大阪府立西成高等学校

日本の大阪府大阪市西成区にある公立の高等学校

大阪府立西成高等学校(おおさかふりつ にしなり こうとうがっこう、: Nishinari High School)は、大阪府大阪市西成区にある公立総合学科高校。高校生急増期の昭和後期1973年に西成区民の高校誘致運動4万人の署名を受け、府立90番目に新設された[1][2]義務教育レベルも含め「基礎学力」を学び直し[3]、社会人として「考える力」「生き抜く力」を身に付ける「エンパワメントスクール[4]」8校のひとつ[5]知的障害者を受け入れる取り組みが昭和50年代1980年代)から行われ、2006年(平成18年)から知的障害生徒の自立支援コースも設置されている。

大阪府立西成高等学校
大阪府立西成高等学校
2007年平成19年〉8月撮影)
過去の名称 大阪府立第90高等学校
国公私立の別 公立学校
設置者 大阪府の旗 大阪府
設立年月日 1973年昭和48年)12月21日
共学・別学 男女共学
課程 全日制課程
単位制・学年制 単位制
設置学科 総合学科
エンパワメントスクール
学科内専門コース 知的障がい生徒自立支援コース
高校コード 27155B
所在地 557-0062

北緯34度38分49.9秒 東経135度28分56.2秒 / 北緯34.647194度 東経135.482278度 / 34.647194; 135.482278座標: 北緯34度38分49.9秒 東経135度28分56.2秒 / 北緯34.647194度 東経135.482278度 / 34.647194; 135.482278
外部リンク 公式サイト
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概要編集

1971年昭和46年)誕生の黒田革新府政が、高校入試で「十五の春は泣かせない」政策[6]として、大幅に新設した府立高校の一つ[7]1973年度だけで開校13校が計画され各自治体が地元誘致運動を進める中[8]、西成区民の高校誘致運動4万人の署名を受け[2]、大日本紡績(現ユニチカ木津川工場跡地を転用し、府立90番目として設置された[1]

教育課程全日制課程で、普通科として開校したが、平成期の少子化に伴う大阪府教育委員会府立高等学校特色づくり・再編整備計画の対象校となり、2003年度より普通科総合選択制に改編。「人文・社会」「地域・国際」「生活・健康」「福祉・介護」「科学・情報」「芸術・文化」の6つのエリアを、2009年度から「人文・理数」「スポーツ・健康」「福祉・人間」「保育・教育」「IT・キャリア」「造形・表現」の6つのエリアを設置し、また、知的障がい生徒自立支援コースのカリキュラムも改編され、就労やビジネスマナーの修得、基礎学力保障などの時間が設置されていた。

2014年度から総合学科に再び改編。「絆(きずな)」「探(たん)」「礎(いしずえ)」の3つの系列から、多彩な選択科目により様々なことにチャレンジできるとしている。

また、エンパワメントスクール(学び直しの支援教育)として、生徒に1年次で通常1~2時限の時間帯に30分間3時限の「モジュール授業」を導入。週5日間、国語・数学・英語を毎日、中学校の内容に遡って学び直すようになっている[1]

教育理念編集

生徒につけたい4つのチカラ

  1. 基礎学力の徹底定着と潜在能力の発掘
  2. 自らの人生を設計するチカラを育成
  3. 人とつながる協同の営みを通した他者への関心、愛着、信頼感の醸成
  4. ルールを守り、自分の感情をコントロールする、チカラの育成

沿革編集

教育の柱「解放教育(同和教育)」編集

1970年代工場の跡地利用について公営住宅や公園の建設などの構想があった中、子供の将来を優先し「西成区公立高校新設推進協議会」が結成。「西成に普通科の公立高校を」という地域の誘致運動により1974年昭和49年)に開校された。当初から「人権を大切にし、差別やいじめのない学校」を目指し、「解放教育(同和教育)を教育の柱」と位置づけており[9]、「部落解放教育」「在日韓国・朝鮮人解放教育」「障害者解放教育」「女性解放教育」を四つの柱として取り組んでいる[9]

部落解放教育では、部落差別についてホームルーム(HR)での学習に加えて、同和地区を抱える西成浪速住吉浅香部落解放同盟各支部と連携し、解放奨学生集会や地域見学を行なっている[9]

在日韓国・朝鮮人解放教育では、1976年度より「朝鮮語」授業を開講。学校行事の文化祭でもクラブ活動「朝鮮文化研究部」らが「扇の舞」などを披露するほか、中国からの帰国子女フィリピンなど外国籍の生徒も入学しており、国際理解や異文化理解教育にも取り組んでいる[9]

障害者解放教育では、開校当初から障害のある生徒が多数入学しており、4月最初のHRで仲間紹介、9月クラス別HR実施するなど、障害生徒へ理解と“仲間作り”を推進。女性解放教育では、1975年から家庭科の男女共修を行ったり、性差別やセクシャルハラスメントドメスティックバイオレンスなどの問題についてHRで取り組んでいる[9]

反貧困学習編集

長年、四つの柱で取り組んできた西成高校だが、新聞に掲載される事件が2004年平成16年)に2件起きるなど教育困難校ぶりは変わらなかった[10]

大阪府の高校中退(退学)率は2.4%で全国ワースト(全国平均1.5%)だが、西成高校の中退率は20~30%。原因として、授業料や教材費を払えない経済理由はもとより、幼少期からの生活習慣や学習習慣、コミュニケーション力の不足、教育に対する保護者の関心の低さなど「家庭の貧困に因る間接的な影響を受け[2]」る例が多い。校地のある西成区の北西部は、中学生の一人親家庭率が3割、就学援助率5割、生活保護家庭2割となっており[2]、いわゆる「貧困の連鎖」が生まれていた。

