低線量被曝問題
低線量被曝問題(ていせんりょうひばくもんだい)とは、実効線量で概ね100〜200mSv以下の低線量[1]の放射線被曝による生物影響に関する問題を言う。日本においては第五福竜丸事件を契機に、1950年代から原水爆実験の死の灰による低線量被曝が大きな社会問題となった[2]。
環境放射能安全研究年次計画において重点的な研究課題として取り上げられた[3]こともあり、その多くの知見は既に公表[4]・出版[5]されている。
概要
編集被曝による放射線障害は、被曝線量に応じて確定的影響(deterministic effects)[6]と確率的影響(stochastic effects)[7]の二つに分類される[8]。確定的影響については閾値(threshold)と呼ばれる線量が存在しその閾値以下の被曝では確定的影響は発生しない。一方で、確定的影響の閾値以下の被曝でも、確率的影響(具体的には主にガン)が発生する可能性(確率)は残る。
確率的影響は確定的影響とは異なり閾値が存在せず線量に応じて死亡リスクが増加するという直線しきい値無し仮説(Linear no-threshold hypothesis;LNT仮説)と呼ばれるモデルが取られる[9][10]。LNT仮説は、動物実験、放射線療法を受けた患者の調査、広島・長崎の原爆被爆者の追跡調査、その他の被曝に関する疫学調査で統計的に裏付けがされている。しかし、100mSv〜200mSv以下の低線量域においては統計学的に十分なヒトや動物の正確な被曝データが存在しないため統計学的に有意な関係は不明である[11]。
LNT仮説に従えば、どのように低い線量であっても放射線被曝は生体に対してリスクをもたらすと考えるべきである。しかしながら、低線量域における人体への影響が「科学的に」確定されていないことから、100mSv〜200mSv以下の線量域に確率的影響の閾値が存在しそれ以下の被曝は安全だ(リスクが0になる)という意見などが低線量被曝事故のたびに主張されており、結果的にICRPのALARA(アララ;As Low As Reasonably Achievable)の考え方を理解するにあたっての困難をもたらしている。
武谷がまん量とALARA(As low as reasonably achievable)
編集1954年(昭和29年)3月1日に米国はマーシャル諸島のビキニ環礁で第一回の水爆実験を実施したが、その実験に巻き込まれる形で第五福竜丸の乗組員は被曝し、海洋汚染により近辺海域のマグロやカツオが放射能汚染される事態となった。
さらに、水爆実験は大量の放射性物質を大気にまき散らしたため、5月中旬以降梅雨に入ると、全国各所において降雨に高い放射能が検知されることとなった。不安を感じた市民は、飲み水を一升瓶に入れて、各地の保健所へ検査を求め大勢つめかけるなど大きな社会問題となった[12]。
これら事態を受け同年11月に日米放射能会議が開催されたが、漠然とした安全基準が示されるに止まり、市民の不安を取り除くには至らなかった。そのような不安を解消できない状況下において、次第に政府の方針に追従する学者たちを中心に、微量の放射線被曝による影響(確率的影響)については「許容量以下ならば無害である」という確率的影響の閾値として、科学的根拠なしに、許容量概念が利用されるようになっていた[13]。
一方で、急性の放射線障害といった閾値の存在する確定的影響ではない確率的影響について、当時(1950年代中頃)においても、閾値が存在せず被曝線量の総和に比例して障害発生の確率が増えると考える説が世界の専門学者らによって科学的に大体認められてきていた[14]。これはすなわち、許容量以下の被曝であっても人体に対しては有害であることを意味する[15]が、しかしかといって現に受けている被曝を無くす方法はない。
このような一般には納得しがたい状態をうまく説明するものとして、立教大学教授であった武谷三男は、放射線防護のための新しい考え方として、
『許容量』とは安全を保証する自然科学的な概念ではなく、放射線利用の利益とそれに伴う被曝のリスクを比較して決まる社会的な概念であって、”がまん量”とでも呼ぶべきものである[16]。
という許容量のがまん量解釈を提唱した(武谷説)[17]。ここで最も革新的であったのは、現代のICRPによる放射線防護の考え方でいうところの行為の正当化(the justification of practice)の考え方を明確に導入したことであった[18]。
