影なき狙撃者 (映画)
『影なき狙撃者』(かげなきそげきしゃ、The Manchurian Candidate)は、1962年のアメリカ合衆国のサイコスリラー映画。監督はジョン・フランケンハイマー、出演はフランク・シナトラ、ローレンス・ハーヴェイ、ジャネット・リーなど。原作は、1959年に発表されたリチャード・コンドンの同名小説であり、ジョージ・アクセルロッドが映画用に脚色した。
影なき狙撃者 | |
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The Manchurian Candidate | |
![]() ポスター(1962) | |
監督 | ジョン・フランケンハイマー |
脚本 | ジョージ・アクセルロッド |
原作 | リチャード・コンドン |
製作 |
ジョージ・アクセルロッド ジョン・フランケンハイマー |
製作総指揮 | ハワード・コッチ |
ナレーター | ポール・フリーズ |
音楽 | デヴィッド・アムラム |
撮影 | ライオネル・リンドン |
編集 | フェリス・ウェブスター |
製作会社 | M・C・プロ[1] |
配給 | ユナイテッド・アーティスツ |
公開 |
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上映時間 | 126分 |
製作国 |
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言語 | 英語 |
製作費 | $2,200,000[2] |
興行収入 |
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朝鮮戦争の米軍の英雄(ハーヴェイ)が、実は東側の手で暗殺者に洗脳されており、無意識下で殺人を重ね、大統領候補まで標的にするが、それを元上官(シナトラ)が食い止めようとするという、東西冷戦を背景にした政治サスペンス映画。キューバ危機の最中に公開された[4]。1988年のリバイバル上映時には『失われた時を求めて』に改題された[5][6]。
2004年、『クライシス・オブ・アメリカ』のタイトルでリメイクされた。
ストーリー編集
ベネット・マーコ大尉(フランク・シナトラ)率いるアメリカの小隊は朝鮮戦争で中国人民志願軍の捕虜になる。部隊を救ったレイモンド・ショー2等軍曹(ローレンス・ハーヴェイ)は帰国後、英雄として称えられた。しかし、捕虜にされている間に小隊は中国軍を後援するソ連軍のジルコフ(アルバート・ポールセン)らによる洗脳の実験台とされ、レイモンドはトランプでソリティアをするように促され、クイーンのカードを見ると言いなりになるように洗脳されていた。
レイモンドの母親、アイスリン夫人(アンジェラ・ランズベリー)は彼女の再婚相手のアイスリン上院議員(ジェームズ・グレゴリー)を次期大統領にするべく画策していた。レイモンドは出征前、アイスリン議員と対立するジョーダン議員(ジョン・マクギバー)の娘のジョスリン(レスリー・パリッシュ)と恋に落ちたが、アイスリン夫人に仲を引き裂かれていた。二人は再会後、結婚する。しかし、アイスリン夫人はレイモンドにソリティアを勧め、催眠状態になったレイモンドに政敵のジョーダン議員を暗殺するように命令する。ジョーダン議員を射殺したレイモンドは無意識のまま、その場に居合わせた新婦のジョスリンをも殺害する。
レイモンドや戦友の行動を不審に感じたマーコは、恋人のユジェニー・ローズ(ジャネット・リー)の助けも借りて、レイモンドが洗脳にかかっていることを突き止める。マーコから真実を告げられ、洗脳が解けたレイモンドは自分の母親から殺人を命令されていたことを知る。レイモンドの洗脳が解けたことを知らないアイスリン夫人は、レイモンドにクイーンを見せ、副大統領候補に選ばれた夫が大統領候補に繰り上がるよう、党大会で次期大統領候補を暗殺するように命令する。当日、レイモンドは大統領候補の代わりに、アイスリン上院議員とアイスリン夫人を撃ち抜く。その直後にレイモンドは自殺し、映画は幕を閉じる。
キャスト編集
※括弧内は日本語吹替(初回放送1969年5月25日『日曜洋画劇場』)
- ベネット・マーコ: フランク・シナトラ(家弓家正)
- レイモンド・ショー: ローレンス・ハーヴェイ(広川太一郎)
- アイスリン夫人: アンジェラ・ランズベリー(関弘子)
- ユジェニー・ローズ: ジャネット・リー(小原乃梨子)
- アイスリン上院議員: ジェームズ・グレゴリー(早野寿郎)
- チャンジン: ヘンリー・シルヴァ(伊藤克)
- ジョスリン・ジョーダン: レスリー・パリッシュ(鈴木弘子)
- ジョーダン上院議員: ジョン・マッギーヴァー
- ジルコフ: アルバート・ポールセン
作品の評価編集
公開当時はジャーナリストのエドワード・ハンターらによって朝鮮戦争での中国共産党の洗脳は米国内で広く認知されていたが[7]、左派を攻撃していた保守派が実は共産党のスパイであるという荒唐無稽な設定から酷評された[8]。しかし、翌年にはケネディ大統領暗殺事件が起き[4]、時代を先取りしたとも言われた[5]。
1994年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録された[9]。
Rotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は「風刺と政治スリラーが融合した古典的な作品で、当時は不快なほど先見性があった『影なき狙撃者』は、今日でも悲惨なほど現実の問題に直結するものであり続けている。」であり、60件の評論のうち高評価は97%にあたる58件で、平均点は10点満点中8.70点となっている[10]。Metacriticによれば、20件の評論のうち、高評価は19件、賛否混在は1件、低評価はなく、平均点は100点満点中94点となっている[11]。
出典編集
- ^ 影なき狙撃者 - KINENOTE
- ^ “The Manchurian Candidate (1962)” (英語). IMDb. 2012年7月19日閲覧。
- ^ “The Manchurian Candidate” (英語). Box Office Mojo. 2020年11月15日閲覧。
- ^ a b “【43】米大統領選挙と「満洲の候補者」”. 日刊ベリタ (2008年3月3日). 2012年7月17日閲覧。
- ^ a b “「アンナ・カレニナ」「ディア・ハンター」 米の名作映画10本を上映”. 読売新聞. (1988年11月14日)
- ^ “[VIDEO]「失われた時を求めて」ほか”. 読売新聞. (1989年7月22日)
- ^ Hunter, Edward. “Communist psychological warfare”,COMMITTEE ON UN-AMERICAN ACTIVITIES HOUSE OF REPRESENTATIVES, EIGHTY-FIFTH CONGRESS SECOND SESSION,MARCH 13, 1958.
- ^ “[スクリーン]影なき狙撃者・怪奇なスパイ・スリラー”. 読売新聞. (1963年2月25日)
- ^ “1994年アメリカ国立フィルム登録簿 受賞結果”. allcinema. 2020年11月15日閲覧。
- ^ "The Manchurian Candidate". Rotten Tomatoes (英語). 2021年9月30日閲覧。
- ^ "The Manchurian Candidate" (英語). Metacritic. 2020年11月15日閲覧。
外部リンク編集
- ウィキメディア・コモンズには、影なき狙撃者 (映画)に関するカテゴリがあります。
- 影なき狙撃者 - allcinema
- 影なき狙撃者 - KINENOTE
- The Manchurian Candidate - オールムービー(英語)
- The Manchurian Candidate - IMDb(英語)
- The Manchurian Candidate - TCM Movie Database(英語)
- The Manchurian Candidate - Rotten Tomatoes(英語)