尾流雲
尾流雲(びりゅううん、Virga)とは、国際雲図帳で定められた雲の副変種の1つ[1]。雲の高度にかかわらず、雲から大量の雲粒が落下すれば見られるので、巻雲、巻積雲、高積雲、高層雲、乱層雲、層積雲、積雲、積乱雲の計8種に見られる。雲の下から筋状や柱状の白っぽい霧のようなものが垂れ下がったように見える。雲の先端が地上に達していないのが特徴。地上に達すれば、降水雲となる。
![]() 高積雲の尾流雲 | |
略記号 | vir |
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類 | すべて |
変種 | 降水雲 |
副変種 | 尾流雲 |
高度 | 地上付近~約15,000 m |
特徴 | 柱状、雲から下に伸びる |
降水の有無 | あり(地上には達しない) |
雨、雪、霰などの降水が雲から落下する途中で、地上に達しないうちに蒸発・昇華したときに発生する。降水現象の1つとして捉えられる場合もある。降水条(こうすいじょう, Fall streaks)とも言う。尾流雲の場合は、地上で降水が観測されなくても、上空を飛行する航空機などは降水を受ける可能性がある。
尾流雲は、降水雲と同様に、虹が見られることがある。
尾流雲が発生している場合、氷晶や水滴が蒸発する際に周囲の大気から熱を奪う。そのため、尾流雲の先端部分の上付近では空気が冷やされて下降気流が発生する。この下降気流はダウンバーストの1種であり、乾燥した大気の上に湿った大気があるときに発生するので「乾いたダウンバースト(ドライ・ダウンバースト)」と呼ばれている。地上のレーダーでは高い高度の尾流雲を観測できない場合があり、航空の安全を脅かすことがあるため注意しなければならないとされる。アメリカなどでは、尾流雲を伴った急激な下降気流によって空気が圧縮されて逆に温度が上がるヒートバースト(Heat burst)も観測されており、猛烈な突風を発生させることが知られている。
また、高積雲などの高度が高い雲では、尾流雲が発生すると、雲がある大気の層が下降気流によって引き下げられて雲が消散してしまうことがある。
元気象庁長官の吉武素二によれば、「Virga」の訳語が「尾流雲」となったのは以下の経緯による。 終戦直後に測候課長であった吉武がInternational Atlas of Clouds and of States of the Skyの翻訳に際してVirgaの訳語が必要になり、ビルガ→ビリュウ→尾流雲と連想し、「尾流雲」という訳語が観測法改訂委員会により認められたので、中央気象台が昭和25年1月に発刊した『地上気象観測法』(暫定版)において初めて使用された[2]。
出典編集
- ^ “Cloud classification summary” (英語). International Cloud Atlas. World Meteorological Organization. 2018年8月22日閲覧。 - 世界気象機関(WMO)による公式サイト
- ^ 水野量「『尾流雲 』の由来を知る吉武素二元気象庁長官からの手紙 (PDF) 」 『天気』第42巻第1号、社団法人日本気象学会、1995年1月、 16頁、2018年7月22日閲覧。
関連項目編集
外部リンク編集
- “Virga” (英語). Glossary of Meteorology. American Meteorological Society(アメリカ気象学会) (2015年4月14日). 2018年8月22日閲覧。
- “お天気豆知識 雲のしっぽ”. バイオウェザーサービス. 2018年7月22日閲覧。