女性国際戦犯法廷

女性国際戦犯法廷(じょせいこくさいせんぱんほうてい)は、「日本の慰安婦問題についての責任追及」するためという名目で開催された[1][2][3]、「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)や韓国挺身隊問題対策協議会らが中心になった弁護人役も、「証人」に対する反対尋問もない[4]法廷を模した民間団体による抗議活動[5]。 


概要編集

「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)を中心とする団体で構成され、2000年に東京で開催し、2001年にオランダで「最終判決」として要求事項などを発表した。 後にソウル市長となるが秘書へのセクハラが告発されて自殺した朴元淳が韓国代表「検事役」を務めた[5]日本語での副題は「日本軍性奴隷制を裁く2000年女性国際戦犯法廷」、英語での表記:The Women's International War Crimes Tribunal on Japan's Military Sexual Slavery。報道では「模擬法廷」と表現したり、「判決」のように法廷やその関連用語を固有名詞として「 」などで括るなど、一般裁判とは区別されている。この法廷は、韓国政府が慰安婦問題の賠償を求める根拠としているが、法廷を模した民間団体の抗議活動であり、判決に法的強制力もなく、また国際法で認められたものでもない[6]

主催者は、「第二次世界大戦中において旧日本軍が組織的に行った強かん、性奴隷制、人身売買拷問、その他性暴力等の戦争犯罪を、裕仁(昭和天皇)を初めとする9名の者を被告人として市民の手で裁く民衆法廷」としている。2000年には「裕仁は有罪、日本政府には国家責任がある」と判断し、2001年には「最終判決」として内容を公表した[7]。元NHK職員の池田信夫は「女性国際戦犯法廷」は松井やより高橋哲哉池田恵理子などが発起人になった、昭和天皇側を弁護人役無しかつ欠席裁判で判決を出した上に、北朝鮮の工作員だった金虎男が北朝鮮側の「検事役」を務めたこと、NHKが「女性国際戦犯法廷」関係者をチーフ・プロデューサーとしたETV特集をしたことに「主催者がNHKの番組をまるごと1本企画し、天皇に有罪を宣告する前代未聞の事件」と指摘している[1]。元東京大学史料編纂所教授・酒井信彦教授によると、表向きは慰安婦救済とされたが慰安婦問題を口実にして、史実では戦犯ではなかった昭和天皇に、戦争犯罪人の汚名を着せるために開催された。この裁判劇には、日本側のメディアでは朝日新聞とNHKが深く関与していた[3]

2020年に明治学院大学国際平和研究所の後援で女性国際戦犯法廷20年オンライン国際シンポジウムが開催され、判決と証言を次世代に引き継ぐことを確認した[8]

「法廷」の構成編集

主催者編集

法律顧問役編集

女性国際戦犯法廷メンバーのリスト の法律顧問を参照。

その他の関係者・関係団体等編集

また、賛同団体については、「女性国際戦犯法廷」賛同団体 を参照。

「傍聴」について編集

「法廷」内の秩序を保つため、事前に趣旨に賛同した上で「傍聴」を希望する旨の誓約書に署名させ、主催者側の了解が得られた者のみ「傍聴」が認められた[要出典]

「判決」編集

2000年12月12日、本「法廷」の「裁判官」らは「判決・認定の概要」を「言い渡し」、「天皇裕仁及び日本国を、強姦及び性奴隷制度について、人道に対する罪で有罪」とした。証拠は、「慰安所が組織的に設立され、軍の一部であり、当時適用可能な法に照らしても人道に対する罪が構成される」とした。また、「裁判官」らは、「日本が当時批准していた奴隷制度、人身売買、強制労働、強姦等の人道に対する罪に関連する各条約、慣習法に違反している」とした。

反響・評価編集

同「法廷」を取材したNHK教育テレビETV特集「ETV2001  問われる戦時性暴力」が2001年1月の放送前に大きく変更されたことに関し、主催者とNHK等の間で裁判となった。変更された経緯についても各種の報道、意見表明が見られた(NHK番組改変問題を参照)。

「女性国際戦犯法廷」の北朝鮮の検事役を務めた代表者は、報道以前に日本政府から北朝鮮の工作員と認定され入国ビザの発行を止められた人物で、「法廷」自体が「北朝鮮による工作活動」「常軌を逸した極左的プロパガンダ」などと批判を浴びたいわくつきのイベントと指摘されている[2]

諸君!」は各局テレビ番組が、「女性国際戦犯法廷」支持者側の主張に沿った報道をしており、日本国内世論の大多数は彼らに同調しなかったものの、北朝鮮の「検事役」代表であった黄虎男が日本への入国拒否を受けるような北朝鮮の工作員であること、「法廷」自体が「弁護士」役が存在しない上に「証人」への反対尋問もしないという「法廷」と名乗ることと許されないような極左反日プロパガンダイベントをNHKが特集を組んで無批判に報道したことこそが問題である事実を全く報道していないことを批判している[10]

