日本の大学教員の職階(にほんのだいがくきょういんのしょっかい)は、日本高等教育機関大学短期大学高等専門学校)の職階

概要 編集

高等教育を行う学校には、「大学」(大学院短期大学を含む)及び「高等専門学校」がある。この他に、大学共同利用機関法人の研究所や、学位を取得できる省庁大学校も該当する。専修学校専門課程も高等教育であるが、学校により職階が大きく異なるため、ここでは省略する。

主な職階は、上から学長教授准教授[1]講師助教助手である[2]。また、大学によっては、「実験講師」[3]や、助手より下位に位置する補助員として「教務補佐員」、「技術補佐員」、「副手[4]、「教務助手」[5][6]、「実務助手」[7]、「研究補助員」[8]といった名称の職員が置かれるが、いずれも学校教育法に定められた名称ではない。 かつては助教授という職階があったが廃止された。准教授が新設されかつての助教授の職務が見直された形となった。また助手は大幅に削減され大部分は助教に移行した。

主に授業は教授・准教授・講師が担当する。一方、演習・学生実験・実習は教授・准教授・講師の指導のもと、実際は助教が担当することが多い。卒業研究及び卒業論文の指導は教授の統括の元、指導教員として准教授・講師・助教が担当する。

批判 編集

高等教育での職階制度は、教育研究機関の教育組織の中に強い階級制度をもたらす。学部長などの重要な役職に就くには、ほとんどの場合、教授でなければならない。

また、講座制をしいている場合は、それ以外に研究活動と教育活動の両面で教授が大きな権限を持ち、教授の能力や人格が講座の活動の成否や所属する教員と学生の人生までをも大きく左右する。教授は下位の教員に対して人事権を持つので、上司である教授との人間関係のトラブルが原因で、人事上の不当な扱いを受けるケースも数多く存在する[9]。統括する教授に管理職としての雑務が集中することにより、研究・教育のための時間が相当量奪われ、問題となっている。

一覧 編集

学長
教授
教授(きょうじゅ)とは、特に優れた知識、能力及び実績を有し、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事することを職務とする教育職員のことである。大学の教授は、法令に規定されている3種の職務のうち、1つしか担当しない場合もあれば、複数を担当する場合もある。高校までの教員は教諭、大学の教員は教授もしくは准教授・助教であると誤解されている場合があるが、教授は地位名称であり職種名称ではない。英文表記は「professor」。
准教授[10]
准教授(じゅんきょうじゅ)とは、優れた知識、能力及び実績を有し、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事することを職務とする教育職員のことである。かつて「助教授」と呼ばれた職階に当たる。英文表記は一般に「associate professor」。
講師
講師(こうし)とは、教授又は准教授に準ずる職務に従事する教育職員のことである。専任の講師と非常勤の講師の別がある。学校教育法第九十二条の2に「副学長、学部長、講師、技術職員その他必要な職員を置くことができる。」と定められていて、同10で「講師は、教授又は准教授に準ずる職務に従事する。」と定められている。近年は、非常勤講師は別にして、専任講師は助教に収斂しつつあり、専任講師の職位を設けない大学も急増している。
  • 専任の講師:一般的に専任の講師(大学によっては職名「専任講師」が用いられる)は、教授、准教授に次ぐ職位であり、人事上は准教授と講師が同じカテゴリーに属する扱いとなる(職階上は差がある)。講師は、教育や研究の事情に応じて、直接、教授の職務を助ける場合もある[11][12]。講師の英文表記は「lecturer」[13]が一般的であるが、中には「assistant professor」[14]、英国式に倣って「senior lecturer」も見られる。また国際教養大学のように3年契約で教員を採用している大学(任期付き専任講師)においては任期後、再任されず退職に追い込まれる教員がおり問題となっている。
  • 非常勤の講師:専任ではない講師は、「非常勤講師」や「兼任講師」等と呼ばれる。その授業のみを担当するパート・タイムで、基本的に年契約、賃金も専任の教員と比べると低賃金である。非常勤講師の英文表記は、「part-time lecturer」[13][14]専業非常勤講師の項も参照のこと。
助教[10]
助教(じょきょう)とは、学生を教授し、研究を指導し、または研究に従事する教育職員のことである。
基本的には、旧学校教育法[15]の「助手[16](旧助手)の中から教育・研究を主たる職務とする者を弁別することを目的として、新たに設けられた職位である。一部の大学・学部では、助教または助手の採用段階で、博士の学位を取得していることを要件とすることもあるが、法律上の要件ではない。
多くの大学では、任期の定めのない助教は、業績を積むことにより、講師(講師を置かない大学では准教授)以上に昇格することが慣例化している。しかし、任期付きの助教の場合、業績を挙げることが必ずしも昇格につながらない。なお、助教は任期のあるケースが多い。英文表記は、東大含め、殆どの日本の大学で、Assistant Professorと定められている。
改正教育法が施行された平成19年度以降、国立大学法人では、それまでの助手を助教に変更した事例が多い[17]。これに対し私立大学の中には、それまでの専任講師の職位を助教に変更した事例が見られる[18]。この場合、表面的な職位は講師より下でも、実際の待遇は専任講師に準じ、任期付であってもテニュアトラック(終身雇用候補者)として専任教員への昇格が予定されているものもある。
助教の導入に伴い、従来の助手のうち、資格審査の結果、助教への就任が認められないが、職務の性質や不利益変更防止の観点から新助手への移行も妥当でないとされた者について、移行ポストとして学校教育法上の根拠のない「准助教」を置いた大学もある[6]
助手
助手(じょしゅ)とは、所属組織の教育・研究の円滑な実施に必要な業務を行う学校職員のことである[16]。英文表記は、旧制度の助手はAssistant ProfessorやResearch Associateなどが用いられていたが、新制度の助手は Teaching AssociateやResearch Associateなどが用いられる。
教務職員
教務職員(きょうむしょくいん)とは、助手の下位職員として各大学の裁量で採用されていた職種をさす。職員の分類上は、教育職員(大学教員)に属し[19]、職務内容は教員に準じるが、運用上は技官と同じ扱いを受けていた[20]

