引越し蕎麦

新しく引っ越ししてきた者が近隣に蕎麦を配る習慣

引越し蕎麦(ひっこしそば)とは、新しく引っ越ししてきた者が近隣に蕎麦を配る習慣である。

江戸時代、少なくとも天明年間には江戸に広がっていた習慣上方では存在しなかった。

蕎麦は安かった事と細く長くお世話になりますの意味を込めて、引っ越してきた者が挨拶を兼ね、隣近所(長屋の場合はいわゆる「向こう三軒両隣」の5軒)にはせいろ二枚ずつ、大家には五枚の蕎麦を配った。因みに蕎麦はに引っ越してきたという掛け詞でもあるが、このような洒落を込めた意味合いは、あとから付け加えられたとされる。

この風習が始まるまでは、引越しの際にはを近所に配っていた。江戸期には乾蕎麦は一般的ではなかったし、生の蕎麦や茹でた蕎麦では時間による劣化が起こる。そのため「蕎麦切手」という一種の商品券のようなものを配ることが多かった。

隣人や大家へ挨拶する文化自体が次第になくなるようになり、おおよそ昭和の初めごろから隣人に蕎麦を配る風習は廃れていった。

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