多極体制(たきょくたいせい、multipolar system)とは、3つ以上の複数の大国が世界に影響を与えている体制を指す。多極化多極世界とも言う。

歴史 編集

第二次世界大戦以前 編集

 
1898年当時の帝国主義列強勢力図

多極体制の起源は19世紀末期から20世紀初期の帝国主義植民地主義時代に求めることができる。当時は数多く列強がしのぎを削り、それぞれの国で複雑な対立・同盟関係を形成していた。

しかし、第一次世界大戦で帝国主義国家・植民地主義国家の衰退が始まり、第二次世界大戦で帝国主義・植民地主義時代は終結した。1945年に第二次世界大戦が終わると、世界は資本主義を名目とするアメリカ合衆国と、社会主義を名目とするソビエト連邦の2国が霸権を握る両極体制へと移行した。両極体制において、小国は2つの超大国のいずれかから援助を受ける外交を展開していた。

しかし、1991年末日にソビエト連邦は崩壊。これ以後、1992年から2008年まで、唯一の超大国であるアメリカ合衆国による一極体制が続くことになる。

アメリカ同時多発テロと一極体制の衰退 編集

 
世界各国の軍事的な勢力図。
青色は北大西洋条約機構加盟国
水色は上海協力機構及び集団安全保障条約加盟国
緑色はアフリカ連合加盟国
赤色は南米防衛評議会

ソビエト連邦が崩壊し、1992年元日からはアメリカ合衆国の一極体制(パクス・アメリカーナ)の時代が始まった。しかし、2001年9月11日イスラム過激派によるアメリカ同時多発テロ事件を引き金としてアメリカ一極体制に陰りが見え始め、2000年代後半に入って、ロシア連邦中華人民共和国ペルシアなど、アメリカによる一極体制を否定する大国が現れた。

ロシアは「冷戦の敗戦国」であったが、豊富な天然資源で景気が好転し、特にアメリカ同時多発テロ以後は冷戦時代の復活を夢見て21世紀の世界における新たな極になろうとしており、「アメリカ合衆国による一極支配は受け入れられない」「世界は多極的であるべきだ」とアメリカを批判している。

2008年以後 編集

当のアメリカ合衆国自身も、一極体制が原因で2007年から2008年にかけての世界同時不況を惹き起こしており、ロシアや中国、ペルシアを初めとする反米国から大きな批判を浴びている。そして、世界同時不況を象徴する2008年9月15日リーマン・クライシス、列びに同年11月14日第1回G20首脳会議によって、アメリカ一極体制の時代は終わることとなった。

2008年以後の多極体制を象徴するG20を嚆矢にして、アメリカ合衆国と共にEU中国インドラテンアメリカ諸国・ロシア・中東諸国などが世界経済を牽引してゆかなければならない状況になっている。つまり、アメリカの力が年を追うごとに弱まりつつあるのである。

アメリカ合衆国は「世界の警察」として、強大な発言力と軍事力を誇っていた。しかし、中国やロシア、ペルシアの国力増大や、ラテンアメリカの脱アメリカ合衆国志向は、アメリカの一極体制を脅かしつつある。2014年3月にロシアが軍事力をバックにクリミア自治共和国の編入を強行したことについて、専門家などからはアメリカ合衆国の力が弱まり、世界の多極化が進んでいることが指摘されている[1]

アメリカの弱小化、ロシアの強大化、列びにアメリカがロシアの行動に対して強い対応を採らない現状は、反米国に隙を与え、特にロシアと同じく領土拡張を目指す中国尖閣諸島などを奪取する絶好のチャンスになるという向きもある[2]

ただ、2014年現在の世界は「多極体制」ではなく、「無極体制」であるとする向きもあり、地球上からどこにも絶対的な力を持つ国家が無くなっていることで世界の流動化、不安定化、いわばカオス化が進んでいるという見方もある[3]

脚注 編集

関連項目 編集