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吉川 恒夫(よしかわ つねお、1941年(昭和16年) 12月19日[1] - )は、日本のロボット研究者工学博士京都大学)、京都大学名誉教授[19]。ロボットマニピュレータの可操作性 (Manipulability) や動的ハイブリッド制御の提唱者[20]。著書『ロボット制御基礎論』は評価が高く、英語版に相当する“Foundations of Robotics”も世界で読まれている[21]

吉川 恒夫
よしかわ つねお
人物情報
生誕 (1941-12-19) 1941年12月19日(77歳)[1]
居住 日本の旗 日本
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
国籍 日本の旗 日本
出身校 京都大学
学問
研究分野 制御工学ロボット工学
研究機関 京都大学
NASA
立命館大学
博士課程
指導教員
椹木義一[2]
博士課程
指導学生
課程博士 - 杉江俊治[3]、細田耕[4]、永井清[5]、余永[6]、栗栖正充[7]、原田研介[8]、上田淳[9]、金岡克弥[10]、渡辺哲陽[11]、菊植亮[12]
論文博士 - 横小路泰義[13]、井村順一[14]、西田信一郎[15]
学位 工学博士(京都大学)
主な業績 可操作性 (Manipulability)、位置と力の動的ハイブリッド制御
影響を
受けた人物
R.P.ポール[16][17]
影響を
与えた人物
中村仁彦
学会 計測自動制御学会、日本ロボット学会、システム制御情報学会、日本機械学会IEEE
主な受賞歴 日本ロボット学会名誉会員推薦(名誉会長)[18]
公式サイト
Tsuneo Yoshikawa, 吉川恒夫
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京都大学助手、NASAマーシャル宇宙飛行センターNRC準研究員、助教授教授立命館大学教授、 同大学 総合科学技術研究機構 チェアプロフェッサー、日本ロボット学会会長などを歴任し、2013年より立命館大学総合科学技術研究機構 上席研究員。冗長マニピュレータやフレキシブルマニピュレータ、ハンドマニピュレーションの研究でも実績がある。

来歴・人物編集

1941年、大阪[22]の酒販売店の家に生まれる。親からは店を継ぐことを望まれたが、町工場を立ち上げるぐらいの仕事をするのであればという条件で工学部へ進学する[17]京都大学工学部精密工学科で学び、卒業研究は自動制御の研究室で実験系の研究を実施。1964年に精密工学科を卒業し、大学院へ進学。博士課程では数理工学研究科へ移り、椹木義一の元で制御理論の研究に取り組む[23][2]

1969年に学位を取得した後は数理工学科で助手を務め、1970年よりオートメーション施設助教授1973年から2年間、NASAマーシャル宇宙飛行センターにNRC準研究院として滞在。人工衛星のCMG(コントロール・モーメント・ジャイロ英語版)による姿勢制御の研究に取り組む。帰国後は花房秀朗教授の元で助教授として制御工学とロボット工学の研究に従事。冗長性を持つCMGの特異点回避制御を、冗長ロボットの制御に応用していく。

1982年に吉川はパデュー大学のR.P.ポールが著した“Robot Manipulators”に出会い、ロボット工学が体系化されつつあることに驚くとともに、ポールに日本語訳化を申し出る。1983年6月に渡米した吉川はポールを訪問し、翻訳原稿を見せて討論。訳書は1984年にコロナ社から出版された[24][17]

また、吉川は1983年頃に可操作性(Manipulability、当初はManipulatability)、可操作性楕円体英語版 (Manipulability ellipsoid)、可操作度 (Measure of Manipulability:MOM) の概念を提唱し、それらは操作力楕円体や動的可操作性 (Dynamic manipulability) につながっていく。さらに吉川は1984年頃に位置と力の動的ハイブリッド制御を考案する[16]。しかし位置と力のハイブリッド制御は直交性に基づく空間の分割の点で理論的不備が問題になったが[25][26][27]、吉川の動的ハイブリッド制御は一般化座標と一般化力による一般化座標に則ったものであり、直交性に基づく矛盾はなかった[28][27][注 1]

