メインメニューを開く

坂野 仁(さかの ひとし)は、日本の生命科学研究者、神経生物学者、分子生物学者、免疫学者。理学博士。東京大学名誉教授。紫綬褒章受章者[1]福井大学特命教授。

坂野 仁
生誕 日本国 福井県
研究分野 神経科学分子生物学免疫学
研究機関 カリフォルニア大学バークレー校東京大学福井大学
出身校 京都大学藤島高校
博士課程
指導教員
小関治男志村令郎
他の指導教員 岡田節人江口吾朗
博士課程
指導学生
芹沢尚
他の指導学生 加藤英明 (生物化学者)
主な業績 抗体遺伝子再構成の分子機構の解明、嗅覚神経の投射機構の解明、嗅覚神経の「1神経・1受容体」ルールの解明
影響を
受けた人物
東昇利根川進
影響を
与えた人物
審良静男
プロジェクト:人物伝
テンプレートを表示

福井県の商人の家に生まれる[2]。文筆家を志したこともあったが、大病を経て、研究者の進路を選ぶ[2]京都大学小関治男研究室の志村令郎准教授の下でRNAのプロセシングの研究を行い、博士号を取得する[2]。海外に渡り、利根川進研究室でのちにノーベル賞の受賞対象となる抗体遺伝子再構成の分子機構の解明を行う[2]カリフォルニア大学バークレー校教授を勤めた後、帰国し、東京大学嗅覚神経を扱う神経生物学の研究室を主宰する[2][3]。1000個もある嗅覚受容体の中から一つだけが嗅覚神経で選択的に発現されるという「1神経・1受容体」ルールの解明[4][2][5]や、嗅覚神経が嗅球へ秩序だって投射する機構の解明[6][2][7]などを行った。東京大学を退職後、福井大学特命教授となる[8]

経歴編集

逸話・語録編集

  • 大学院生の頃、毎週届く一流誌の論文を誰よりも先に読んで優越感に浸り、研究の最先端に居るような気になっていた。あるとき小関治男に「君、何でもちょっとずつよう知ってるね」と言われ、非常に傷ついた。それを契機に、自分でアイディアを考えることが重要だと気づきそれに専念する事にした。新しい実験計画を色々と考え、既に論文になっている事に気付いてがっかりし、また別のことを考える、という日々を続けた。そのうち次第に、5年後にはこういうテーマで世界の一線の研究が動いているはずだというところまでたどりつくようになった[2]
  • 「自分はこれを解きたいと考えて問いを立てる。そこまでは人の知恵ですね。しかしそこから出てくる結果については我々の予測と知恵を越えた問題で、だからこそ発見が有るのです。」[2]
  • 「教授が反対したくらいで引っ込めるようなアイデアなら、やめときな」[5]
  • 「そもそも他人の目なんか気にしていたらサイエンスはできません。他人がほめようがけなそうが、そんなもの自分の研究には何の助けにもならないと悟って欲しいものです。自分にとって一番怖いもの、即ち自分をだめにするのは自分自身であると私はいつも思っています。」[2]
  • 「かつて進化論や地動説が我々の世界観を大きく変えたように、心の中に生じる様々な葛藤がどのようにして生じるのかを一人ひとりが理解できるようになれば、我々の自分に対する認識も大きく変わってくると思うのです。こうしてヒトがより自由な内面世界に生き、客観的な立場で自分を考えるようになるとすれば、それも科学の人間社会に対する大きな貢献といえるのではないでしょうか。」[2]
  • 「脳のはたらきを研究する時に思うのは、意識、記憶、情念などという言葉に一対一で対応する実体が何であるかがよくわからないということです。昔、学生時代に岡田節人先生が言われた、『生物学において、人間の目に面白く映る現象が重要な原理に一対一で対応しているという保証はない』という言葉は至言ですよ。」[2]
  • 「たまたま利根川進先生がサンディエゴに立ち寄る機会があり、会って話をしてみると、噂に反してとてもチャーミングな人でした。」[2]
  • 「当然学生さん達は、次にはさらにフィードバック制御の詳細を調べるのだと思っていたようです。しかし私は、『その研究は遺伝子発現の問題であって神経科学ではない。詳細に関しては君たちが独立してからゆっくりやればいい』と言ったんです。・・・当時私は研究室のみんなに、『1糸球・1受容体ルールを支える分子機構、即ちOR分子の種類に基づく軸索投射の謎を解くこと以外に興味はない。これが解けなければ先に行けないし、これで負けたら先がない』と宣言しました。常に、解くべき問題が何であるかを明確に示すのがボスの大事な役目です。」[2]
  • サンディエゴ校研究員時代、ボスと大喧嘩して「このラボから学ぶものは何も無い!」と啖呵を切って追い出された[9]
  • カリフォルニア大学バークレー校においては、研究室に夜の9時頃来て朝の5時頃帰るという昼夜逆転の生活をしていた[10]
  • 「(小関治男の話が)東洋の文化はその曖昧さゆえに生物現象をより正確にとらえる事ができるのではないかといった議論だったように思うが、21世紀にその様な生物学の花開く事を期待したい」[11]

脚注編集

  1. ^ 坂野仁名誉教授 紫綬褒章ご受章に寄せて - トピックス - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部”. www.s.u-tokyo.ac.jp. 2019年6月17日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 『常に問いを立て続けて—免疫・嗅覚・そして次は』坂野 仁” (日本語). サイエンティスト・ライブラリー | JT生命誌研究館. 2019年6月17日閲覧。
  3. ^ 分子生物学のフロントを目指して - 研究室探訪 - 理学部ニュース - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部”. www.s.u-tokyo.ac.jp. 2019年6月17日閲覧。
  4. ^ Serizawa, Shou; Miyamichi, Kazunari; Nakatani, Hiroko; Suzuki, Misao; Saito, Michiko; Yoshihara, Yoshihiro; Sakano, Hitoshi (2003-12-19). “Negative feedback regulation ensures the one receptor-one olfactory neuron rule in mouse”. Science (New York, N.Y.) 302 (5653): 2088–2094. doi:10.1126/science.1089122. ISSN 1095-9203. PMID 14593185. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14593185. 
  5. ^ a b 宮道和成. “嗅覚の不思議、その先に魅せられて”. あいみっく Vol.37-1 (2016) 23(23). 2019年6月18日閲覧。
  6. ^ Sakano, Hitoshi (2010-08-26). “Neural map formation in the mouse olfactory system”. Neuron 67 (4): 530–542. doi:10.1016/j.neuron.2010.07.003. ISSN 1097-4199. PMID 20797531. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20797531. 
  7. ^ 嗅覚研究によってヒトの心をのぞく”. 東レ科学振興会. 2019年6月19日閲覧。
  8. ^ 「ジュニア記者」 憧れのオトナに会う 志を持ち、努力し続けて 坂野仁さん 福井大医学部特命教授 鈴木開 記者 福井大附属義務教育学校9年 (本紙元こども記者) | 学校・教育,学校・教育 | 福井のニュース” (日本語). 福井新聞D刊. 2019年6月17日閲覧。
  9. ^ 留学夜話~留学先の選び方 | United Japanese researchers Around the world” (日本語). 2019年6月17日閲覧。
  10. ^ 『自然免疫の点を線につなぐ』審良 静男” (日本語). サイエンティスト・ライブラリー | JT生命誌研究館. 2019年6月19日閲覧。
  11. ^ 文化の相違と学問 J. C. Weil について思い出すこと”. JSI Newsletter 7巻1号、1999. 2019年6月19日閲覧。

外部リンク編集