東京大学教授高橋哲哉は、当「法廷」を、日本軍性奴隷制の犯罪をジェンダー正義の観点から裁いたことに加えて、戦前との連続を断つ試みであること、東アジアでの平和秩序構築、過去の克服のグローバル化という観点で評価している。[11] また、法の脱構築を行うところに意味があり、法の暴力性が露呈される試みとして「法廷」は意味をもつとも述べた[12]

安倍晋三は、2005年1月中旬に「女性国際戦犯法廷の検事として、北朝鮮の代表者が2人入っていることと、その2人が北朝鮮の工作員と認定されて日本政府よりこれ以降入国ビザの発行を止められていること」を指摘して、「北朝鮮の工作活動が女性国際戦犯法廷に対してされていた」とする見方を示した[13]。過去に日本放送協会(NHK)職員であった経済評論家の池田信夫も同様の見解を2014年に述べた[14]

東京大学史料編纂所教授酒井信彦は「「東京裁判不十分史観」あるいは「東京裁判でもまだ足りない史観」」による「裁判劇」だと評した[15]

関連文献編集

  • VAWW-NET Japan編『女性国際戦犯法廷の全記録 (シリーズ:日本軍性奴隷制を裁く―2000年女性国際戦犯法廷の記録)』(2002年5月、緑風出版)ISBN 978-4846102067
  • VAWW-NET Japan編『女性国際戦犯法廷の全記録〈2〉 (シリーズ:日本軍性奴隷制を裁く―2000年女性国際戦犯法廷の記録)』(2002年7月、緑風出版)ISBN 978-4846102074
  • 女性国際戦犯法廷国際実行委員会編『日本軍性奴隷制を裁く「女性国際戦犯法廷」判決全文』(2001年12月)[16]


関連項目編集

外部リンク編集

脚注編集

  1. ^ a b c 信夫, 池田 (2014年10月1日). “NHKは昭和天皇に「強姦罪」を宣告した - 『NHKと政治権力』” (日本語). アゴラ 言論プラットフォーム. 2022年8月5日閲覧。
  2. ^ a b INC, SANKEI DIGITAL (2016年9月2日). “【月刊正論】「昭和天皇=レイプ犯」などというデタラメが世界記憶遺産となる悪夢が動いている 明星大特別教授 高橋史朗(2/7ページ)” (日本語). 産経ニュース. 2022年8月5日閲覧。
  3. ^ a b INC, SANKEI DIGITAL (2020年6月28日). “【新聞に喝!】日本人の「精神奴隷」化に終止符を 元東京大学史料編纂所教授・酒井信彦(1/2ページ)” (日本語). 産経ニュース. 2022年8月5日閲覧。
  4. ^ 2001年の反日団体による慰安婦「法廷」 NHKが真面目に報道” (日本語). NEWSポストセブン. 2022年8月5日閲覧。
  5. ^ a b c d 死亡のソウル市長、セクハラ告訴される一方で「女性の人権」で積極的に活動していた” (日本語). ハフポスト (2020年7月10日). 2022年8月5日閲覧。
  6. ^ [1] "In 2000, civic groups from 8 Asian countries including Korea, Philippines, China and Malaysia held the 'Women' International War Crimes Tribunal'in which the testimonies by 64 former comfort women were heard. The court ruled the Emperor of Japan was found guilty and the Japanese government should take the responsibility full reparations."
  7. ^ 主催者公式サイト による。
  8. ^ 【PRIME後援オンラインシンポジウム】女性国際戦犯法廷20年オンライン国際シンポジウム”. 明治学院大学. 2021年5月5日閲覧。
  9. ^ 「黄虎男」写真・グラフィックス・映像一覧:報道写真の共同通信イメージリンク”. 報道写真・ニュース映像なら共同通信イメージリンク. 2022年8月5日閲覧。
  10. ^ a b 諸君!4~6 号 - p57,2005年
  11. ^ 高橋哲哉「女性国際戦犯法廷で裁かれたもの」VAWW-NET Japan編「裁かれた戦時性暴力」(白澤社、2001年)
  12. ^ 『「慰安婦」問題にみるジェンダー・ポリティクス』土野瑞穂(F-GENSジャーナル, 10: 255-264、2008.3)。要は「仮構であったにせよ、このように「判決」されたばあいあなたはどう感じますか、という「法の暴力性」そのものを提示する試みであろうとの趣旨。
  13. ^ 具体的な指摘内容は、主催者が2005年1月中旬の報道番組などにおける安倍晋三の発言、及びコメントに基づくとして発表している こちらの記事 Archived 2006年10月5日, at the Wayback Machine.による。
  14. ^ 池田信夫による記事 NHKの「番組改編問題」についての誤解 2014年02月24日10:28
  15. ^ 【新聞に喝!】日本人の「精神奴隷」化に終止符を 元東京大学史料編纂所教授・酒井信彦(1/2ページ) - 産経ニュース
  16. ^ https://rnavi.ndl.go.jp/mokuji_html/000003982694.html