脚注 編集

  1. ^ 2007年(平成19年)4月、学校教育法改正により「助教授」が廃止され、「准教授」が設置された。
  2. ^ かつては国立学校設置法施行規則に職員の種類として教務職員が規定されていた。しかし、同法は2004年(平成16年)4月1日廃止され、国立大学の設置者として国立大学法人が設立されたため、教務職員の設置の法的根拠は失われている。
  3. ^ 例えば同志社大学中央大学日本工業大学龍谷大学等に置かれる。
  4. ^ 例えば実践女子大学学習院大学多摩美術大学東北芸術工科大学フェリス女学院大学九州産業大学等に置かれる。
  5. ^ 例えば九州大学福井大学信州大学徳島大学等に置かれる。
  6. ^ a b 九州大学では、学校教育法の定める「助手」を「教務助手」と呼称し、学校教育法に定めのない「准助教」を置いている(参照:各職種の新制度への移行スキーム九州大学の新しい教員組織の在り方に関するQ and A。2009年10月1日現在、准助教が26名、教務助手が1名在職している(教員の部局別在職者状況)(九州大学)。
  7. ^ 金城学院大学に置かれる。
  8. ^ 豊田工業大学に置かれる。
  9. ^ 小説『白い巨塔』はそれを描いた小説として有名である。
  10. ^ a b 准教授、助教の名称は、2007年(平成19年)4月1日に施行された改正学校教育法(平成18年6月21日法律第80号)により新設された。
  11. ^ 講座制を採る大学が少なくなった今日では表向きは稀である。
  12. ^ 2007年(平成19年)4月1日に施行された学校教育法の一部改正の審議過程では、将来的に講師という職階は段階的に廃止されるべきものと位置づけられた。
  13. ^ a b 講師の英称をlecturer、助教の英称をresearch associate、助手の英称をresearch assistantとする例(東京大学)
  14. ^ a b 講師の英称をassistant professorとする例(一橋大学)
  15. ^ ここでいう旧学校教育法とは、2007年(平成19年)3月31日まで適用されていた学校教育法を指す。同年4月1日に施行された改正学校教育法(平成18年6月21日法律第80号)の前の学校教育法である。
  16. ^ a b 旧学校教育法が適用されていた2007年(平成19年)3月31日までは、助手は、同法上「教授及び助教授の職務を助ける」ことが職務であり、暗黙の了解として所属組織の運営が円滑に行われることを補佐することも業務としていた。しかし、同年4月1日に改正学校教育法(平成18年6月21日法律第80号)が施行されたことにより、新たに助教が置かれ、助手の職務内容の明確化が図られた。このため、旧法による助手を「旧助手」、新法による助手を「新助手」として区別することもある。
  17. ^ 例えば東京外国語大学
  18. ^ 例えば城西国際大学拓殖大学
  19. ^ 国立大学法人東京大学の役職員の報酬・給与等について” (PDF). 国立大学法人東京大学. 2007年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年9月19日閲覧。
  20. ^ 教務職員問題”. 東北大学職員組合教務職員対策委員会. 2007年9月19日閲覧。

関連項目 編集