にも自分にも厳しいが、一人の少年によってその印象が覆されることになる。
人間界ミズガルズの少年と別居しながらも新婚生活を送っている。しかし関係は中々進展せず、結婚後もデートと称して散歩やカードゲームや釣りなどを楽しむ程度など未だに初々しい。
ヘイムダル
天界アスガルドの端に設置されている、7本の滑走路ビフレストを司る『番人』。ワルキュリエやその他の神たちを天界から人間界へ、人間界から天界へ移動する際の『転送』を管制する。
口が軽く、つい思ったことを言ってしまう迂闊な性格。基本的にどつかれ役で、職場であるビフレストを他の神々が少年を見物するために占拠されてしまっている苦労人。
ブリュンヒルデ
ワルキュリエの長女にしてリーダー。伝説の戦死者ジークフリートを従える、指揮系統に優れたワルキュリエ。その能力は、ほぼ無敵の力を誇るジークフリートレベルの魂を数十万と同時に操れるほど高い。
夫であるジークフリートを殺害し、さらに割腹自殺を図るなど結婚問題で大きくしくじった過去がある。若干ヤンデレな未亡人。
オーディン
主神にして戦争の神。見た目は40前後くらいの眼帯をしたヒゲのおっさん。フリズスキャルヴという玉座から、長い年月をかけこの世界の歴史を眺めてきた。彼の神槍グングニルは決して敵を射損なわず、貫いた後は自動的に持ち主のもとに戻る。
戦死者の軍団エインヘルヤルを組織し、いずれ来る巨人族との最終戦争ラグナロクに備えている。人間や動物の姿に化けて人間界ミズガルズに赴き、頻繁に殺し合いや戦争を誘発させている。
九つの世界を股にかけて冒険する少年を「稀有な勇者」としてエインヘルヤルに組み込もうとする(=奸計で殺害しようとする)が、その度にヴァルトラウテに叩きのめされている。
フリッグ
軍神オーディンの妻。実質的に彼と同等の権限を持つ。愛と結婚を司る豊穣の女神。見た目は30前後であり、外見年齢がそこで固定されてしまっていることを気にしている。
ヴァルトラウテの良き理解者で、彼女を優しく導くアドバイス役を担っているが、その行動の根幹には「だって面白そうだから」という不純な動機がただよう。
フレイヤ
この世界で最も美しい、豊作と天候を司るツインテールの女神。通称シル(雌の豚)。巨人族にしつこくプロポーズを迫られている。兄はフレイ
全てにおいて天真爛漫で、さらに性にも奔放というフリーダムな性格。無類のアクセサリー好きで、ブリーシンガメンという首飾りが欲しいためにドワーフ4人と寝た経歴がある。自らの美しさについても一点の曇りもない自信を持つ。
トール
主神オーディンに次ぐナンバー2。オーディンを「父上」と呼んで慕っている。巨人族に意地悪で雷槌ミョルニルを隠されて泣いていた。作中でキレたヴァルトラウテとの電撃勝負を行い、雷を扱う神であるにもかかわらず敗北する。
フギンとムニン
2羽のカラス。主神オーディン専用の斥候だが、ヴァルトラウテによって少年との連絡役を負わされ辟易している。
ロキ
悪戯好きの悪神で、『アース神族のジョーカー』とも呼ばれている。アース神族へ所属を鞍替えしたものの、巨人族の血も引いている。外見は非常に優れた容姿の男神で、様々な女神にちょっかいをかけては問題を引き起こしている。
運命の三女神ノルンの予言を覆すことを目的に、様々な暗躍を見せる。その興味は多岐にわたり、巨大狼フェンリルや冥界の女王ヘルの誕生も彼が原因。光神バルドルを冗談で殺したり、収穫の女神シフの金髪をギャグで丸刈りにしたりしている。また、馬に化けた際、巨人の操る別の馬にのしかかられてスレイプニルを孕み、出産している。
北欧神話に全く関係のないギリシャ神話のイカロスの翼を持っている。
イドゥン
豊穣を司る女神。頭にバンダナを巻き、素朴なカントリー系の衣服をベースにしたウェイトレスのような格好をしている。巨乳。
不死の林檎を育てており、アース神族はこれを定期的に食しているために歳を取らず病気にもならない。過剰に摂取すると、一時的に外見上の年齢が若返る。
ゲルヒルデ
ワルキュリエの次女にしてクールビューティー担当のインテリ系軍師。『手数の多さ』に優れたワルキュリエ。操り人形の糸を操作する時に使う木の棒を組み合わせた道具によって、10本の滅雷の槍を同時に操る。戦乙女九人姉妹の中では唯一の眼鏡っ子。
オルトリンデ
ワルキュリエの三女。作中で最も割を喰らっており、物語の終盤まで良いところはない。特殊スキルの説明もなかった。おっぱいはある。
シュベルトラウテ
ワルキュリエの五女。
ヘルムヴィルゲ
ワルキュリエの六女。男か女か分からない名前を気にしている。
ジークルーネ
ワルキュリエの七女。水着はワンピース派。水が怖くて泳げない。
グリムゲルデ
ワルキュリエの八女。どうせなら末っ子になれば個性が出たのに、と苦悩している。
ロスヴァイセ
ワルキュリエの九女であり、要領の良い末っ子。身長170cmで貧乳。『防御力』に優れたワルキュリエ。華奢な体躯に巨大過ぎる鎧をまとっている。その堅牢な装甲は、同系ワルキュリエが放つ滅雷の槍の連発すら耐える。若干あざとい。