被曝形態 | 線量限度(許容量) | 被曝に伴う利益 | 線量限度以下の被曝をがまんする理由 |
---|---|---|---|
医療被曝 | なし(無制限) | 病気の治癒 | 放射線治療などをせずに病気を進行させてしまうリスクの方が被曝リスクよりも高いため |
職業被曝 | 電離放射線障害防止規則(昭和四十七年労働省令第四十一号)第四条1項:放射線業務従事者の被ばく限度 | 危険手当など | 被曝によるリスクを抱えるに見合った手当を給与に上乗せしてもらえるため[19] |
ICRPによるALARA の考え方
編集一方で、原水爆実験による被曝は日本に限らない国際的な問題であったことから、国際放射線防護委員会(ICRP)もその1958年の勧告[20]において、放射線防護の基本的考えとしてALAP(As Low As Practicable:実用可能な限り低く)と呼ばれる概念を導入した[21]。これは概ね
放射線に対するいかなる被ばくにも白血病その他の悪性腫瘍を含む身体的効果および遺伝的効果を発現させる危険がいくらかあるという慎重な仮定に基づいている。……この仮定は、まったく安全な放射線の線量というものは存在しないということを意味している。委員会は、これは控え目な仮定であり、いくつかの効果の発現には必要な最小線量、つまりしきい線量があるかもしれないことを認めている。しかし、積極的に肯定する知識がないので、低線量でも障害の危険があると仮定するという方針が、放射線防護の基礎として最も合理的である。 — ICRP Publication9 第29項、出典:環境・安全専門部会報告書(環境放射能分科会)
という前提の下で、「被ばく線量は実用可能な限り低くすべきある」(doses be kept as low as practicable)という考え方である[22]。
さらに、ALAPという表現は、様々な検討を踏まえた上で[23]、内容をより明確に表わすため、ICRP Publication 22(昭和48年勧告)において、ALARA(As Low As Reasonably Achievable:合理的に達成できる限り低く)という表現に変更されることとなった[24]。これは、
すべての被曝は社会的、経済的要因を考慮に入れながら合理的に達成可能な限り低く抑えるべきである
という基本精神に則り、被曝線量を制限するという考え方である。「社会的、経済的要因を考慮して」という条件がついていることからわかるように、これは、できるだけ被曝線量は低く抑えようと努力する一方で、低い被曝線量をさらに最小化しようという努力が、その効果に対して不釣り合いに大きな費用や制約、犠牲を伴う場合には、よしとしないというものである[25]。
被曝状況に応じた防護の最適化
編集このALARA(防護の最適化)の考え方を具体的に実行するにあたり、ICRPはその2007年勧告において計画/現存/緊急時という3つの被曝状況(exposure situation)と呼ばれるものを導入し、それら被曝状況に応じた防護の最適化方法などについて定めた[26]。
これによれば、平常時における被曝である計画被曝状況では、線量限度を定めた上でそれを遵守しなくてはならない(例えば、法令などによって定められている公衆の被曝線量1mSv/年など[27])。一方で、緊急時被曝状況が過ぎ去った後の現存被曝状況においては、線量限度は定められず、代わりに「参考レベル」として年間1〜20mSvの間の線量が定められる事になる[28]。
直線しきい値無し仮説(LNT仮説)
編集統計的に検証できない低線量の被曝についても、線量とがんや白血病などの発生確率は比例すると考えるのが直線しきい値無しモデル(LNTモデル)と呼ばれる仮説である。LNTモデルは1977年のICRP勧告第26号において、人間の健康を護る為に放射線を管理するには最も合理的なモデルとして採用された。この勧告では、個人の被曝線量は、確定的影響(急性放射線障害)については発生しない程度、確率的影響(がんや白血病など)についてはLNTモデルで計算したリスクが受容可能なレベルを越えてはならず、かつ合理的に達成可能な限り低く (as low as reasonably achievable, ALARA) 管理するべきであり、同時に、被曝はその導入が正味の利益を生むものでなければならないことを定めている。
- ICRPによるガンのリスク係数
