政治地理学(せいじちりがく、英語:political geography)は、政治を研究対象とする、人文地理学の一分野である[1]

概要 編集

かつての政治地理学は国家の盛衰を地理学的・環境論視点から論じたものであり、地政学と深い関係にあった。

出発点はドイツ地理学者フリードリヒ・ラッツェルにより命名された Politische Geographie という著作からであるが、歴史的な部分は暫くは地政学と一にしてきた。地政学同様、政治地理学も戦後は等閑視されていたが次第に、計量的な地理学が1960年代以降盛んになるに連れて、アメリカイギリスなどで地方自治政治団体の政治的な行為に注目したイデオロギー的な部分が薄い内容の政治地理学が再び論じられるようになり、日本でも再び盛んになってきた。

現在日本では、純粋に政治事象を取り扱う人文地理学の一分野として取り入れられており、マクロでは国際政治と地理の関係などを、ミクロでは地方自治の影響を空間的に分析する内容などが盛んで、かつてのようなイデオロギー的な色合いをだいぶ薄めた内容が主流である。取り扱う内容によっては、経済地理学社会地理学とも密接した内容になっており、地政学とは距離を置く傾向が見られる。また、地方行政に特に視点を置いた分野は、行政地理学という別の表現をすることも多い。

政治地理学では、特定の空間・場所に言及する地政言説によって生み出される心象地理が関わっている[2]。その分析に際しては、言説の地理的スケール、意味づけられていない「空間」と意味づけられた「場所」の関係性などを明らかにするほか、「フレーム分析」によって言説を「枠づける」ことなどによって研究することができる[3]

研究者 編集

脚注 編集

  1. ^ 山﨑 2013, p. 3.
  2. ^ 山﨑 2015, pp. 124–126.
  3. ^ 山﨑 2015, pp. 126–129.

参考文献 編集

  • 山﨑孝史『政治・空間・場所―「政治の地理学」にむけて―』(改訂版)ナカニシヤ出版、2013年。ISBN 978-4-7795-0795-3 
  • 山﨑孝史 著、竹中克行 編『人文地理学への招待』ミネルヴァ書房、2015年、123-141頁。ISBN 978-4-623-07229-3 

関連項目 編集