さらに1988年には、可操作性や冗長制御、力制御に関する内容を盛り込んだ『ロボット制御基礎論』を出版する[30]。その後もマスタ・スレーブロボット、ハンドマニピュレーションやフレキシブルマニピュレータなどの研究に取り組み、多くの弟子を育てていく。また、1994年には『現代制御論』、2004年には『古典制御論』といった教科書も執筆している[31]

2005年には京都大学を定年退官。同学名誉教授になるとともに、立命館大学情報理工学部教授に就任[2][1]。立命館大学ではヒューマノイドロボットやジェンガゲームロボット[32]の研究に取り組む。2013年より上席研究員。

受賞歴編集

著作編集

学位論文編集

著書編集

(単著・共著)

  • ロボット制御基礎論コロナ社〈コンピュータ制御機械システムシリーズ 10〉、1988年11月25日。ISBN 978-4-339-04130-9
  • Foundations of Robotics. MIT Press. (1990). ISBN 0262240289. 
  • 吉川恒夫、井村順一『現代制御論』昭晃堂、1994年8月。ISBN 4785690496
  • 『古典制御論』昭晃堂、2004年3月。ISBN 4785690704

(訳書・編書)

学会誌記事編集

(解説)

(講座)

(展望)

代表的な論文編集

(可操作性)

(動的可操作性)

(動的ハイブリッド制御)

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ なお、この議論の過程でハイブリッド制御などの各種力制御法とインピーダンス制御が本質的に等価なものであることが、示されている[27][29]
  2. ^ 受賞論文 - 線形離散時間系に対する最小次元最適フィルタ」『計測自動制御学会論文集』第9巻第5号、1973年、 588-594頁。
  3. ^ 受賞論文 - 花房秀郎、吉川恒夫、中村仁彦「関節形ロボットアームの冗長性の解析とその優先準位を有する作業への応用」『計測自動制御学会論文集』第19巻第5号、1983年、 421-426頁。
  4. ^ 受賞論文 - 横小路泰義、吉川恒夫「マスタ・スレーブ型遠隔操縦システムの操作性」『計測自動制御学会論文集』第26巻第5号、1990年、 572-579頁。
  5. ^ 受賞論文 - 井村順一、杉江俊治、吉川恒夫「非線形システムの内部安定性とL2ゲイン-有界実条件の導出-」『計測自動制御学会論文集』第29巻第6号、1993年、 659-667頁。
  6. ^ 受賞論文 - 横小路泰義、菅原嘉彦、吉川恒夫「画像と加速度計を用いたHMD上での映像の正確な重ね合わせ」『日本バーチャルリアリティ学会論文誌』第4巻第4号、1999年、 589-598頁。
  7. ^ 受賞論文 - 上田淳、吉川恒夫「柔軟ベースを持つマニピュレータの振動モード補償器によるロバスト性の向上」『日本ロボット学会誌』第21巻、2003年、 395-400頁。[36]