ICRPは、100mSv以下の被曝線量域を含め、被曝線量とその影響の発生率に比例関係があるとするモデル(直線しきい値無し(LNT)仮説)に基づいて放射線防護を行うことを推奨している。このモデルに基づく全世代を通じたガンのリスク係数は100mSvあたり0.0055(100mSvの被曝は生涯のがん死亡リスクを0.55%上乗せする)に相当する[29][30][31]。
ALARAの前提に対する様々な反証の主張
編集ALARAは一つの放射線防護のための考え方であるが、それはあくまで『低線量であっても被曝することは有害である(リスクをもたらす)が、その有害さはあくまで社会的に容認される程度のものである』というドグマに基づいたものである。そのため、仮に、低線量域の被曝に関してそのドグマに反する特異的事象(黒い白鳥[32])が存在すれば[33]ALARAの考え方は社会的に妥当とは言えなくなる。
そのような構造からか、様々な意図の下に様々な人物・団体がこのような黒い白鳥の存在を主張しているが、現在のところALARAの考え方を社会的に覆すには至っていない。
LNT仮説のリスク係数に対する疑念の主張
編集2005年に発表された、世界保健機関の外部組織国際がん研究機関(IARC)のE.Cardisらによる、15か国の原子力発電所等の放射線作業者(約40万人)が受けた外部被曝の健康影響についての疫学研究では、対象となった集団(平均累積線量は19.4mSV、作業者の90%が50mSV以下の累積線量、5%未満が100mSV以上の累積線量、0.1%未満が500mSV以上の累積線量)における、白血病を除くガン死亡に対する過剰相対リスクは1Sv当たり0.97(95%信頼区間 0.14to1.97)、白血病(慢性リンパ性白血病を除く)に対する過剰相対リスクは1Sv当たり1.93(95%信頼区間 <0to8.47)と推定している。また、その推定は、累積線量100mSvの被曝がガン死亡率(白血病を除く)が9.7%(1.4-19.7%)増加することに結びつくだろうということを示唆するとしている。また、リスクの中央推計値に基づいて、このコホートの労働者のガン死亡(白血病を含む)の1-2%が放射線に起因するかもしれないと推定している[34]。この研究について、財団法人放射線影響協会は「これらの表現を妥当とは認めず、低線量放射線による明確な健康影響が見出されたとの性急な解釈、判断は厳に慎しむべきであると考える」としている[35]。読売新聞(2005年6月29日夕刊)は「国際基準で許容される上限(5年間で100ミリ・シーベルト)まで被ばくした場合、がんに対する死亡率が約10%増加すると推計できることがわかった」「上限まで被ばくした従事者はごく一部に過ぎず、一人あたりの累積平均被ばく線量は19ミリ・シーベルトで、こうした平均的なケースでは、がん死亡率は2%ほど増加する可能性が示された」と報道している[36]。
リスクを過小評価しているという批判
編集しきい値はないがICRPはリスクを過小評価しているという批判もある。
欧州放射線リスク委員会の勧告
編集欧州緑の党が設立した民間団体欧州放射線リスク委員会 (ECRR) は2003年勧告の中で、セラフィールド再処理施設の小児白血病の発生率がICRPの基準からの予測値より100倍以上多いと報告している。その上でホットパーティクル仮説(1974 年、タンプリンとコクランによって主張された、放射性物質の微粒子による局所被曝の危険性は全身被曝より高いとする仮説。ICRPは支持していない。)[37][38][39]を採用するならば、現在のLNT仮説は内部被曝や低線量の被曝を過小評価しているため、放射線防護基準はICRPの基準より少なくとも10倍厳しくするべきだと主張している[40]。また同委員会は、国連発表による1945年以降から1989年までの人口に対する被曝線量から、放射線被曝によるガン死亡者数を約6160万人と算出しており、他方、ICRP基準では約117万人となると試算している[41]。