人間界ミズガルズ 編集

少年(ジャック=エルヴァン)
本作の主人公。「~なのね」といった、柔らかい口調で話す。
人間界ミズガルズに住んでいる中流階級出身の少年。蜂蜜酒の職人の元で訓練を積んでおり、自分も職人になることを志している。偶然にミズガルズにやってきていたヴァルトラウテに一目惚れをし、プロポーズした。
優しい性格だが意固地なところもあり、自分で決めたことは成就困難であってもやり遂げようとする。純粋無垢ゆえに様々な誤解を発生させる天然キャラ。
「9つの世界を不用意にまたぐと戦が起こる」と信じられており人間は畏怖の念を抱いて他の世界へ近寄らないが、彼は『異界またぎ』に3度も挑戦する等、並々ならぬ行動力を発揮する。
ヨルムンガンド
大蛇。ウトガルザロキの幻術のサポートで猫に化け、雷神トールを騙した経歴がある。
ジークフリート
伝説の戦死者。悪竜の血を浴び、背中の一点以外は無敵とされる英傑。悪竜ファフニールを対竜剣ノートゥングで斬り伏せ、その心臓を食した経歴がある。
一時的とはいえ、9人体制の戦乙女(ワルキュリエ)からブリュンヒルデを切り離して婚姻を結んだ。しかし、彼女の独占によって天界アスガルドの戦力が削がれることを危惧した主神オーディンによって記憶を消す薬を飲まされる。その影響で、妻であるブリュンヒルデに他の男を無理矢理抱かせてしまい、激昂した彼女に背中を槍で貫かれ死亡した。
ラン
海の女神。人間界の少年が釣りをしていた際、釣り針に服が引っかかって裸になってしまう。

冥界ニフルヘイム 編集

ヘル
飢えと寒さで人間界の魂を無限に苦しめる氷の牢獄ニフルヘイムの女王。巨人の血を引き、悪霊の軍勢を組織しているが、褒められるのに弱い。

地下世界ニダヴェリール 編集

ドワーフ
地下世界ニダヴェリールに住む、背丈は低いが武骨な種族。彼らのアイデンティティは、あらゆる『道具』を精製すること。その技術は神であるアース神族にすら真似できない。雷神トールミョルニルや主神オーディングングニルドワーフが作った。
仕事の対価として金銭の大小ではなく労力を貴び、力に物を言わせるアース神族に対しては武具に呪いをかけたりする。

炎魔国ムスペルヘイム 編集

スルト
外洋の果てにある島国、炎魔国ムスペルヘイムの魔王。身長は4m強。最終戦争ラグナロクの折には、死者の爪で作られた巨大船ナグルファルを用いて大量の悪霊や巨人を引き連れて世界を席巻し、燃え盛る剣で9つの世界全てを焼き払うと言われている。
最終戦争ラグナロクにおいて、予言を覆せないと分かった上でなお勝利を求めようと、日々限界以上に肉体と精神の強化を続けている。

用語 編集

戦乙女(ワルキュリエ)
戦を司る神族。主神オーディンの命にて、人間界ミズガルズで命を落とした死者の魂を仕分けし、必要な者だけを天界の館ヴァルハラへ導く役目を与えられている。
主神オーディンによって9人一組のワーグナー式体制によって管理されるが、各個体によって専用の特質を備えている。
状況に応じて変幻自在に性質を変える、緑色の鎧[注 1]を着ている。『滅雷の槍』と呼ばれる、青白い槍の形状をした天罰を武器として扱う。これは数十キロ単位の遠距離攻撃が可能な他、対象との距離を詰める程に連射速度を上げられる特性を有する。
世界樹ユグドラシル
9つの世界を隔てる超巨大な大木であり、その全身でもって地[注 2]と天[注 3]を支えている。
人間界で生まれた魂は、ユグドラシルに畏怖の念を抱いて触れようとはしない。
7本の滑走路ビフレスト
使用者の『存在』を一度バラバラにし、あらゆる空力的制約を無視して9つの異なる世界へ送る。完全な『転送』ではなく、厳密には光速の87%まで加速した上での超高速移動。この際、分解されたワルキュリエの鎧(オーロラ)が夜空に広がることでオーロラが確認されている。アース神族が9つの世界で絶大な力を発揮しているのも、ビフレストを用いた戦力の高速輸送機構が存在しているためだとされる。
巨大船ナグルファル
最終戦争ラグナロクにおいて、多数の悪霊や巨人を乗せて人間界ミズガルズや天界アスガルドへ攻め入るために使われるとされる船。死者の爪で作られる。
より正確には、単なる船というより、移動型の(ムスペルヘイム版)ビフレスト。この船の組み立ての進捗状況でラグナロクまでの大まかなタイムリミットが測れるとされる。
大巨人ユミル
主神オーディンによって殺害され、ユミルの血肉や骨を分解して各々の世界や生物が誕生したとされる。ユミルの殺害前に存在したのはアース神族のみ。

既刊一覧 編集

タイトル 初版発行日(発売日) ISBN
ヴァルトラウテさんの婚活事情 2012年9月10日(同日[2] ISBN 978-4-04-886886-0

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ オーロラの魔法装甲。
  2. ^ 人間界ミズガルズ
  3. ^ 天界アスガルド

出典 編集

  1. ^ 『とある魔術のヘヴィーな座敷童が簡単な殺人妃の婚活事情』のあとがきより
  2. ^ 新刊/既刊一覧>ヴァルトラウテさんの婚活事情”. 電撃文庫公式サイト. KADOKAWA. 2015年7月9日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集