別れの歌 (シュヴァーベン地方民謡)
『別れの歌』(わかれのうた、ドイツ語: Abschied)は、ドイツ民謡で、そのドイツ語歌詞の1行目から『ムシデン』(ドイツ語: Muß i denn)とも呼ばれている。
日本でも明治時代以来よく歌われてきている歌で、日本語では
- 夏目利江訳:『別れ』の題で「さらばさらば、我がふるさと、ふるさと遠く 旅ゆく...」
- 岡本敏明訳:『別れ』の題で「さらば さらば わが友、しばしの別れぞ いまは...」
- 堀内敬三訳:『別れ』の題で「遠く 遠く 家を後に、寂しきたびに立つ我...」
- 山本学治訳:『別れ』の題で『遠い町へ 今日旅立つ、旅立つ おまえを残し...」
- 三輪義方訳(文部省『女学唱歌(二)』、1901年):『やさしの山吹』の題で「清き水に枝ひじて、花咲く山吹あれ...」 [1]
もともとは、ドイツ南西部にあるシュヴァーベン地方のシュヴァーベン語による民謡で、歌詞は兵士が愛する女性を後にして出征して、また故郷へ戻ってくる時には結婚しようという内容である。別説に、ドイツの伝統に従った職人修行に出るため故郷を離れる若者が、恋人へ別れを告げる内容ともいわれる。
現在歌われているドイツ語の歌は、「ローレライ」なども作曲したフリードリヒ・ジルヒャーが採譜・編曲して1827年に発表した本に載っている。彼の友人のハインリッヒ・ヴァグナー( Heinrich Wagner、1783–1863)が歌詞の2番、3番を1824年に付け足したとある。
三番まである歌詞の一番は、次の通り [4]。
ドイツ語歌詞 | 直訳 |
---|---|
Muß i' denn, muß i' denn
Kann i' auch net allweil bei dir sein,
Wenn i' komm', wenn i' komm', |
ぼくはどうしても どうしても
きみといつも一緒にいられないけど、
ぼくが帰ってくる時は、 |
19世紀後半にドイツ軍の軍歌としても取り入れられるようになり、今でも海軍は出港の際に、この曲を演奏する。
20世紀になってマレーネ・ディートリヒ、ナナ・ムスクーリなどが歌っている。アメリカ合衆国のエルヴィス・プレスリーも『Wooden Heart(Wooden Heart)』(日本語題名:さらばふるさと)の題名で、1960年に英語・ドイツ語まじりで歌っているのでも有名である。
なお、日本語出だしが「そののさゆり、なでしこ」で始まる似たような内容の『故郷を離るる歌』も元々は『最後の晩』(Der letzte Abend)というドイツ民謡であったといわれていて、日本語歌詞では「さらばふるさと」が繰り返される。