救助員(きゅうじょいん)は、海上自衛隊航空機に搭乗して水難救助を実施する自衛官遭難者や傷病者の救難機機内への収容を担当する[1]

US-2の機体側面に掴まった機上救助員。背後にボートが見えている。
US-1Aに接舷したボートから被救助者を機内に収容する機上救助員。
陸上降下救助訓練にて、SH-60Kから地上に降下し、被救助者にレスキューネットを装着する航空士。

機上救助員 編集

救難飛行艇であるUS-1の開発当初、遭難者を救助する方法として、機体を操って遭難者に接舷し、直接機体に引き揚げる方法と、インフレータブルボートによる方法が検討されていた。しかし接舷救助は、遭難者が多い場合には所要時間が長くなってしまう一方、機体の小さな出入り口から搬出入できる程度の小さなインフレータブルボートでは、海が荒れているときの救助が難しいという問題が指摘されていた[2]

この問題についての議論の過程で、掃海隊群水中処分隊などで活躍する潜水員を搭乗させておき、直接泳いで救助するという案が浮上した。ベテランの水中処分員の協力を得て実験したところ、「早くて確実で、被救助者からも安心感がある」との所見であり、本格的に推進されることになった。これによって発足したのが機上救助員(RS)の制度である[2]

後には救助員の養成課程も新設された[2]。パイロット以外のクルーを養成する「航空士基礎課程」を経て[1]第203教育航空隊の「航空士機上救助課程」を修了すると [3]航空従事者としてウイングマークを取得して、実習を兼ねて航空隊で勤務することになる[4]

降下救助員 編集

潜水特技をもたない隊員がヘリコプターによる救助を行う場合、降下救助法が用いられる。これは、救助員がホイスト式クレーンで降下して遭難者を救助する手法だが、救助員は原則としてそのケーブルから離れないことになっており、行動に制約がある[1][5]

救難飛行艇であれば、救助を担当する潜水員である機上救助員と、救護を担当する衛生員である機上救護員の両方が搭乗している。一方、救難ヘリコプターの場合は搭乗可能人数に余裕がないため、機上救護員が救助員を兼任しており、従来はほとんどの救助活動を降下救助法によって行ってきた。しかし、体力を消耗した遭難者を迅速・確実に救助するためには、救助員がケーブルから離れて自由に動ける救助法が必要であると指摘されるようになり、平成12年度にHRShelicopter rescue swimmer)救助法が制度化されて、機上救護員がHRS資格を取得する体制が整備された[5]

なおSH-60JSH-60Kといった哨戒ヘリコプターにもホイストが搭載されており、降下救助を行うことがあるが、こちらでは航空電子整備員たる航空士(センサーマン)の副任務とされている[6][注 1]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ センサーマンは、降下救助のほかにも、吊下式ソナーソノブイレーダーによる目標の探知・識別や、航空機搭載電子機器の修理、更にドアガンの射撃手など、多彩な任務をこなすことから、一部ではスーパーマンウルトラマンとも称される[7]

出典 編集

参考文献 編集

  • 石神一信「UH-60Jについて」『第3巻 回転翼』水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2012年、352-355頁。 
  • 岡田真理「MILITARY REPORT 海上自衛隊 第73航空隊 救難・救助の命綱」『MAMOR』第9巻第9号、扶桑社、2015年9月、30-39頁、NAID 40020550361 
  • 坂本明『最強 自衛隊図鑑』学研プラス、2018年。ISBN 9784059169192 
  • 山口光宣「救難飛行艇US-1(A)について」『第7巻 固定翼』水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2017年、235-241頁。国立国会図書館書誌ID:028057168 

関連項目 編集