ホットパーティクル仮説がICRP等に採用されない理由は、理論的には、微粒子内部で発生したα線やβ線(特にα線)の一部が微粒子外に出る前に吸収されてしまう現象(自己吸収)による放射線量の減少、および、微粒子近くの細胞が致死線量を超える放射線にさらされること(over kill)により総線量の一部が死滅した細胞内で消費されて生きた細胞に与える障害が減ることである。これらは放射性物質が微粒子状分布でなく均等分布をしている方が生きた障害細胞を多く残しやすいことを意味しており、ホットパーティクル仮説を支持しない。また動物実験データや、放射線障害の知見の少なかった時代に作られたX線造影剤トロトラスト(二酸化トリウムを含むコロイド製剤)を血管内投与された人々などの発癌等のデータは投与放射能量から計算される内部被曝線量で予想される程度かさらに低い発症率を示しているため、ICRP等はホットパーティクル仮説を採用していない[42]。
なお、セラフィールドの小児白血病の過剰発生を説明する説には、火災事故以外の放射性物質のずさんな排出管理による過剰被曝[43]、セラフィールドの労働者だった父親の被曝[44][45]、同定されていないウイルスの感染[46]などがあり、原因は明確ではない[47][48]。
低線量のX線照射
編集K.RothkammとM.Lobrichは、ヒト細胞において、高線量のX線照射によるDNA二本鎖切断は効率的に修復されたが、低線量のX線照射(約1mGy)によるDNA二本鎖切断は数日を経ても修復されなかったと報告し、高線量のX線と低線量のX線に対するヒト細胞の反応が異なることに注意を喚起している。また、X線照射後にヒト細胞が細胞分裂を重ねると、DNA二本鎖切断はX線照射以前の水準に戻るが、これは修復されないDNA二本鎖切断を持つ細胞が除去されることによると推察している[49]。
放射線ホルミシス仮説
編集少量の放射線被曝がもたらす影響について、「むしろ健康によい」と考える者もいる。科学上も過去に何度か「少しの被曝は体内活動を活性化するので健康に良い」という視点で研究が行われたが、そういったものの1つに放射線ホルミシス仮説がある[50]。ミズーリ大学のトーマス・D・ラッキー教授へNASAが宇宙における放射線の宇宙飛行士への身体への影響調査を依頼をし、その調査結果の発表に端を発する。日本では電力中央研究所の放射線安全研究センターによる放射線ホルミシス効果検証プロジェクトに繋がっている。
ペトカウ効果
編集ペトカウ効果は、「液体の中に置かれた細胞は、高線量放射線による頻回の反復放射よりも、低線量放射線を長時間、放射することによって容易に細胞膜を破壊することができる」という現象である[51]。「長時間の低線量放射線被曝の方が短時間の高線量放射線被曝に比べ、はるかに生体組織を破壊する」[52]等とも表現されることもある。ペトカウ効果の発見は、合計被曝線量あるいは線量率とその被曝結果は直線的な関係となる(線形効果、線形閾値なし理論)だろうという、従来のLNT仮説を見直す契機ともなった。
脚注
編集- ^ 虎の巻 低線量放射線と健康影響―先生、放射線を浴びても大丈夫? と聞かれたら (2007) p.109
- ^ 原水爆(1957)、死の灰(1954)、原子力発電(1976)
このとき出てきたのが武谷がまん量(行為の正当化とALARA)の考え方である - ^ 主に、昭和48年の報告書に始まる。
- ^ 放医研(1978)、放医研(1983)、放医研(1999) など
- ^ 放医研(2012)(旧版(2007)の改訂版)
- ^ 放射線被曝による細胞死などによる細胞の機能不全を原因とする障害である。代表的な例としては急性放射線症候群がある。
基本的に線量はGy(グレイ)で表記される。 - ^ 放射線被曝による細胞のDNAの損傷を原因とする障害である。DNAは生体機能として修復されたり、アポトーシスなどにより損傷のあるDNAを持つ細胞の排除などにより影響が出ないこともあり、被曝に対して確率的にしか影響は現れない。主な障害はガンと遺伝的影響である。ただし、遺伝的影響は人に関しては確認されていない。
基本的に線量はSv(シーベルト)で表記される。 - ^ 低線量放射線の健康影響について
- ^ これは、例えば実効線量で1000mSvの被曝をしたときのリスク A は、実効線量で500mSvの被曝をしたリスク B の二倍危険(A = 2 × B)というような被曝線量とリスクの単純な比例関係を主張するモデルである。