出典編集

  1. ^ a b c 吉川恒夫 2005, p. 410.
  2. ^ a b c 京都大学工学広報 2005.
  3. ^ 杉江俊治 (1985-07-23). Analysis and synthesis of linear multivariable servo systems. 博士論文(甲第3359号). 京都大学. http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000184010-00. 日本語題名『線形多変数サーボ系の解析と設計』
  4. ^ 細田耕『フレキシブルアームのモデル化と制御』京都大学〈博士論文(甲第5385号)〉、1993年3月23日。doi:10.11501/3066232
  5. ^ 永井清. Studies on grasping and manipulation by robotic multifingered hands and arm-hand systems. 博士論文(乙第8782号). 京都大学. http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001921616-00. (日本語題名「多指ロボットハンドとアーム・ハンドシステムによる把握と操りに関する研究」、デジタルコレクション
  6. ^ 余永『ロボットによる組立て作業の計画に関する研究』京都大学〈甲第6189号〉、1995年11月24日。doi:10.11501/3107627
  7. ^ 栗栖正充『ロボットによる押し作業に関する研究』京都大学〈博士論文(甲第6398号)〉、1996年3月23日。doi:10.11501/3110534
  8. ^ 原田研介 (1997-03-24). Trajectory Control of Manipulators with Flexibility. 博士論文(甲第6826号). 京都大学. doi:10.11501/3123423. http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I002004150-00. 日本語題名「柔軟性を持つマニピュレータによる軌道制御」
  9. ^ Jun Ueda (2002-03-25). Design and control of stable and high-performance mechatronic systems. 博士論文(甲第9561号). 京都大学. http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003538019-00. 日本語題名「安定化と高性能化を目指したメカトロニクス機器の設計と制御」
  10. ^ Katsuya Kanaoka (2002-09-24). Dynamics Analysis and Trajectory Control of Flexible Manipulators. 博士論文(甲第9796号). 京都大学. http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004051146-00. 日本語題名「フレキシブルマニピュレータの動力学解析と軌道制御」
  11. ^ Tetsuyou Watanabe (2003-03-24). Optimization of grasping by a robotic hand and trajectory design of 3-D.O.F. arm with an unactuated joint. 博士論文(甲第10199号). 京都大学. http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004198298-00. 日本語題名「ロボットハンドによる物体の把持の最適化と非駆動関節をもつ3自由度アームの軌道設計」
  12. ^ Ryo Kikuuwe (2003-07-23). Impedance perception of robots and skill transfer to humans based on position and force information. 博士論文(甲第10429号). 京都大学. http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004252800-00. 日本語題名「位置・力情報に基づいたロボットのインピーダンス知覚と人間への技能教示」
  13. ^ 横小路泰義 (1991-09-24). Analysis and design of master-slave teleoperation systems. 博士論文(乙第7628号). 京都大学. doi:10.11501/3086114. http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001999954-00. 日本語題名「マスタ・スレーブ型遠隔操縦システムの解析と設計」
  14. ^ 井村順一 (1995-01-23). Studies on robust control of nonlinear systems including robot manipulators. 博士論文(乙第8781号). 京都大学. http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I002085016-00. 日本語題名「ロボットマニピュレータを含む非線形システムのロバスト制御に関する研究」、デジタルコレクション
  15. ^ 西田信一郎『宇宙ロボットへの力制御の適用』京都大学〈博士論文(論工博第3819号、乙第11578号)〉、2005年1月24日。
  16. ^ a b 吉川恒夫 2005, p. 409.
  17. ^ a b c インタビュー 2012, p. 865.
  18. ^ 名誉会員”. 学会案内. 日本ロボット学会. 2015年7月4日閲覧。
  19. ^ インタビュー 2012, p. 868.
  20. ^ 吉川恒夫 2005, p. 408.
  21. ^ 中村仁彦「機構学と動力学」『日本ロボット学会誌』第16巻第7号、1998年、 878-881頁。
  22. ^ a b c d Some topics on Haptic Virtual Reality Technology and its Application”. Institut des Systemes Intelligents et de Robotique. 2015年6月29日閲覧。
  23. ^ インタビュー 2012.
  24. ^ 京都大学広報 2005.
  25. ^ 吉川恒夫 1991.
  26. ^ 小菅一弘「力制御法の分類と制御システムの設計法」『日本ロボット学会誌』第9巻第6号、1991年、 751-758頁。
  27. ^ a b c 杉本浩一「位置と力のハイブリッド制御に関する理論的考察」『日本ロボット学会誌』第11巻第3号、1993年、 453-460頁。
  28. ^ 吉川恒夫 2005.
  29. ^ 和田洋、小菅一弘、福田敏男、渡辺桂吾「周波数特性に基づく力制御系の一設計法」『日本機械学会論文集 C編』第60巻第570号、1994年、 577-582頁。
  30. ^ インタビュー 2012, p. 866.
  31. ^ インタビュー 2012, p. 866-867.
  32. ^ AERA 2011.
  33. ^ a b 学会賞受賞者”. 学会賞・各種授賞. 計測自動制御学会. 2015年6月29日閲覧。
  34. ^ 受賞論文 - 論文賞”. 日本バーチャルリアリティ学会. 2015年6月29日閲覧。
  35. ^ 受賞論文 - 1998年度”. 過去の受賞者一覧. 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門. 2015年6月29日閲覧。
  36. ^ 過去の「論文賞(含む特別賞)」一覧(平成 14 年から平成 25 年) (PDF)”. FA財団(旧 ファナックFAロボット財団). 2015年7月3日閲覧。

参考文献編集

外部リンク編集