そこへ2003年度の普通科総合選択制改編後、「教員も学年や分掌ごとにバラバラな状態」だった西成高校に2005年に着任した教頭の山田勝治と2006年に着任した校長の前比呂子がリーダーシップを執り、生徒に対し煙草遅刻防止・頭髪指導などを徹底。家庭訪問やカウンセラー依頼など本来は中学校で行う生徒指導を徹底。また1年生の「総合的な学習の時間」に「格差の連鎖を断つ」をテーマに授業を行い[10]、近隣の釜ヶ崎あいりん地区で暮らす日雇い労働者や野宿者について学んだり[11]、実際にホームレス(路上生活者)から話を聞く[12]など「反貧困学習」に注力。学校だけでは解決できない格差問題について、「生活に切り込み正面から関わるスタンスを公的に打ち出し」たことで「本校が変わる転機になりました」という[10]

反貧困学習はもとより、校内に「居場所カフェ」を設置。生徒が飲み物を飲みながら気持ちを「のんびり」落ち着き、「ゆったり」と保つことができる「居場所支援」の仕組みで、自分について語り話すことで、考えを整理できる空間となっている。食事抜きで登校する生徒に配慮し、パンとコーヒーを提供する「朝カフェ」も行われている[13]

また、西成区を拠点とする一般財団法人ヒューマンライツ教育財団が西成区で各種の支援事業を展開。2014年から高校中退者の再チャレンジ支援事業として中退者をサポートしたり、大阪府教育委員会の委託のキャリア教育支援事業の一環として西成高校にキャリア教育支援コーディネーターを派遣したりしている[2]

2009年6月には、これら教育実践をまとめた書籍『反貧困学習-格差の連鎖を断つために』(大阪府立西成高等学校 著、解放出版社ISBN 978-4-7592-2143-5)も出版。2021年令和3年)1月25日にはNHK総合テレビジョンドキュメンタリー番組『逆転人生』で『貧困の連鎖を断て! 西成高校の挑戦』と題して放送され、この番組がギャラクシー賞1月度月間賞に選ばれている[14]

年表編集

基礎データ編集

交通アクセス編集

鉄道
  • 南海汐見橋線津守駅より北西へ約220m(徒歩で約3分) - 毎時わずか2往復の運行だが、2014年の学区の廃止後に電車で通う生徒が増え、生徒の約3割が利用している[15]
  • Osaka Metro(地下鉄四つ橋線)花園町駅より西へ約1.7km(徒歩で約22分)
バス

高校関係者と組織編集

関連団体編集

  • 大阪府立西成高等学校同窓会 - 同窓会。固有の団体名は無し。

高校関係者一覧編集

芸能
スポーツ
そのほか関係者

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c 大阪府/きょういくニュース 第192号 9ページ(特色ある学校)”. 大阪府教育委員会 (2018年4月6日). 2021年3月17日閲覧。
  2. ^ a b c d e 高校中退者等の再チャレンジ支援事業報告書”. 一般財団法人ヒューマンライツ教育財団 (2015年3月30日). 2021年3月17日閲覧。
  3. ^ “高校で義務教育学び直し 大阪府立3高「エンパワメントスクール」指定へ 全国一の中退率、不登校者数が背景” (日本語). 産経新聞. (2013年10月24日). https://www.sankei.com/west/news/131024/wst1310240046-n1.html 2021年3月11日閲覧。 
  4. ^ エンパワメントスクールの概要” (日本語). 大阪府教育委員会. 2021年3月11日閲覧。
  5. ^ 義務教育レベルも含め「基礎学力」を学び直す「エンパワメントスクール」は、西成高校をはじめ和泉総合高校成城高校長吉高校布施北高校箕面東高校淀川清流高校の8校
  6. ^ 十五の春(ジュウゴノハル)とは - コトバンク
  7. ^ 故黒田さん(元大阪府知事)偲び お別れする会/不破議長、桂米朝さんらがお別れの言葉/参列の2100人が献花 - 日本共産党
  8. ^ 『創立100周年記念誌』(大阪府立渋谷高等学校2017年
  9. ^ a b c d e 『創立30周年記念誌』(大阪府立西成高等学校「記念誌編集委員会」編、2004年2月)
  10. ^ a b c 連載 キャリア教育で学校を変える。教師が変える。シリーズ・改革者たち第37回 大阪府立西成高校 校長 山田勝治”. キャリアガイダンス(スタディサプリ 進路(旧:リクナビ進学)) (2011年10月1日). 2021年3月17日閲覧。
  11. ^ “反貧困学習:貧困なぜ?授業で学ぶ 大阪・西成高校の取り組み” (日本語). 毎日新聞. (2009年9月25日). http://www.nice.ne.jp/images/090925/090717mainichi.pdf 2021年3月11日閲覧。 
  12. ^ “【関西の議論】官公庁もしのぎを削る…日本版「白熱教室」は根付くか? 増える学校での対話型講義” (日本語). 産経新聞. (2018年6月28日). https://www.sankei.com/west/news/180628/wst1806280003-n1.html 2021年3月11日閲覧。 
  13. ^ 大阪府立西成高等学校/学校紹介”. 大阪府立西成高等学校. 2021年3月17日閲覧。
  14. ^ “高橋一生『岸辺露伴は動かない』ギャラクシー賞月間賞「ハマリ役ばかり」” (日本語). 北國新聞. (2021年2月19日). https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/335791 2021年3月11日閲覧。 
  15. ^ “都会に思わぬローカル線 大阪・南海汐見橋線の歴史(とことん調査隊)” (日本語). 日本経済新聞. (2019年8月13日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48430140Z00C19A8AA1P00/ 2021年3月11日閲覧。 

関連項目編集

外部リンク編集