さらに、10mSvの被曝をしたときのリスク C は A の100分の1の危険性、1mSvの被曝をしたときのリスク D は A の1000分の1の危険性・・・というように、被曝線量が0にならないとリスクが0にならない、すなわち閾値がない、というモデルでもある。 - ^ 放射線影響の科学的な情報を集約しているUNSCEAR、BEIR(電離放射線の生物学的影響に関する委員会;アメリカ科学アカデミー)、放射線防護の基本的考え方や基準等を勧告してきたICRPでは、低線量・低線量率の放射線影響について、「がんのリスクに関しては、被曝線量に伴って増加すると仮定することが科学的に合理的である」とし、LNT仮説を採用している。ただし、LNT仮説に対しては、生物学的知見を元にした様々な批判は存在する。草間(2005) pp.57-58
- ^ 草間(2007) p.47
- ^ 「ビキニ被ばく」とは
- ^ 原水爆(1957) pp.16-19
- ^ 原子力発電 pp.69-70、原水爆実験 p.28
- ^ ただし、「有害」といっても、仮に障害が発生するとしてもその可能性は極めて小さく社会的に容認し得る程度のものと考えられる程度での有害さである。「線量目標値」についての解説
例えば、まったく怪我をしなくても、故意に肩をぶつけてくる行為は暴行罪の範疇の暴行であり、「暴力はいけない」のモラルとしてはモラル外の行為にあたるようなものである。 - ^ 原子力発電 p.71 の記述をやや変更及び強調を加えた。
- ^ これは、例えば、夏の暑い日において、だいたい30度以上暑い室内にいることは、熱中症や脱水症状を起こして死亡するリスクを統計学的にはいくらか抱えることになるが、クール・ビズにおいてオフィスの室温は「28度」に保つように推奨されている。30度に近い室温28度の状態においては、熱中症や脱水症状を起こして死亡するリスクは全くの0ではないが、社会通念として室温が28度ぐらいまでは大丈夫だろうということもあり、28度まではエアコンをつけるのをがまんするようなものである。
- ^ 「行為の正当化」という概念は放射線防護の世界に限定されない極めて普遍的な概念である。
- ^ 雇用契約を結ぶので、それを結んだ時点でリスクに見合った手当であることを承諾していることになる。
- ^ 世界各国の国内規制もこのICRPの勧告に準じていることが多く、日本国においてもICRPの勧告を尊重している。国際放射線防護委員会(ICRP)新勧告の取入れについて
- ^ ICRPの放射線防護に関する基本的考え方及び線量限度に関する勧告は、初め1959年にICRP Publication(1958年採択)として刊行された。しかしその後、1964年に、1962年までになされた改訂及び修正を加えたICRP Publication6が刊行され、1966年にはさらに広範囲にわたる再検討の結果を踏まえたICRP Publication9(1965年採択)が刊行される形で変化していった。環境・安全専門部会報告書(環境放射能分科会)の注釈1)
- ^ 環境・安全専門部会報告書(環境放射能分科会) 第1節「実用可能な限り低く」(as low as practicable)の考え方
- ^ 武谷三男らも日本の状況についてICRPに資料提供を行った。
- ^ 原子炉施設等安全研究年次計画(昭和51年度-昭和55年度)
- ^ 放射線防護の最適化 -現存被ばく状況での運用-■「放射線防護の最適化」とは
- ^ ICRP103(2007)
- ^ 2011年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所事故が発生した福島県については、計画被曝状況ではなく現存被曝状況であるため、ICRPの考え方に従えば、公衆の線量限度(1mSv/年)は適用外となる。放射線防護の最適化 -現存被ばく状況での運用-
なお、いつ時点で福島県が現存被曝状況に移行したかは不明である。答弁書第四三号 - ^
日本国内では原子力発電所の事故が発生した福島県のみが該当する。
放射線防護の最適化 -現存被ばく状況での運用-
なお、現存被曝状況の細かい運用方法・考え方については、ICRP111において定められている。解説書 - ^ 2009年の死亡データから予測される日本人の生涯がん死亡リスクは約20%(生涯がん罹患リスク〈2005年のデータで予測〉は約50%)である。低線量放射線の健康影響について
- ^ ICRPは1990年勧告において「生体防御機構は、低線量においてさえ、完全には効果的でないようなので、線量反応関係にしきい値を生じることはありそうにない」と述べている。「国際放射線防護委員会 1990年勧告」日本アイソトープ協会 1991年 第62項
- ^ 0.55%上乗せされるというリスクが具体的にどの程度のものであるかについては、以下を参照
- ^ ブラック・スワン(上)
- ^ リスクに関するありとあらゆることに共通して言えることであるが、そのような特異的事象が存在しないことを証明することはできない。
- ^ Risk of cancer after low doses of ionising radiation: retrospective cohort study in 15 countries
- ^ BMJ論文に対する当協会の見解
- ^ 読売新聞(2005年6月29日水曜日夕刊)「国際許容上限被ばくするとがん死亡10%増 原発などの従事者WHOが調査」
- ^ RADIATION STANDARDS FOR HOT PARTICLES
- ^ プルトニウムという放射能とその被曝の特徴
- ^ 原子力教育支援情報
- ^ ECRR2003年勧告の要約 翻訳は美浜の会による
- ^ 欧州放射線リスク委員会 「ECRR 欧州放射線リスク委員会2003年勧告」 ECRR2003翻訳委員会訳、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会、2003年、155頁。
- ^ 放射性物質による内部被ばくについて v3.2 ICRP国内メンバー
- ^ セラフィールド再処理工場からの放射能放出と白血病 原子力資料情報室通信369号(2005年3月1日)
- ^ セラフィールドの男性放射線作業従事者の子ども達における白血病と非ホジキンリンパ腫 International Journal of Cancer, Vol.99(3), P.437-444の概要部分の訳
- ^ セラフィールド再処理工場周辺の小児白血病リスクの増加 父親の放射線被曝労働の影響を再確認 原子力資料情報室通信339号(2002年8月30日)
- ^ How to makeクリニカル・エビデンス -その仮説をいかに証明するか?- 〔第30回〕クラスターする子どもの白血病(5) 週間医学界新聞第2493号、2002年7月8日、医学書院
- ^ セラフィールド再処理工場をめぐる動き 原子力百科事典ATOMICA
- ^ 英国における原子力施設周辺の小児白血病 原子力百科事典ATOMICA
- ^ K.Rothkamm, M.Lobrich, Evidence for a lack of DNA double-strand break repair in human cells exposed to very low x-ray doses“Proceedings National Academy of Sciences USA”, Vol.100,pp.5057-5062,2003
- ^ 草間(2005) p.56
- ^ 肥田舜太郎・鎌仲ひとみ著『内部被曝の脅威 原爆から劣化ウラン弾まで』筑摩書房、ちくま新書、2005年6月、pp.90-91
- ^ 水本和実(広島市立大学広島平和研究所准教授)「広島の64年と今後の課題――核の危険性をアップデートして訴えよ」インテリジェンス・レポート第11号、2009年8月
参考文献
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- (社)日本アイソトープ協会 編『原子力事故または放射線緊急事態後の長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用(ICRP Publication 111)』2008年 。
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- 武谷三男『原水爆実験』岩波書店〈岩波新書〉、1957年。
- 武谷三男(編) 編『死の灰』岩波書店〈岩波新書〉、1954年。
- 武谷三男(編) 編『原子力発電』岩波書店〈岩波新書〉、1976年。
- 原子力安全問題研究会(編) 編『原子力発電の安全性』岩波書店、1975年。
- ICRP111解説書編集委員会(編著)『語り合うためのICRP111』(公社)日本アイソトープ協会、2015年。
- ナシーム・ニコラス・タレブ 著、望月 衛 編『ブラック・スワン—不確実性とリスクの本質(上)』ダイヤモンド社、2009年。
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関連項目
編集- 関連人物